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サンクチュアリ シュナイゼル 1

セイレーン フォン ヘルツォーク
愛称セラ
ブルネット
碧眼
EUの公爵令嬢
クロヴィスの従妹
贄姫



セイレーン フォン ヘルツォークがブリタニアに迎えられたのは彼女の6歳の誕生日だった。

EUとブリタニアの友好条約の証として少女は全世界が見守る中、皇帝にお辞儀をする。
幼いながら貴族らしく膝を折り、恭しくドレスを広げる。覚悟を宿した強い瞳に皇宮は騒然となった。わずか6歳の少女が未来ある人生を犠牲にする決意をしている。
長かった戦争が終わる。幼い少女を生け贄にして戦争が終わるのだ。

「ブリタニアはそなたを歓迎する。両国の友好のため、また両国の繁栄のため、ブリタニアに仕えよ」
「イエス、ユア マジェスティ」



*prologue*
サンクチュアリ


セイレーンがブリタニアに渡って13年がすぎた。両国は友好関係を維持し続けており、未来の皇后として迎えられた公女は従兄にあたるクロヴィスの宮で何不自由なく育った。20歳になろうとしている少女はつまらなそうな顔でポーズをとっている。

「セラ!動くなよ、モデルなんだからじっとしていて」
「だってクロヴィス、もう飽きちゃった」
「もう少しだから、頼むよ。終わったら庭でお茶にするから」


セイレーンは小さくため息をつくと、困ったように微笑んで姿勢を正した。本日2作目にあたるクロヴィスの作品に付き合うことに決めたようだ。

「次はもっと楽なポーズにしてよ」
「君はどんなポーズでも美しいよ」

クロヴィスは目を細め筆を走らせた。


美しい従妹だ。ブルネットの髪がきめの細かい肌によく映える。いくら描いても彼女の輝きを絵に閉じこめることはできない。それ故何度も彼女を描いてしまう。クロヴィスの部屋はセイレーンの肖像画で溢れかえっている。
弟妹たちの絵はそれぞれの宮に贈ったりして数を減らしているのだが、彼女の絵はEUの実家に贈っても贈っても増え続けるのだ。


クロヴィスが筆を置いたそのとき、勢いよく扉が開いた。コーネリアが肩で息をしながら飛び込んでくる。

「クロヴィス!セラ!いるか?」
「姉上、そんなに急いでどうなさいました」
「落ち着いてきけ。父上がEUに侵攻を再開される」
「まさか。EUは友好国、それにセラはブリタニアに嫁ぐことが決まっているんですよ。急がずともはEUはブリタニアの領地になります」

ヘルツォーク公爵家はハプスブルクを源流にもつEUの大貴族だ。EUの80パーセントを統治し、絶大な発言力をもつ。一人娘のセイレーンがいずれは公爵家を継ぎ、その配偶者であるブリタニア皇帝が領地を統治することになるはずだった。将来的にはセイレーンの子がブリタニアを継ぐことになり、EUはブリタニア帝国の特別自治区となり世界を牽引する約束だった。

「コーネリア、そこにいるかい?」
「兄上!」

ロイヤルプライベート回線にシュナイゼルの姿が映し出された。彼も慌てた様子だ。コーネリアならクロヴィスのもとへ行くと踏んだのだろう。クロヴィスの回線で真っ先にコーネリアの名をだすところがさすがシュナイゼルだ。

「父上は侵攻を諦めてはくださらなかったよ。説得は不可能だ。なぜ今更EUなのか…」
「しかし兄上!セラがこちらに嫁ぐ以上…」
「落ち着きなさいコーネリア、私にも父上のお考えがわからないんだ。また連絡するから、君たちは周りを刺激しないように大人しくしていなさい。わかったね?」

通信が切れると沈黙が訪れた。宰相であるシュナイゼルがああ言うのだから侵攻は決定事項なのだろう。
クロヴィスはハッとしたように沈黙を破った。

「姉上、セラはどうなるのです。これでセラは敵国の娘…」
「過去にも幾度かある。皇后の話しは当然なくなる。人質として監禁されるか、殺されるか…殺されることはないだろうがそれも戦況次第だ」
「まさか」
「もう…逃げられぬだろうな。この宮の外に兵がいた」


逃がしてもやれないなんて。クロヴィスは唇を噛んだ。


「いいのよクロヴィス。今までが平和すぎたの。私は人質としてここにきた。覚悟はとっくにできてる」


セイレーンはひどく落ち着いていた。当人がこんなに冷静なのに、自分たちが取り乱していては話しにならない。クロヴィスは激昂する胸を押さえつけ、彼女を抱き寄せた。大切な従妹。他にだれが彼女を守れるというのだろう。
クロヴィスは冷え切ったセイレーンの唇に口付けた。


「セラ、私と結婚してください」
「クロヴィス今はそんな…」
「私はこれでも第三皇子。私の妻になればわざわざセラを監禁しようとは思わないでしょう」
「しかし、それでは…」
「それでは貴方の皇位継承は不可能になります。クロヴィス、わたしのために失っていいものではありません。おば様も悲しまれる」

母の悲しむ顔が浮かんだ。第三皇子を産んだことだけが心の支えのような方だが、セイレーンの命にはかえられない。

「どの道、シュナイゼル兄上がいるかぎり皇帝の座など手にはいりはしないよ。それに私には政治は向いていない。それでも許されないというなら皇位継承権を返上する」
「クロヴィス!」
「それなら父上も許してくださるはずだ。セラ、今まで君には守られてばかりだった。こんな時くらい、守らせてほしい」

クロヴィスは幼いころから2つ年下の彼女になにかと助けられてきた。失言のフォローや、兄弟にからかわれたときにセイレーンだけはクロヴィスの味方をしてくれた。年下の女の子に庇われるのは情けなかったが、芸術家肌で係争が苦手だったクロヴィスにはありがたかった。

ようやくセラを守ることができる。父より母より、ほかの兄弟たちより大切な従妹。叶いもしない皇位継承権なんて惜しくはなかった。

「愛してるんだ。ただのクロヴィスになるかもしれない。けれど君を幸せにすると誓うよ…」

跪いて白い繊手に口付ける。いつの間にか部屋の入り口にはシュナイゼルが部下をひきつれて立っていた。


セラは小さく「はい」と答えた。
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