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雨に閉ざされた秘密 銀魂夢
今どき立ち姿がきれいな女は珍しい。
すっと伸びた背筋は細くて頼りない。そのくせ凛としてみえるんだ。
こいつは一筋縄でいく女じゃないなと、生徒相手になに考えてんだ俺。
雨に閉ざされたひみつ
「あれ、どうしたの由良ちゃん。休日出勤なんて俺と同じくらい真面目だなぁ。」
通学鞄は雨に色が滲んでいた。
よくみると髪からこぼれる水滴に、セーラーの襟が色を滲ませている。外は雨か。3日前にみた天気予報では、たしか休日は一日中晴れるはずだった。窓をみて初めて音が耳に入った。俺の聴覚もだいぶん役立たずだ。そういえば雨のにおいがする。
「忘れ物とりにきたついでに少し勉強してこかなぁ、と思ったんだけど教室誰もいなくて。」
「寂しくなって俺に会いに来たの?」
「帰るところです。」
「まあまあ、そう言わないで少し寄ってきな。お菓子もあるよ。あ、そうだ由良ちゃんお前だけだぞ面談やってないの。」
由良は空を少しみつめて溜め息をついた。
あからさまに盛大な溜め息。雨が嫌なのか俺が嫌なのか、はたまた面談が嫌なのか。
「…イチゴポッキーが食べたい。」
大量にあるぞ!
*
タオルを渡すと髪を押さえるように水気をとっていった。僅かに傾けた首筋がセーラー服に色っぽいなとか、先生はそんなこと考えませんとも。セーラー服はAVで補完計画だ。
「それでなに?由良ちゃん地元受けるんだ。」
とりそこなっていた調書に進路希望先を書き込んだ。俺の汚い文字をみて、由良はあからさまに眉をしかめる。なにか嫌われるようなことしただろうかと思うけれど、きっと彼女のような娘は俺のような駄目な大人が嫌いなんだろう。彼女はまだ子供で、潔癖に生きているふりをしている。
伸ばされた背中。
あれは一種の自己表示なんじゃないだろうか。わたしは真っ直ぐに実直にいきているわよ、って。
「あそこレベル高いよね。国立だし。」
「今年はうちのクラス多いな。たしか土方と桂もここだよ。あと高杉もか。優秀だねぇ。」
「は?高杉くん?そういえば最近学校ちゃんと来てるね。」
「そうそう、人は見掛けによらないんだぞ~。」
今までの模試の結果をとりだして、よくよく眺める。彼女の希望する大学は難関校といわれる部類で、どうしてこんな難しい道を選ぶのか俺にはよく分からなかった。分かるような気もしたけど、やっぱり俺としては人生苦しむべきじゃないと思ってるんだよね。受験って苦しいのよ。ずっと昔のことを思い出す。そういや俺も受験したっけ。
「ま、由良ちゃんなら大丈夫でしょう。このままゆるめに頑張ってね。」
「は~い。」
由良はイチゴポッキーをかじりながら視線だけ外をみる。長いまつげが弧を描いて上をむいているのがわかった。案外大きな瞳は、無邪気な印象。まだ子供だ。
人は見かけによらない。
自分は表裏も少なく、だめな大人として生きているけれど、それでも生徒に見せない顔がある。この子供と大人のはざまにいる娘は、いったいどんな顔をもっているのか。意地悪な好奇心だと思った。この子が必死に隠している、一人の人間、一人の女としての顔を覗いてみたいというのは、大人のいやらしい悪趣味だ。
「まだ、雨降ってる。」
「先生のお菓子食べ尽くさないなら、まだいてくれていいぞ。」
食べ尽くしても、いてもいいよ。
人形みたいな顔してるから、芸術鑑賞のつもりでもうすこし眺めさせてくれないかねえ。ポッキーを口内へ導くように薄い唇が器用に動いた。内側にピンク色のチョコが溶けて残っている。
俺はオードリーよりマリリン派なわけで、薄いより厚い唇が好みなんだけれど、このときばかりはこのボリュームにかける唇になんだかムラムラした。
女子高生っていいよね。若さと紙一重に幼さが同棲している。こいつの場合は処女性までも。どうして処女だと思うかって、こいつはまだ男に幻想抱いてる潔癖症の女だからだ。
「…由良ちゃんさぁ、」
「え、ごめん、食べ過ぎ?」
「いやね、あの大学選んだのって、土方と一緒だから?」
一瞬、表情から幼さが消えてすぐに元通りになる。かおを作るのが上手な女だ。自分がまわりからどういう風にみられていて、どういう風に振舞うのを望まれているか理解している。きっとすべてが計算ずくなんだ。しゃべりかたや笑うタイミング、伏せる瞼とか。無意識にしろそうでないにしろ。
「違います。わたし昔から行くならあそこって決めてたし、先生が思ってるような関係じゃないですから。」
「知ってる?由良ちゃん嘘つくとき丁寧語になるの。」
黒目がちな瞳が俺を捕らえる。引きずり込まれそうになる気迫に怯えた。美人は真顔でも美人だが、整ってる分恐ろしい。いままでそうやって大人を騙して来たんだろうけど、中途半端に大人になった銀八先生には通用しないんだ。
「知らなかった。」
「・・・冗談だよ。俺そこまでお前のことしらねえもん。なんにしても、お前が自分で決めたんなら問題ない。」
由良はふわり、唇で笑う。
「嘘つき。先生はわたしのこと、よく知ってるでしょ。」
「え、おいおい、大人をからかうんじゃありませんよぉ。」
「雨あがった。また明日、先生。」
生徒にあしらわれてるんじゃあ、俺の教師業もあがったりだ。事実、俺はあいつのことを良く知っていたから。
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癒える記憶 FE封印
クラリーネ19歳とパーシバル28歳
癒える記憶
王宮に音楽が溢れている。パーシバルは久々に夜会を訪れた。今夜はミルディン王子の招待だ。終戦慰霊の式典を控えた身内だけの舞踏会だが、普段のように多忙を理由に欠席するわけにはいかない。
盛装したのはギネヴィア女王の即位式以来だろう。彼はエトルリア代表としてベルンに招かれた時のことを思い出した。戦後間もないあの頃に比べると、なんと日々の穏やかなことだろう。人々の表情にもはや戦いの陰りはない。
大方の挨拶を終え、慣れない社交辞令に疲れをおぼえたころ、人気のないテラスに見知った少女をみつけた。
パーシバルはあまり少女と親しいとは言えなかったが、クレインの妹姫で共に大戦をくぐり抜けた程度には親交がある。あの社交好きの姫がひとりでいるのには違和感があった。
ウエイターからシャンパンを2つ受け取り、星空を眺めるクラリーネに声を掛けた。子供にシャンパンは良くなかったと一瞬後悔した。
「君がこんなところにいるとは珍しいな。」
「すぐに戻りますわ。少し疲れましたの。今夜は星がきれいですわね」
記憶の中の少女は、貴族の娘らしく気位の高いかおをしていたが、目の前の少し大人びた少女は今にも泣きだしそうな不安げなかおをして微笑んだ。まずいところに声をかけてしまっただろうか。パーシバルは女性の機微が読める性質でも、差しさわりのない会話をする技術もなかった。
「元気がないな」
「大切な方がなくなった日ですから」
シャンパンをゆっくりと飲み干すだけで、クラリーネの肌は淡く紅潮する。少女のわりに酒の飲み方を知っているなと感心したが、よく考えれば彼女はすでに社交界デビューを果たし、酒も夜会も日常のものなのだ。忙しさに忘れそうになるが、終戦から既に4年が経っている。
彼女にとってはまだ4年なのだろうか。多くの死者を出してあの動乱で、パーシバルもまた多くの知己を失ったが、クラリーネは最も愛しい者を亡くしていた。
「ルトガーか…」
「ご存じでしたの」
「ああ、仲間のことはよく思い出す。軍人でも友人の死は慣れないものだ。君のような姫君には辛い出来事だろう」
パーシバルは剣士を思い出す。彼のそばには幼かった少女の姿がいつもあった。当時は特に気にも留めなかったが、あのときの彼女は幸せそうに笑っていた。
クラリーネはずいぶんと大人びた表情でパーシバルに笑いかける。そっと触れられた手は夜風に冷えていた。
「わたくしだけではないのですわ。大切な方を失ったのは、わたくしだけではないのです。でも、この日が来ると、胸が切り裂けそうになりますの。ふふ…ルトガーに叱られてしまいますわね」
あれは一瞬のことだった。あのときパーシバルは彼らのすぐ近くで戦っていた。不意にあらわれた竜騎士の槍が、クラリーネをかばったルトガーの急所をとらえた。回復しない傷にすがりついて何度も杖をかかげる少女がいまでも目に焼き付いている。気付くのがあと10秒早ければ、彼を救えたかもしれない。
しかしそれも過ぎ去った話だ。
あと数日で終戦だった。気丈にふるまう妹が可哀相だとクレインが呟いていた。
「彼は後悔しないといいましたの。でもわたくしは後悔ばかりですわ」
もう4年も経つのにとクラリーネは僅かにこわ張った笑みで視線を逸した。星明かりにまつげの水滴が輝いている。涙を隠そうとする少女にパーシバルは胸が痛んだ。なんとかしてやりたいと思う反面、自分にはなにもできないことが彼を締め付ける。
「ミルディン様にも気をつかわせてしまって、こんな夜会まで開いていただきましたわ。皆さまルトガーのことには触れませんけど、こうして彼の話をさせていただけてうれしいですわ。もしかしたら彼の思い出を話したかったのかもしれません。長い間、言葉にすることができませんでしたの」
「彼の名をだしていいものか迷った。だが君の気持ちが少しでも軽くなったなら良かった」
クラリーネは明るくパーシバルに笑いかけた。わずかに幼さを残す笑顔に、紫の瞳は驚くほど大人の色をみせる。4年前とは違う。
彼女は日々成長し、もうあのわがままな世間知らずの姫ではなくなっていた。人を愛することを知った少女は大人の予想より遥かに女なのだ。彼女を変えたのは彼であり、彼の死だ。誰が忘れても、クラリーネだけはあの剣士が生きていたことを忘れることはないだろう。
「ルトガーだけを想い続けるようと思っていましたの。でも、彼に言われたことを思い出しました。結婚して、子どもをうんで、幸せになれ、と。俺の分まで生きろ…と。あの無口なルトガーがですわよ」
音楽が終わる。急に静かになった離宮にわずかな喧騒がカーテンの奥から聞こえた。
クラリーネが息を飲むのが分かった。白く細い首筋は、噛み付けば真っ赤な痕が美しかろう。
泣くのだろうか。
パーシバルは少女の瞳が揺れたことを見逃さなかった。抱きよせ、せめて一人で泣かずにいられるようにしてやりたいと感じた。
「わたくし決めましたわ。悲しむのは今夜でおわり。ルトガーが安心して眠れるくらい、幸せになってみせますわ」
花のように、という表現がふさわしい笑顔で、クラリーネは微笑んだ。涙はもう零れない。
彼女の手をとりパーシバルは光のもとに戻っていった。
祈る腕の痛み/ ラクス ガン種
ガンダムシードのラクス。
嘘で塗り固めたラクススライン
祈る腕の痛み/
左と、右の指とを組み合わせると、それは祈るにふさわしい形となった。
懇願するように強く握り、骨が軋む。
わたくしの、彼と比べるまでもなく小さく、頼りないこの手のひらを、こうして組み合わせ目を閉じることで、世界は秩序を取り戻すのだ。
荒れ果てた大地、人、こころ。
彼らはわたくしという生身の人間を神聖化し、祀ることで、その安寧を再び得ようとしている。彼らはしらないのだ。
わたくしがとても浅ましく、自己愛的で、残虐な精神ですべてを見ていることを。
真白なベールで顔を隠し、電波に乗せて慈愛と偽善にみちた言葉を届ける。
「わたくしは、みなさまのへいわをねがっています。どうか、おこころをおだやかにおすごしください。たすけあい、あいしあって、へいわをみちびくのです。」
心にもない言葉は、ラクスクラインの真実となって浸透する。
決して自らを神としたいわけではないが、神という、恐ろしく野蛮な名を背負うことを誰かに押し付けたくなかったのだ。
彼は平和の女神のもとで慎ましく暮らし始め、わたくしには英雄が残った。
人はみな、彼を稀代の英雄と叫び、わたくしの騎士と呼ぶ。
穏やか過ぎる紫の瞳には、わたくしのものによく似た残虐が宿っていた。
どうか彼が救われますように、どうか彼らが愛し合い信じあい幸せを築けますように、どうか、いのちが、愛することを知りますように。
神のいない祭壇に祈りをささげると、ついに細かな痙攣が起きた。
世界の幸せを祈り続けられるほど、わたくしは強くも弱くもないのだ
無双パロ続き
下ヒから許昌に戻り、とりあえずは落ち着いた生活を取り戻した。司馬懿にこき使われながら、戦後の雑務や、これからの国営を考える日々。戦場で剣を振るうより、内政の方が好きだと思った。上司にあたる司馬懿は、上の人たちと次の戦の話をしているようだった。
「体の調子はもういいのかい?」
「郭嘉殿」
「その分じゃ、傷はもう治ったのかな。心配したんだよ」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「なんだか雰囲気が変わったね。曹丕様に嫉妬してしまうな。唯一無二の神子の愛は如何様なものなのかな」
「郭嘉殿に嫉妬してもらえるようないいものじゃありませんよ。大して美人でもないし、賢くもないし…郭嘉殿には素敵な恋人がいっぱいいらっしゃるじゃないですかぁ」
「浮き世の戯れだよ。たった一人の愛する人を見つけられない愚か者だな私は」
「遊びなんですか?」
「やだなぁ、遊びも本気もないよ」
「わたしは器用じゃないし、心も狭いから、恋人が自分以外の女性とも親密だったら、嫌です。一夫多妻でもなんでも、やっぱりいい気持ちではいられない。なんて言うのかな…側にいる人を大切にしてくれたら嬉しいです。郭嘉殿は足りないものを探しているみたいに感じます。もしかしたら、もう側にあるのかも…なんて…」
「足りないものか…初めて言われたな…」
「ごめんなさい、好き勝手言っちゃいました。お気を悪くしないでくださいね!じゃ、わたし、司馬懿に呼ばれてるんで!」
「神子か…不思議な人だ」
「ふーっ、逃げ出せた」
「なにから逃げ出せたんだ?」
「わ!子桓!やだなぁ、びっくりさせないで
よ」
「挙動不審者を見つけたからな。どうした、なにかあったのか?」
「なんもないんだけど、さっき郭嘉殿に捕まって、子桓がうらやましいとかなんとか言われたんだよ。あの人いっぱい恋人いるのに、変なの」
「バカめお前は口説かれていたんだ。まったく自覚が足りなすぎる。仕置きが必要だな」
「やだ、そんなんじゃないってば…怖い顔しないでよ」
「ちっ、神子でもなければ叩ききってやったところを」
「でもなんか、悩んでる感じだったなぁ…」
「お前は!まんまと奴の術中にはまりおって」
「やん、ごめんなさい!許してー怒んないでって」
「ん…っ、子桓こんなところでキスするなんて…誰かに見られちゃうよ」
「お前が誰のものか見せつけているのだ。女官にでも見られて、噂になるくらいで丁度いい」
「そんなことしなくてもわたしは子桓が一番好きだよ?」
「二番がいるのか?」
「ははは、アホやこいつ。じゃ、わたし司馬懿に呼ばれてるんで、またね」
「ふぅ、司馬懿ーきたよー」
「遅い!バカなだけでなく愚図とはあきれるな」
「はいはいすんませんね。途中邪魔者に捕まってたんですよ」
「お前態度がデカくなったな」
「態度デカい人たちに合わせてるんで」
「ふんっ、まあいい、そんなことより、次の戦が決まったのだ。」
「どこ?」
「官渡だ。袁家を討つ」
「えー、曹操さまの幼なじみなんでしょ?」
「いつまでも奴の下にいても、覇道はままならんのだ。血筋だけの名門には乱世と共に消えていただく。」
「次も神子として連れて行くが、くれぐれも前回のようにならないよう、本陣を離れるなよ。お前には後方支援と負傷者の管理をやってもらう」
「分かったらさっさと鍛錬を終わらせてこい!」
「はーい」
あんまり納得がいかないが、友達でも戦うっていうのは乱世の宿命なのだろう。真矢は歴史の授業を思い出していた。どんな時代のどんな国でも、戦争があった。内乱もあった。日本にいるときだって、外国では戦争があっていたし、日本だって政争があった。気付かず生活していただけなのだ。
真矢は司馬懿にいわれたとおり、練兵所に向かった。考えてもどうにもならないときは無心に汗を流すのが一番なのだ。
「神子殿ではないですか!訓練ですか?」
「えっと、楽進さんも?」
「はい。私は一番槍ですので、1日の大半は鍛錬しております」
「そっかあ…いつも大活躍ですもんね」
「そんな、恐れ多い!神子殿のご活躍には遠く及びません!ですが…私などのことを見ていて下さっていると思うと、感激です!」
「いつも凄いなって思ってます。やっぱり先陣って、怖いじゃないですか。中になにがあるか全く分からないし…私は臆病者なので、後込みしてしまいます」
「神子殿が戦局を考えてくださるから、私は先陣を切れるのです。しかし神子殿の剣の冴え、感動しました!ぜひ鍛錬にご一緒させてください」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
「体の調子はもういいのかい?」
「郭嘉殿」
「その分じゃ、傷はもう治ったのかな。心配したんだよ」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「なんだか雰囲気が変わったね。曹丕様に嫉妬してしまうな。唯一無二の神子の愛は如何様なものなのかな」
「郭嘉殿に嫉妬してもらえるようないいものじゃありませんよ。大して美人でもないし、賢くもないし…郭嘉殿には素敵な恋人がいっぱいいらっしゃるじゃないですかぁ」
「浮き世の戯れだよ。たった一人の愛する人を見つけられない愚か者だな私は」
「遊びなんですか?」
「やだなぁ、遊びも本気もないよ」
「わたしは器用じゃないし、心も狭いから、恋人が自分以外の女性とも親密だったら、嫌です。一夫多妻でもなんでも、やっぱりいい気持ちではいられない。なんて言うのかな…側にいる人を大切にしてくれたら嬉しいです。郭嘉殿は足りないものを探しているみたいに感じます。もしかしたら、もう側にあるのかも…なんて…」
「足りないものか…初めて言われたな…」
「ごめんなさい、好き勝手言っちゃいました。お気を悪くしないでくださいね!じゃ、わたし、司馬懿に呼ばれてるんで!」
「神子か…不思議な人だ」
「ふーっ、逃げ出せた」
「なにから逃げ出せたんだ?」
「わ!子桓!やだなぁ、びっくりさせないで
よ」
「挙動不審者を見つけたからな。どうした、なにかあったのか?」
「なんもないんだけど、さっき郭嘉殿に捕まって、子桓がうらやましいとかなんとか言われたんだよ。あの人いっぱい恋人いるのに、変なの」
「バカめお前は口説かれていたんだ。まったく自覚が足りなすぎる。仕置きが必要だな」
「やだ、そんなんじゃないってば…怖い顔しないでよ」
「ちっ、神子でもなければ叩ききってやったところを」
「でもなんか、悩んでる感じだったなぁ…」
「お前は!まんまと奴の術中にはまりおって」
「やん、ごめんなさい!許してー怒んないでって」
「ん…っ、子桓こんなところでキスするなんて…誰かに見られちゃうよ」
「お前が誰のものか見せつけているのだ。女官にでも見られて、噂になるくらいで丁度いい」
「そんなことしなくてもわたしは子桓が一番好きだよ?」
「二番がいるのか?」
「ははは、アホやこいつ。じゃ、わたし司馬懿に呼ばれてるんで、またね」
「ふぅ、司馬懿ーきたよー」
「遅い!バカなだけでなく愚図とはあきれるな」
「はいはいすんませんね。途中邪魔者に捕まってたんですよ」
「お前態度がデカくなったな」
「態度デカい人たちに合わせてるんで」
「ふんっ、まあいい、そんなことより、次の戦が決まったのだ。」
「どこ?」
「官渡だ。袁家を討つ」
「えー、曹操さまの幼なじみなんでしょ?」
「いつまでも奴の下にいても、覇道はままならんのだ。血筋だけの名門には乱世と共に消えていただく。」
「次も神子として連れて行くが、くれぐれも前回のようにならないよう、本陣を離れるなよ。お前には後方支援と負傷者の管理をやってもらう」
「分かったらさっさと鍛錬を終わらせてこい!」
「はーい」
あんまり納得がいかないが、友達でも戦うっていうのは乱世の宿命なのだろう。真矢は歴史の授業を思い出していた。どんな時代のどんな国でも、戦争があった。内乱もあった。日本にいるときだって、外国では戦争があっていたし、日本だって政争があった。気付かず生活していただけなのだ。
真矢は司馬懿にいわれたとおり、練兵所に向かった。考えてもどうにもならないときは無心に汗を流すのが一番なのだ。
「神子殿ではないですか!訓練ですか?」
「えっと、楽進さんも?」
「はい。私は一番槍ですので、1日の大半は鍛錬しております」
「そっかあ…いつも大活躍ですもんね」
「そんな、恐れ多い!神子殿のご活躍には遠く及びません!ですが…私などのことを見ていて下さっていると思うと、感激です!」
「いつも凄いなって思ってます。やっぱり先陣って、怖いじゃないですか。中になにがあるか全く分からないし…私は臆病者なので、後込みしてしまいます」
「神子殿が戦局を考えてくださるから、私は先陣を切れるのです。しかし神子殿の剣の冴え、感動しました!ぜひ鍛錬にご一緒させてください」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
このおぞましい世界 シュナイゼル
このおぞましい世界
何度体を重ねただろう。実のない行為はいつの間にかわたしを蝕んで、日々をさらに憂鬱なものにしてくれた。彼はなにを思いながらわたしを抱いているのだろうか。求められたところで、それが本心とも思えない。
「もうすぐ誕生日だね。なにか欲しいものはあるかな?驚かせるより、喜んでもらいたいんだ。教えてもらえないかな」
「子供が…子供が欲しいです」
「それは…私と君の子ということかな?」
「はい」
「君がそういう風に思ってくれていたなんて知らなかったよ。嬉しいな…でも誕生日には違うプレゼントもさせてほしいな」
「子供が一番ほしいんです。」
「子供が欲しいと、おっしゃったんですって?殿下が嬉しそうにはしゃいでいらっしゃいましたよ」
「あの方でも、はしゃいだりするんですね」
「それは、表面上は落ち着いていらっしゃいましたけど、内心とてもお喜びでしたわ。殿下は小さな子がお好きですもの。セラ様とご自分のお子となれば格別ですよ」
「カノン、わたしは違うんです」
「子供ができれば、もうあの方に抱かれずにすむと思って言ってしまったんです」
「身重になれば、あの方は解放してくださる。母となれば、その子を中心に家族として繋がれる…体でなく…」
「それは…セラ様…殿下をお嫌なの?」
「シュナイゼル様をきらっているのではないんです。ただ、あの行為が、とても」
「とてもおぞましいものに思えて」
「命はそうやって繁栄してきたんですよ」
「繁栄のためだけの行為ならいいのです。終わりがいつかくるでしょう。男性の欲ばかりを受け止めるのは、わたしには荷が重すぎます」
「まるで意味のない行為におもえて、苦痛でなりません」
「恋をしらぬまま大人になってしまわれたのね」
「…そうかも、しれません」
「殿下に恋をなさいなさい。偽りの恋でもよろしいの。あの方はすばらしい方ですわ。尊敬は憧れになって、きっと恋の代わりにあなたの心をすくってくれる」
「そしていつか、愛に変わるでしょう」
「変わらなかったら?」
「諦めることですわ」
何度体を重ねただろう。実のない行為はいつの間にかわたしを蝕んで、日々をさらに憂鬱なものにしてくれた。彼はなにを思いながらわたしを抱いているのだろうか。求められたところで、それが本心とも思えない。
「もうすぐ誕生日だね。なにか欲しいものはあるかな?驚かせるより、喜んでもらいたいんだ。教えてもらえないかな」
「子供が…子供が欲しいです」
「それは…私と君の子ということかな?」
「はい」
「君がそういう風に思ってくれていたなんて知らなかったよ。嬉しいな…でも誕生日には違うプレゼントもさせてほしいな」
「子供が一番ほしいんです。」
「子供が欲しいと、おっしゃったんですって?殿下が嬉しそうにはしゃいでいらっしゃいましたよ」
「あの方でも、はしゃいだりするんですね」
「それは、表面上は落ち着いていらっしゃいましたけど、内心とてもお喜びでしたわ。殿下は小さな子がお好きですもの。セラ様とご自分のお子となれば格別ですよ」
「カノン、わたしは違うんです」
「子供ができれば、もうあの方に抱かれずにすむと思って言ってしまったんです」
「身重になれば、あの方は解放してくださる。母となれば、その子を中心に家族として繋がれる…体でなく…」
「それは…セラ様…殿下をお嫌なの?」
「シュナイゼル様をきらっているのではないんです。ただ、あの行為が、とても」
「とてもおぞましいものに思えて」
「命はそうやって繁栄してきたんですよ」
「繁栄のためだけの行為ならいいのです。終わりがいつかくるでしょう。男性の欲ばかりを受け止めるのは、わたしには荷が重すぎます」
「まるで意味のない行為におもえて、苦痛でなりません」
「恋をしらぬまま大人になってしまわれたのね」
「…そうかも、しれません」
「殿下に恋をなさいなさい。偽りの恋でもよろしいの。あの方はすばらしい方ですわ。尊敬は憧れになって、きっと恋の代わりにあなたの心をすくってくれる」
「そしていつか、愛に変わるでしょう」
「変わらなかったら?」
「諦めることですわ」