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tueto hum pa

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無双パロ 呉篇1

「すごい数の船…」
「真矢、お前は父と共に御座船にいろ。今回、こちらもただでは済まんだろう」
「子桓でもそんなこと言うんだね」
「なんだと?」
「自信バカだと思ってた」
「…喧嘩をうっているのか」
「ごめんごめん」
「とにかく、奴らがなにを企んでいるか分からぬ以上、お前が前線にでるのは許さん。危なくなったら父とともに退け」
「そんな!なにいってるのよ」
「嫌な予感がするのだ。頼むからたまには私の言うことを聞いてくれ」
「…分かった。そんなに言うなら…でも、あんたが危なくなったらたすけに行っちゃうから!まけるなよ!」
「ふっ…まったく気の強い女だ」
「流石は貴方の奥方ですな。お似合いです」
「大人しく守られておればよいものを…」


「さて、儀式は整いました。東南の風は吹きます」
「では、黄蓋殿は工作船にて待機を」
「東南の風…龍脈が動く…」
「諸葛亮殿?」
「暁の神子…真矢殿が元の世界に帰るときです。邪魔者には消えていただきましょう」
「真矢殿が…元の世界に帰る…?」
「成功するかは分かりません。無事には戻れないかもしれませんが、この世界から消えてもらうことはできます」
「そんな、丞相、それでは真矢殿は」
「曹魏の神子は我らの為になりません」


「風向きが変わった?!まさか、この時期に」
「まずい!火計です!早く連環を解くのだ!」
「東南の風だと…真矢は無事か!」
「まさか、諸葛亮の術だと」
「真矢!」
「子桓!助けて!吸い込まれる…!」
「真矢!手を離すな!」
「だめ、あなたまで吸い込まれる!」
「構わん!」
「子桓!」
好き、真矢の唇がそう言ったように見えた。渦に飲み込まれた真矢はそれきり姿を消してしまった。
「真矢!」
「いけません、我々の負けです。落ち延びましょう」
「あれは私の妃だ!」
「貴方が生きなければこれまでの犠牲も無駄になります!」
「っ…父は無事か」
「既に退路へ向かっておいでです。残った者も後を追っております」
「…行くぞ、必ず借りは返す」


「なにか分かったか?」
「いえ、流れ着いた形跡も、ご遺体も見つかりません。諸葛亮の術だとしたら、元の世界に帰されたのかもしれません」
「それはない」
「なぜそう言いきれるのです」
「真矢は私が妃にしたのだ。元の体ではない。あれが、もう帰れないと思うといっていた。仮にも神子だ、わかるのだろう」
「しかし…」
「捜索は続けよ。我々と出会った時のようにどこかへ飛ばされたかも知れぬ」
「間者に探らせましょう。しかし、砂漠で金を探すようなものです。あまり期待はなさりませんよう」
「巡り会うのだ。女神の導きが、きっとある」


「う…ん…」
「目が覚めましたか?暁の神子殿」
「あ…あなた、誰…ここは…」
「怪我をなさっています。まだ動いてはいけません」
「助けてくれた…の?」
「助けた…とは少し違うかもしれませんね。人道的見地から保護させていただきました」
「?」
「私は陸遜伯言。呉の将です」
「呉?どこ?日本じゃないんですか?」
「日本?」
「あれ…なんだっけ、私、そう、昔の中国にタイムスリップして、…暁の神子…私…戦って…あれ…わからない…なんで戦ってたんだっけ…」
「まさか、記憶が?ご自分の名前はわかりますか?」
「名前…名前、橘、真矢」
「ご自分がいままでなにをなさっていたかわかりますか?」
「剣を持ってた…戦ってました…誰と?思い出せない、陸遜さん、私、思い出せない!陸遜さんはわたしのこと知ってるんですよね?!教えてください!」
「落ち着いてください、からだに障ります。お茶をどうぞ…ゆっくり」
「貴女は暁の神子殿で、ずっと私と一緒に戦っていたんですよ」
「あなたと…一緒に?」
「ええ、海戦の途中で海に落ちて、運良く私の船にお助けすることができました。思い出しましたか?」
「…ごめんなさい、思い出せない」
「きっとすぐに思い出しますよ。それより今はまだゆっくり休まれてください。貴女の体が一番大切なんですから」
「…なんだか眠くなってきた…怖い…」
「私が手を握ってますから。安心して眠ってください」


「なに?神子殿が記憶喪失?」
「はい。とても演技には見えませんでした。まだ油断はできませんが、その可能性が高いと思います」
「また厄介な姫さんだな。記憶があればあったで厄介だが、ないならないでどーするんだ陸遜」
「とりあえず、以前から私と一緒に戦っていたことにしておきました。味方としてつかえるならこしたことはないでしょう」
「しかし、暁の神子が曹魏の妃だということは有名な話だぜ」
「曹魏を破った孫呉の戦利品としてでも、暁の女神の加護が孫呉にあり、とでもなんとでもいえるでしょう。曹魏の神子は偽者だったということにしてもいい」
「陸遜、お前腹んなか真っ黒だな」
「いや、それでいい陸遜。神子殿には我々に都合のいい記憶を植え付けるのだ。それでこちらにつけば我々は暁の神子を円満に手に入れられる」
「もし記憶が戻ったり、そもそも演技だったら?」
「そのときは力で従わせるだけだ。天より授かった暁の神子、お互いに気持ちよく付き合えるのが神子殿には一番だろうがな」
「周喩殿、神子殿の件はこのまま私にお任せ頂けませんか」
「わかった。陸遜、お前に任せよう。相手は女性だ。平和的に頼むぞ」

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無双パロ蜀編4

呂布の首が晒されたのはそれから数日も経たないうちだった。味方に暗殺されるというのは、武神呂布の死としてはなんともあっけないものだと思った。真矢は曹丕の隣でなんとも言えない表情をしていた。首を見に行くことはなかった。

「今宵、袁紹が宴を開くそうだ。劉備殿も参加する。真矢も来い」
「いく!私、劉備様の軍師の、諸葛亮さんに会わなきゃいけないの。龍眼を持つ人なんだって…もしかしたら、張角がいってた人かも」
「そうか」
「姜維殿が紹介してくれることになってるんだ」
「そうか」


「姜維さん!」
「真矢殿、お久しぶりです」
「妻が世話になったそうだな。礼をいう」
「ちょっと子桓!なんで、そんなに偉そうなのよ!すっごくお世話になったんだから!」
「ははは、とんでもありませんよ。良かった、曹丕殿の隣にいる真矢殿は大変お元気そうだ。それが本来のあなたなのですね」
「そうですか?自分じゃわからないですけど、でも帰ってきたなって思うんです」
「それは良かった。では、あちらで師がお待ちです」
「…はい。」

「お初にお目にかかります。私は諸葛亮と申します。姜維よりお話は伺っています神子殿」
「初めまして、諸葛亮殿。お会いできて、嬉しいです」
「これは…暁の神子とは実在したのですね。神気が見えます。これほどまでとは」
「あなたはまだ帰れません。神を下ろした者をおくることは私にも容易くない」
「諸葛亮殿が龍ではないんですか?」
「龍は私です。奇跡を起こすこともできます。しかし、あなたは神の力をお持ちです。龍は神には及びません」
「そんな…」
「今はその時ではないということです。私にわかるのは、あなたが元の世界に帰れるのは東南の風の吹くその時…なにを意味するのかはまだわかりません。しかし、その時ならば私があなたをお返しできるでしょう」
「東南の風…?」
「時が来ねば私にもわかりません。申し訳ございません」
「いえ、ありがとうございました。実は迷っていたんです。もし帰れたとしても、帰りたくないんじゃないかって」
「ほう…」
「私はここでたくさんの人を殺してしまいました。元通りの世界にはもう戻れないんだと、思いました。この世界でできることをしたいと思います」
「あなたは強い女性ですね」
「…そうなりたいです」

「ってことで、私、帰れませんでした」
「真矢、飲め!今日は飲んで忘れろ」
「馬超殿!もう真矢殿も飲みすぎです!」
「姜維殿も、趙雲殿も今日くらい無礼講だ!真矢を見習ってほら、飲め」
「それで、真矢殿はこれからどうなさるのですか?」
「諸葛亮殿は、東南の風が吹くときがその時だっておっしゃっていました。その時まで、できることをしたいと思います」
「蜀にいらっしゃいませんか。師の側にいたほうが、その機も掴みやすいと思います。私も真矢殿にいていただけたら嬉しい」
「姜維さん…ありがとう。でも私、曹丕のお手伝いがしたいんです。曹丕がいなかったらわたし、もう死んでたと思うの。恩返しというか…」
「真矢は曹丕殿を好いているんだな」
「…うん、好きなんです」
「妬けるな。なあ趙雲殿よ」
「そうですね。しかし私は真矢殿が幸せであってくだされば、それが嬉しい」
「みんなに出会えてよかった」
「また戦場で会うこともあろう。敵でないことを祈っているが、我らはお前を守ろう」
「ありがとう。できれば仲間として戦いたいな」
「お迎えだ。真矢、またな」


「お疲れ様。偉い人は大変ね。酔ってるね」
「部屋で飲み直すぞ。付き合え。司馬懿、お前もだ」
「司馬懿と話すのも久しぶりだね」
「まったく、私がどれだけお前のために時間を割いたと思っている。しっかり働いて返してもらうぞ」
「はいはい。せっかく再会できたんだからもっと友好的にいこうよ」
「司馬懿としては十分友好的だ」
「どこで歪んじゃったんだか」
「真矢!うるさい凡愚め!」
「真矢、お前はこれからどうする?龍の話では帰る機会は来るのだろう」
「うん。私はここに、魏にいるよ。子桓についていく。みんなのためになにか出来ることがしたいの」
「龍の側にいたほうが、よいのではないか?友人としての意見だ。軍師としては、神子を他国に渡すのは反対だが…お前のためなら手を打とう」
「ううん、その時がくるなら、私がどこにいても帰れるはず。運命ってそういうものじゃない?」
「そうかもしれぬな」
「それにね、劉備様の軍にいたときに、日本に帰りたいより、曹丕のいる魏に帰りたいって思ってたの」
「惚気は余所でしろ」
「すまんな司馬懿。私はこれが可愛くてたまらん」
「ふっ、その調子では無傷で帰すのは無理そうですな」
「もう怪我しちゃったしね」
「そういう意味ではない。貞操の話だバカめが」
「て、貞操!」
「邪魔者は退散いたします。あまりしつこくなさりませんよう」
「心得ている」
「ちょっと!子桓!」
「お前はもう少し酒を飲むべきだな。飲ませてやろう、遠慮するな」
「うっ、ん…」
「私の元に残るのだろう。本当の妻になる、そういうことだろう」
「あ…そう、うん、そうなりますよね」
「お前が残ると言ってくれて嬉しかった」
「子桓…」
「愛している」

「お久しぶりです曹丕様、満足なさいましたか」
「とりあえずはな」
「私がいないうちに鋭気を養わせている」
「生娘には堪えましょうな」
「手加減くらいわきまえている。それで司馬懿、今後の予定は決まったか?」
「曹操様は袁家を討つおつもりです。後顧の憂いをなくし、富国強兵につとめよとのお達しです。私としても、依存はありませんので、準備が整い次第出陣となるでしょう。主戦場は官渡となりましょう」
「名族の終焉か…無常なものだな」
「曹操様としては、戦女神のご威光が欲しいようで、真矢を従軍させたいとのお達しです」
「使えるものは、つかう、か。真矢は後方で控えさせよう。もう前線にはださん。お前が見張ってくれ」
「はっ…しかしあれが大人しくしておるとは考えにくく…私はか弱いです故」
「うむ…戦女神というだけはあるな。しかしもう懲り懲りだ。淵小父上を近くに配置しよう。真矢とお前は本陣で軍師らしくしているんだな」

「寝ているのか?」
「あ…おはよう子桓、あれ、もう夜?」
「夜も朝も知らなくていい。私だけを覚えておればな」
「なっ…そんなこという人だったっけ」
「愛しい妻には睦言も囁く」
「つ、ま…」
「もうすぐまた戦になる。敵は袁家だ。勝利の宴のあとに祝言をあげるからそのつもりでいてくれ」
「それって、正妻ってこと?」
「それ以外になんだというんだ?不満か?」
「子桓は、王子様だから、正妻は名家のお姫様なんだろうなーとか、思ってて。私はほら異世界の住人で実家の力とかまったくないわけだし、それで、いいの?」
「私が妻の実家の助力なしでは天下を築けぬと思うのか?」
「そうじゃなくて、一般的な話」
「お前さえいてくれれば、私はなんだってできる。本当はこの屋敷で大切に守って行きたいが…暁の巫女として私を支えてくれないか」
「うん。もちろんだよ。そのためにここにいるんだから」


「久しいな真矢。元気そうでなによりだ」
「あんたねぇ、乙女をからかって楽しい?オヤジ趣味のセクハラやめてくんない?」
「はっ、もう乙女ではなかろうに」
「うわ、最低!上司の奥さんにそーいうこという?」
「バカめが!」
「素直じゃない奴」
「なにが素直じゃないというのだ!」
「うっざ」
「それで、袁家攻めるんでしょ?私はなにをすればいいの?また前線いき?」
「もうお前は前線には出さぬ。後方で神子の存在を知らしめるのがお前の役目だ」

コンラート2

「気持ちいい夜だなマヤ、酔いも冷めただろ?」
「全然冷めない」
「陛下がくれたウコンの力、飲むか?」
「いらないよー酔いたい気分のときだってあるじゃんよー」
「川辺で休んで帰ろう。月がうつってきれいだよ」
「うん、きれいね」
「俺はさ、マヤにどうしていいか分からないんだ」
「それって別れ話?聞きたくない」
「違うさ、その逆。マヤのことを好きすぎて、大切にしたいんだけど、それがマヤを不安にさせてたんだなって反省した」
「大切にしてくれてるなって、分かってるよ。ただ、その、みんなが思ってる関係はないじゃない?私じゃだめなのかなとか、考えちゃって」
「夢魔なのに魅力ないとか夢魔としても女としても終わってる…コンラートがもてるの知ってるし、好きと不安と、でも好きだから一緒にいたいの。だから別れるなんていわないで!」
「落ち着いて。別れるなんていわないから。俺はマヤが世界一好きなんだから、そんなこというはずないだろ?」
「ほんと?」
「ほんと。これから遠慮しないけど、いい?」
「うん」
「では今宵、姫の寝所へ伺います」
「今宵!もう夜も更けてますけども」
「大丈夫、どうせ明日は動けなかったから、ゆっくりできるよ」
「二日酔いって言っておくから大丈夫」
「ゆっくりできるってなに、あの、コンラートさん」
「大丈夫、怖くないよ。大切にするから」
「笑顔が怖い!」

無双パロ蜀3

「真矢殿、もうすぐ下ヒです。」
「曹家の軍はいる?」
「いえ、ここからでは見えません。反対側に進軍していると書簡が届いています」
「そっか…戦局はどうなの?」
「苦しいですね。ただ、呂布といえども籠城には限度があります。直に動きもありましょう」
「姜維のお師匠さまには会えそうかな?」
「師は策のためにずいぶんと後退しておいでです。戦場で合流となるとおもいます。」
「勝ったら、宴があるよね。そこであえないかな?絶対勝つから!」
「ええ、必ず」
「私も、出陣します。いままでお世話になった恩を返させて。劉備様にも、お礼になるような活躍をしてみせるわ」
「体はもう大丈夫ですか?」
「バッチリ」
「では真矢殿は趙雲殿とともにお進みください。中央門を落とします。ご武運を」
「姜維も、元気でね!」

「さすがに兵が厚いね。城壁も籠城にぴったり」
「水路を封鎖ってできますか?」
「水路、ですか」
「はい。水攻めをしましょう。そのうち中から開けてくれますよ」


「門が開いたぞ!総攻撃とする!」
「呂布を討て!」
「あんたね、この前はひどいことしてくれたじゃない。おかげで大怪我だったのよ!」
「暁の神子か。生きていたとは驚きだな」
「死んでたまるもんですか!」
「女だとて容赦はせん!」
「私もよ、あんた倒して、赤兎馬もらう!」
「赤兎馬?真矢殿?」
「あんたはモーションが遅いのよっ!」
「ちっ、この俺が背をむけるか」
「逃げてんじゃないわよ!あ、赤兎馬もらったからね!もう私のよ!」
「趙雲殿、このまま攻めます!」
「お待ちください!あそこに、曹の旗印が…」
「真矢!」
「…あ、子桓!!」
「無事だったか」
「あ、あ、会いたかったよ」
「私もだ。どこも無事か?」
「劉備様の軍に保護していただいていたの。こちらは趙雲殿。お世話や護衛をしてくれたの。お友達よ」
「妻が、ご迷惑をかけた。劉備殿にもお会いしたいとお伝えくださるか」
「はっ、必ずや」
「真矢殿、ここでお別れですな。あなたのそばで働けてよかった。またいずれお会いしましょう」
「趙雲殿も、お気をつけて。本当にありがとう!みんなにも、ありがとうって、伝えてください!」
「はっ。勝利の宴でお会いしましょう!」

「馬鹿者が!どれだけ心配したと思っている…探し回ったのだぞ」
「ごめん…早く連絡を取りたかったんだけど、劉備様が書簡を連合本軍にだしてくれてたんだけど、まだ届いてなかったんだね
「袁紹め、情報を回さなかったな…わざと書簡を止めて神子を手中に収めようとしたのか…もしくは無能故見落としたのか…」
「一枚岩じゃないってことだよね。他の陣営には気をつけるよ。あ、でも蜀のみんなは良い人たちだった」
「そのようだな。お前を助けてくれた礼をせねば」
「怪我は、ないか?いや、ないわけがないな。もういいのか?」
「うん…もう大丈夫。また会えて嬉しい」
「ずいぶん素直になったな真矢」
「だって、もう会えないかもって…呂布にやられたとき、私死んだかなとか思って…」
「お前が無事で良かった。お前が行方知れずになってから、ずっと探していた。無事に元の世界に返すと約束したが、守れなかったことをずっと悔やんでいたのだ」
「子桓、好き。怖かったよ、会いたかったよ、抱きしめて欲しかったの」
曹丕はもう遠慮はいらないとばかりに真矢を抱き締めた。久しくかいでいなかった女神の香りに頭がクラクラ揺れた。蜀では大事にされていたようだが、はたして本当に無事だったのかそればかり気になってしまう。真矢を送り届けた将軍は感じのよい美青年だった。曹丕は人に嫉妬する性質ではないが、大切に思っている女が守られ、信頼する男にザワザワと胸が騒ぐ。
「あの将軍、随分親しいように見えたが、こんなことはされなかったか?」
曹丕は真矢の唇を荒々しく奪った。吐息混じりに「こんなことしない」と真矢が呟く。消え入りそうな声は少しかすれて、曹丕の耳を刺激した。こんな風に感情を他人にぶつけたことがあっただろうか。大切にしたいと思うが、反対にめちゃくちゃにしてやりたいとも思った。
「傷をみたい。いいか?」
「う…ん」
衣を一枚一枚脱がしていく。唇を重ねながら、丁寧に剥ぎ取った。館の薄暗いなかに、真矢の白い肌が浮かび上がった。初めてみる真矢の素肌に息をのむ。彼女はまるで少年のような言動をとるし、服の上からはあまり女性的な体にはみえなかった。しかし裸の真矢はまるで女そのものだった。美しい胸の膨らみに、くびれた腰から続く柔らかそうな脚。恥ずかしそうに目をきつく結んでいる彼女は、普段の勝ち気な姿と相まって愛らしく感じた。
「傷は、もうすぐ消えそうだな。安心した…」
「うん、ひどい怪我だったんだけど、劉備様がお医者さんをつけてくれたの。呂布の腕が良かったから、傷跡も分かりにくいだろうって」
「そうか。それだけは奴の武に感謝しよう」
「子桓、お願い、もっと抱きしめて。帰ってきたって感じたいの」
「ずっとここに帰ること考えてた。日本にじゃなくて、子桓のとこに帰るって、思ってたんだよ」
「あっ…」
曹丕は真矢の全身を優しく愛撫した。湿っぽい唇で口付けを落としながら、身をしならせる真矢を楽しむ。動物になった心地だった。こんな風に女を愛するのは初めてだった。自分の指が真矢を喜ばせていることが嬉しかった。
このまま自分のものにしてしまいたい。曹丕は身を振るわせる真矢の荒い呼吸を聞きながら自分を抑える。思いを遂げて、そうすればもう真矢を手放せなくなるだろう。平和な世界から来た真矢を、この戦乱の世に縛り付けることはできなかった。
抱き合ったまま朝を迎えた。

無双パロ蜀へ2

体も回復し、真矢は外ですごすことが増えてきた。曹丕はどうしているだろうか。心配してるかな。すぐに連絡をとりたくてもここには電話もメールもない。軍を興したばかりの劉備殿では、曹家に遣いをだすことはなかなか難しいそうだ。連合軍の盟主である袁家を通して書簡を送ってくれているというのだが、いつ届くかどうかは分からない。
「神子殿?どうなさいました?ぼっとされて、まさか熱でも!」
「い、いえ、ちょっと考えごとしてました。ごめんなさい、えっと、薬草もちゃんと摘んでますよ」
「それは…毒草ですね」
「あ…わたし、だめですね」
「これはよく似ているので、熟練の者でも間違えるのです。お気になさらないでください」
「姜維殿はすごいですね。お強いし、頭もいいし、いろんなこと知ってるし。かっこいいです」
「そんな…私なんて師に比べればなんでもありません。まだまだ勉強中の身」
「お師匠様がいるんですか?」
「はい。今は別働隊として動いていらっしゃいますので、書簡で指示を頂いています」
「こっちの動きも指示なさるんですか?」
「はい。師は龍眼を持つお方です。この世の全てを見通しておられるのではないかと思うほどです」
「龍…」
「神子殿?」
「あの、その方にはお会いできませんか?わたし、龍を宿す方を探しているんです。」
「龍を宿す、ですか。しかし師とは行軍の予定が合うかどうか。機があれば、必ずご紹介いたしましょう」
「ありがとうございます!」
「神子殿も、ご事情がおありなのですね」
「はい…信じていただけないかも知れませんが、私、張角って導師に違う時代からさらわれて来たんです。曹丕に拾われて、乱に参加して張角に元の時代に帰してもらおうとしたら、龍を宿す術師じゃなきゃできないって」
「そうなのですか。あなたは不思議な方だ。神子とはそういう神秘性をもつのでしょうか。あなたが嘘を言っているようには思えない」
「いきなり暁の神子なんて呼ばれて驚いたんです。今でも自分がそんな立派ななにかなのかって信じられないけど、みんなが求めてるならこの時代にいる間は頑張ろうって思ってます」
「神子殿なんでも私に頼ってください!ご協力は惜しみません。私はあなたに笑っていてほしいと、思いました…その…」
「姜維殿、お優しいんですね」
「そ、そろそろ戻りましょう」
「はい」
「神子殿は…お名前を教えていただけませんか」
「真矢です。橘真矢」
「真矢殿…」
「真矢って呼んでください」


薬草摘みから帰ってくると、馬超が馬の手入れをしていた。
「おお神子殿、薬草はとれました」
「はい。ほとんど姜維殿が、ですけど」
「ははは、そのうち山のように摘んでこられるようになります。神子殿は野山の暮らしには不慣れなようにお見受けしますな」
「そうですね、馬に触るのも初めてでした」
「馬に?よっぽどのお嬢様か、海育ち…には見えませんが」
「ここじゃない世界からきたから、ちょっと勝手が違うみたいですね」
「外国人にしては言葉が美しいな。てっきり都の出かと思っておりました」
「そうですか?」
「確かに、戦女神は異国より現れるといいますからな。とても、神秘的だ」
「え?」
「馬もよく神子殿に懐いています。元々おとなしい生き物ですが、気が荒いやつまであなたには気を許しているようだ。曹家に帰すのが嫌になります」
「あ…曹家は仇だと、お聞きしました…」
「それもありますが、神子殿を独占したくなりました。神子殿では味気ない。お名はなんと申される」
「真矢です。橘真矢。これでお友達ですね」
「…真矢、こちらの世界では特別な相手以外に名は明かさぬものだ」
「俺を特別な男と思ってくれたと解釈するぞ」
「え!そんなの初めてきいた!」
「まあ、そういうことだと思っていた。これからは注意しろよ」
「なんでいきなり口調まで変わるのよ!」
「俺たちは特別なお友達、だろ」
「なんか、違う気がする…」
「お前も口調が変わっているぞ。そっちが、素だな?勝ち気な女は好きだ」
「ちょっと触らないでよ!神子に手出したら劉備様に怒られるわよ!」
「このくらいで神子殿の清浄性は失われたりせぬさ」
「や、馬超、どこ触って…」
「意外と女らしい体つきをしているじゃないか。声もいい」
「お友達にこんなことするの!?」
「愛情表現だ。馬だってすることさ」
「馬って、私たち、人間だからね、もう少し複雑なんじゃないかな!」
「うっ、お前…やるな…」
「ばーか!」

「はぁ、びっくりした」
「なにが、びっくりしたんですか?」
「きゃ!趙雲殿!」
「そろそろ夕餉の支度ができますので、お探しさしていました」
「ありがとうございます!おなかペコペコだな~」
「なににびっくりしたんですか?」
「え、そのはなし蒸し返します?」
「ええ、神子殿のことはなんでも知っていたいのです」
「あの、馬超殿に名前を教えたら、この世界では特別な相手にしか名前は教えないものだって迫られて、びっくりして逃げてきたんです」
「な、馬超殿が、神子殿にご無礼を!?お怪我はありませんか!!もしや、なにか失礼なことなど、ございませんでしたか?」
「はい、びっくりして勢いで蹴っちゃって…そのまま逃げてきました…」
「姜維殿は名前を名乗ってもそんなことしてこなかったので、本当にびっくりしたんです。名乗っちゃダメなんて知らなかったし…」
「姜維殿にも、教えたのですか…」
「はい、聞かれたから名乗っただけのつもりだったのですが…これからは気をつけます」
「夕餉はお部屋にお持ちしますので、ごゆっくり落ち着かれてください」


「趙雲殿、真矢のところにいくのか?」
「真矢?」
「おっと、神子殿だ。なんだ、知らなかったのか」
「女性の名を聞くなんて、ましてや神子殿ですぞ馬超殿!」
「ははは、美しい女性を口説くのに神子もなにも関係ないさ。謝っておいてくれるか。次は優しくするから恋しくなったら呼べ、とな」
「馬超殿!?」
「あの娘、色気のないと思っていたが、予想以上だったぞ」


「神子殿、夕餉をお持ちしました」
「ありがとうございます。あの、よかったら、一緒に食べませんか?ひとりじゃ寂しくて」
「では、お言葉に甘えて」
「真矢殿とおっしゃるんですね」
「はい」
「馬超殿が、次は優しくするから恋しくなったら呼べとおっしゃっていました」
「な!あいつ!そんなことばっかり言って!」
「随時仲が良いんですね」
「友達です!それ以上でも以下でもないです」
「友達…では、私は、なんなのでしょう。正直、私だけお名前を教えていただけなくて、落ち込んでおります。もちろん!女性の慎ましさとは理解しておりますが、馬超殿に自慢までされて、私のほうが神子殿と親しくさせていただいていると思っていただけに…」
「そんなことありません!趙雲殿のこと、私は大好きです。助けていただいて、お世話までしていただいて…立派な方にお友達なんて、失礼かと後込みしてしまいました。私の国では、男性も女性も名前は誰にでも教えて大丈夫なんです。あまり考えもせずに教えてしまいました…これからは気をつけます」
「私も、お友達になってもいいですか?真矢殿と、二人のときなどはお呼びしてよいでしょうか」
「はい!」
「あと、馬超殿になにをされたんですか?」
「えっと…抱きしめられて、その、体、触られて…あの人慣れてるっていうか、気づけなくて…」
「なんてことを…」
「わわわ、いいんです、いや、よくないけど、もう気をつけますし、私が迂闊だったのが、いけないんです」
「私はあなたを守りたいんです…真矢殿…ここにいる間だけでも、私はあなたの槍になりたい」
「趙雲殿…」
「子龍と申します。そうお呼びください」
「あ…子龍…殿」
この笑顔は反則でしょう。ごめん曹丕。ちょっと心が揺れちゃった。
「私、曹丕の妻なんです!ほんとの妻じゃないけど、奥さんだから、ほかの男性にクラクラしちゃダメなんですわたし!」
「本当の妻ではない?どういうことですか?」
「私、元の世界に帰るから、キレイなままで返してくれるって、だから、ほんとの奥さんじゃないけど、一応、人妻なんです」
「…すごい方だ。真矢殿を愛していらっしゃるんですね」
「…わかりません。でも、あの人に会いたいです」
「この子龍、真矢殿を絶対に曹家まで無事にお届けします」
「ありがとう…」

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