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ガン種 虜1
虜1
「キラ君!危ない!」
イオリの叫び声と、鈍い衝撃に、キラは自分が彼女の機体に体当たりされたことに気づいた。
一瞬の隙。引き金を引く一瞬の迷いだった。
「え…」
イオリの機体コスモスがイージスに捕獲されるところが見えた。一瞬前まで自分がいた座標だった。キラは慌てて引き金を引こうとするが、管制に止められる。「ジン大尉にあたる」とナタルの声が聞こえた気がした。
「逃げて!私はあなたを死なせるわけにはいきません」
「イオリさん!」
通信に砂嵐が混じる。イージスは仲間に守られながら母艦のほうへ見えなくなっていく。
「フラガさん、あとは、お願いします…みんな…守っ…て」
それが最後に聞こえたイオリ・ジン大尉の声だった。
アークエンジェルに戻るとフラガがヘルメットをぞんざいに脱ぎ捨てた。短い付き合いだが、飄々として印象のあるフラガには不釣合いな激情に駆られていると思った。
「クソっ!イオリ…」
「あ…ぼく…ぼくのせいで…」
「イオリも軍人だ。…覚悟は出来てた。守れなかった俺が悪い」
「でも、ぼくを庇って…」
フラガは悲痛な目でキラをみていた。この子は民間人だ。それをイオリがかばうのは当然の行動だったのだ。キラに責任はない。こみ上げてくる怒りをぐっとこぶしに隠しこみ、彼の両肩に手をついた。これでパイロットは自分ひとりになった。これからアークエンジェルを守るにはキラの力が不可欠だ。ここで彼を責めるわけにはいかないのだ。
「これからは俺とお前の2人でこの艦を守らなきゃならん。イオリを取り戻すまで、やれるか?」
「はいっ、絶対、助けてみせる…」
「お手柄だなアスラン。新型MSだ。コスモスと言うらしいぞ。ブルーコスモスの象徴のようだ。小さいが、しぶとい」
拘留室として使われることになった部屋にアスランは呼び出された。簡素なベッドには点滴につながれている若い女性が寝ていた。これがあの機体のパイロットなのだろう。まさか女性だったとは思わなかった。
クルーゼはコスモスの映像を流しながら、実に見事な腕だとつぶやく。
「は、隊長…ありがとうございます」
「こちらがパイロットのイオリ・ジン大尉だ」
「…女性…だったんですね」
「彼女はちょっとした有名人でね。捕らえられたのは幸運だよ」
「はぁ」
「ああ、彼女はこうみえて本当に優秀なパイロットであり、技術者であり…連合の古い軍人家系の血統なんだよ」
「そうですか…」
「まるで我々のような優秀さだと思わないか」
「まさか!」
「どうだろうね、大尉?」
気付くと目を覚ましていた女性と目があった。深い緑色をしていた。まるでかつての地球のような色だ。
「黙秘します。国際法に則った捕虜の待遇を希望します。クルーゼ隊長」
「国際法か…君は女性兵士の捕虜がどんな扱いをされるか知っているかな?」
「知らないわけではありません」
「ならば話は早い。アスラン、彼女を君に与えよう。陵辱して構わない」
「そんな、隊長、できません」
「アスラン、これは命令だ。君が従わないなら、ほかの者にやらせるだけなんだよ」
「君は優しい男だからな、荒っぽい連中に与えるよりいいと思ったんだが」
アスランはイザークやディアッカを思い浮かべた。彼らは喜ぶだろう。そういう経験もアリだと話していたのを聞いたことがある。
「捕虜の待遇規定と違います」
「ここは戦場なのだよ。彼女も、奪取した機体のなかから遺体で発見されたことになるだけのことだ。わかるね?」
「ころしなさい!私を!ラウ・ル・クルーゼ!」
「この生意気な口を黙らせるように。嘘をついてもすぐにわかることだ。励めよ」
「殺してください…辱めを受けるくらいなら…殺して」
「すみません、上官命令に逆らえません・・・」
こっちだって混乱しているのだ。アスランは今にも舌を噛み切りそうなイオリをよく観察しながら憤った。彼には嫌がる女を無理やり犯す趣味はなかったが、それ以上に上官に逆らうことは軍人として許されない。
「ザフトはこのようなことを許すのですか!」
「そっちだって…血のバレンタインを忘れたのか!」
「俺は母を失った。ただの農業プラントだぞ…これ以上犠牲を増やしたくないんだ!君は敵軍のパイロットだ。俺の仲間を沢山殺している。そりゃあお互い様さ、俺も沢山君の仲間を殺した。そっちからはじめた戦争なんだ…」
「あなた、名前は?」
「キミには関係ない」
「私はイオリ。あなたは?」
「…アスラン・ザラだ」
アスランは悲痛な面持ちで包帯だらけのイオリに覆い被さった。ラスティや殺された仲間たちの顔が浮かぶ。憎しみと困惑がごちゃまぜになる。隊長は何を考えているのか?敵軍の女を抱いて、この憎しみが消えるわけはない。捕虜の女を抱くなんて卑怯者の軍隊がすることだと思っていた。戦争なのだから、そういうことはある程度起こっているのだろうが、いざ自分がその立場にたってみるとどうすればいいか分からなくなった。
「あなたは人道的に扱ってくれるんでしょう?」
「…あぁ…すまない」
「戦争しているんだから、仕方ないわ。優しそうな人で良かった」
傷が痛むのか、イオリは苦しそうな表情でアスランを受け入れた。それ以上彼女は一言も話すことはなく、アスランは初めて女を抱いた。優しくしたい、でもできない。
なかなか挿入が上手くいかなかった。イオリは悪い顔色を更に青くし、震えていた。
一通り済ませ、服を着ているときにアスランの視界に赤い染みがうつった。血がシーツに付着していた。男女のことに疎いアスランでもそれくらいの意味はわかった。
「あ…まさか、初めてだったんですか…」
何もいわないイオリにとても罪悪感を感じた。剥ぎ取った衣類を彼女の手の届くところにそっと置く。なんと言えばいいのかわからなかった。自分だって好きで抱いたのではない。
「申し訳ありません…俺が言えたことじゃないのは重々承知ですが、その…謝らせてください」
「いいのよ、私は捕虜なんだから…」
緑色の瞳にはうっすら涙が滲んでいた。女性は守るものだとアスランは信じていた。婚約者であるラクスのことも、結婚するまではなにかあってはいけないと、キスをするのもはばかられた。
「キミは、その、好きな人はいるんですか?」
「…います。大切なの。守りたかった」
ポツリとイオリは呟いた。キラのことだろうか。彼女は身を挺して彼をかばって捕虜になった。
「アスランには大切な人はいるんですか?」
「…はい、婚約者がいます」
「みんな守るために戦っている・・・一緒なんです」
「…休んでいて下さい。隊長に報告してきます」
「イオリ君、今日君の機体を奪われたよ。乗っていたうちのパイロットは殉職した」
「そうですか。コスモスはあなた方に簡単に扱えるものではありませんから、荷物が減って良かったですね」
「そのようだ。しかしナチュラルであるはずの君は華麗に舞ってみせる。不思議なものだな」
「君のことは知っているよ。ブルーコスモスの重鎮であるジン家の娘、生まれたときから軍人になると定められていた少女」
「…詳しいんですね。内通者が?」
「女性将校は珍しくないがね、君は我々と比べても優秀だ。なぜか。そう、君は地球軍が極秘裏に作ったコーディネーター…優秀な駒だ。美しい少女が前線で戦っている。すると志願兵が増える。象徴は戦場で散るまで戦わせ続け、あわよくば勝利を手に入れる」
「恐ろしい話だね。自分の娘にそんなことができるんだからな。こうなることも織り込み済みかな」
「なにが言いたいんですか」
「ザフトに来ないか。ここは同朋ばかりだ。地球軍にいりよりよっぽどいいと思うがね」
「あんなことをさせておいて、よくそんな事がいえますね」
「優しい男だったろう」
「貴方よりは」
グラリと世界がゆれた。奇妙なめまいに頭を抑える。体が熱い。
「さて、そろそろ効いてきたかな。君は処女だったと聞いた。性に目覚めるまで彼に相手をさせる」
「クルーゼ隊長!私に何を!」
「点滴に少し麻薬をいれただけさ。麻薬といっても医療用の麻酔のようなものだ。体が興奮し、覚醒状態にもできる。体からはすぐに排出されるから依存もしにくい。安心したまえ」
ドクンドクンと心臓が脈打つ。体を奪われたばかりか、そんな仕打ちまでするのか。この男は普通じゃない。イオリの薄れる理性はクルーゼの微笑を恐怖したが、そのうちなにも考えられなくなった。
「アスランを向かわせる。それまで待つんだな」
「失礼します…どうなさったんですか!すぐに医師を呼びます」
「クルーゼに姦淫薬をもられましたっ…体が…おかしい…」
「助けて下さい…お願い…」
「っ…」
「あっ、…あ…や…」
「イオリさん…」
「や、いっちゃ…」
「いってくださいっ、楽になって」
「あぁ…フ…ラガ…さん…」
フラガ。誰かの名前だ。前にいっていた彼女の思い人だろうか。夢の中でくらい、好きな男に抱かれる幸せを味わっているのなら、それでいいと思った。自分のような敵の男ではなく、彼女が愛し信頼する男と幸せになる未来だってきっとあったはずだ。アスランはなにも考えずイオリを抱き続けた。
「隊長!いくらなんでも酷すぎます。あんな薬を与えるなんて…」
「部下を殺されているんだ。あれくらい、彼女がしてきたことに比べれば優しいものだよ。君も、満足できただろう?」
クルーゼは仮面の下に感情のない笑みをつくってみせた。アスランはカーっと顔が熱くなるのを感じた。
「我々も、敵を殺しています!」
「それはねアスラン、お互い様なのだよ。うちの兵士が捕虜になれば、必ず全員が国際法にのっとって、平和的に扱われると思っているのかな?投降してもそのまま銃殺された仲間を知っているだろう。私たちは戦争をしているんだ。多少の闇は存在するものだ」
アスランもそういった戦場の実態はわかっているつもりだった。いつどこで自分がそのような目に合うかもわからない。現に地球で残酷な扱いをされ心を病んでしまった知り合いもいる。しかしこれが正義なのだろうか。敵地でひとり捕虜となっている少女を陵辱することが正義だとはとても思えなかった。
「しかし・・・」
「前にもいったな、アスラン。君が嫌なら、別の者に与えるだけだ。なぜ私が君にこの役目を与えたかわかるかね?」
「いいえ」
「君は優しすぎる。彼女と接することで、敵に対する扱いというものを学んでほしいんだ。情けは自分の身に返ってくるぞ。私たちは軍人だよ。非情になることも仕事の内だ」
仮面の下はどんな表情をしているのだろう。アスランには伺いしることもできなかった。自分のことを本当に考えてくれていて、このような非道なまねをさせているのだろうか。これ以上考えることはできなかった。
クルーゼはおかしくてたまらなかった。アスランが出て行くと自然と笑みがこぼれた。あの優しい少年が、可哀想な地球軍の娘を蹂躙する。アスランの苦悩も、彼女の苦痛も、彼にとって愉快でたまらない出来事だった。あのパトリック・ザラの息子が(まっすぐに優しく育ち、愛らしい婚約者までいる)おそらく初めてであろう性体験を敵の仕官を無理やり犯す形で経験する。戦争を生き残ってもそれは一生彼に付きまとい、人を愛することを邪魔するだろう。とても気分がよかった。
表向きは非情になりきれていない部下を心配する上司を演じる必要がある。たまに本音を言ってしまいたいときもあるが、それは我慢だ。アスランを、ひいてはパトリック・ザラを裏切るときはどんな愉快な感情を味わえるのだろう。クルーゼはそのときを楽しみに、今は小さな遊びで満足していた。
「キラ君!危ない!」
イオリの叫び声と、鈍い衝撃に、キラは自分が彼女の機体に体当たりされたことに気づいた。
一瞬の隙。引き金を引く一瞬の迷いだった。
「え…」
イオリの機体コスモスがイージスに捕獲されるところが見えた。一瞬前まで自分がいた座標だった。キラは慌てて引き金を引こうとするが、管制に止められる。「ジン大尉にあたる」とナタルの声が聞こえた気がした。
「逃げて!私はあなたを死なせるわけにはいきません」
「イオリさん!」
通信に砂嵐が混じる。イージスは仲間に守られながら母艦のほうへ見えなくなっていく。
「フラガさん、あとは、お願いします…みんな…守っ…て」
それが最後に聞こえたイオリ・ジン大尉の声だった。
アークエンジェルに戻るとフラガがヘルメットをぞんざいに脱ぎ捨てた。短い付き合いだが、飄々として印象のあるフラガには不釣合いな激情に駆られていると思った。
「クソっ!イオリ…」
「あ…ぼく…ぼくのせいで…」
「イオリも軍人だ。…覚悟は出来てた。守れなかった俺が悪い」
「でも、ぼくを庇って…」
フラガは悲痛な目でキラをみていた。この子は民間人だ。それをイオリがかばうのは当然の行動だったのだ。キラに責任はない。こみ上げてくる怒りをぐっとこぶしに隠しこみ、彼の両肩に手をついた。これでパイロットは自分ひとりになった。これからアークエンジェルを守るにはキラの力が不可欠だ。ここで彼を責めるわけにはいかないのだ。
「これからは俺とお前の2人でこの艦を守らなきゃならん。イオリを取り戻すまで、やれるか?」
「はいっ、絶対、助けてみせる…」
「お手柄だなアスラン。新型MSだ。コスモスと言うらしいぞ。ブルーコスモスの象徴のようだ。小さいが、しぶとい」
拘留室として使われることになった部屋にアスランは呼び出された。簡素なベッドには点滴につながれている若い女性が寝ていた。これがあの機体のパイロットなのだろう。まさか女性だったとは思わなかった。
クルーゼはコスモスの映像を流しながら、実に見事な腕だとつぶやく。
「は、隊長…ありがとうございます」
「こちらがパイロットのイオリ・ジン大尉だ」
「…女性…だったんですね」
「彼女はちょっとした有名人でね。捕らえられたのは幸運だよ」
「はぁ」
「ああ、彼女はこうみえて本当に優秀なパイロットであり、技術者であり…連合の古い軍人家系の血統なんだよ」
「そうですか…」
「まるで我々のような優秀さだと思わないか」
「まさか!」
「どうだろうね、大尉?」
気付くと目を覚ましていた女性と目があった。深い緑色をしていた。まるでかつての地球のような色だ。
「黙秘します。国際法に則った捕虜の待遇を希望します。クルーゼ隊長」
「国際法か…君は女性兵士の捕虜がどんな扱いをされるか知っているかな?」
「知らないわけではありません」
「ならば話は早い。アスラン、彼女を君に与えよう。陵辱して構わない」
「そんな、隊長、できません」
「アスラン、これは命令だ。君が従わないなら、ほかの者にやらせるだけなんだよ」
「君は優しい男だからな、荒っぽい連中に与えるよりいいと思ったんだが」
アスランはイザークやディアッカを思い浮かべた。彼らは喜ぶだろう。そういう経験もアリだと話していたのを聞いたことがある。
「捕虜の待遇規定と違います」
「ここは戦場なのだよ。彼女も、奪取した機体のなかから遺体で発見されたことになるだけのことだ。わかるね?」
「ころしなさい!私を!ラウ・ル・クルーゼ!」
「この生意気な口を黙らせるように。嘘をついてもすぐにわかることだ。励めよ」
「殺してください…辱めを受けるくらいなら…殺して」
「すみません、上官命令に逆らえません・・・」
こっちだって混乱しているのだ。アスランは今にも舌を噛み切りそうなイオリをよく観察しながら憤った。彼には嫌がる女を無理やり犯す趣味はなかったが、それ以上に上官に逆らうことは軍人として許されない。
「ザフトはこのようなことを許すのですか!」
「そっちだって…血のバレンタインを忘れたのか!」
「俺は母を失った。ただの農業プラントだぞ…これ以上犠牲を増やしたくないんだ!君は敵軍のパイロットだ。俺の仲間を沢山殺している。そりゃあお互い様さ、俺も沢山君の仲間を殺した。そっちからはじめた戦争なんだ…」
「あなた、名前は?」
「キミには関係ない」
「私はイオリ。あなたは?」
「…アスラン・ザラだ」
アスランは悲痛な面持ちで包帯だらけのイオリに覆い被さった。ラスティや殺された仲間たちの顔が浮かぶ。憎しみと困惑がごちゃまぜになる。隊長は何を考えているのか?敵軍の女を抱いて、この憎しみが消えるわけはない。捕虜の女を抱くなんて卑怯者の軍隊がすることだと思っていた。戦争なのだから、そういうことはある程度起こっているのだろうが、いざ自分がその立場にたってみるとどうすればいいか分からなくなった。
「あなたは人道的に扱ってくれるんでしょう?」
「…あぁ…すまない」
「戦争しているんだから、仕方ないわ。優しそうな人で良かった」
傷が痛むのか、イオリは苦しそうな表情でアスランを受け入れた。それ以上彼女は一言も話すことはなく、アスランは初めて女を抱いた。優しくしたい、でもできない。
なかなか挿入が上手くいかなかった。イオリは悪い顔色を更に青くし、震えていた。
一通り済ませ、服を着ているときにアスランの視界に赤い染みがうつった。血がシーツに付着していた。男女のことに疎いアスランでもそれくらいの意味はわかった。
「あ…まさか、初めてだったんですか…」
何もいわないイオリにとても罪悪感を感じた。剥ぎ取った衣類を彼女の手の届くところにそっと置く。なんと言えばいいのかわからなかった。自分だって好きで抱いたのではない。
「申し訳ありません…俺が言えたことじゃないのは重々承知ですが、その…謝らせてください」
「いいのよ、私は捕虜なんだから…」
緑色の瞳にはうっすら涙が滲んでいた。女性は守るものだとアスランは信じていた。婚約者であるラクスのことも、結婚するまではなにかあってはいけないと、キスをするのもはばかられた。
「キミは、その、好きな人はいるんですか?」
「…います。大切なの。守りたかった」
ポツリとイオリは呟いた。キラのことだろうか。彼女は身を挺して彼をかばって捕虜になった。
「アスランには大切な人はいるんですか?」
「…はい、婚約者がいます」
「みんな守るために戦っている・・・一緒なんです」
「…休んでいて下さい。隊長に報告してきます」
「イオリ君、今日君の機体を奪われたよ。乗っていたうちのパイロットは殉職した」
「そうですか。コスモスはあなた方に簡単に扱えるものではありませんから、荷物が減って良かったですね」
「そのようだ。しかしナチュラルであるはずの君は華麗に舞ってみせる。不思議なものだな」
「君のことは知っているよ。ブルーコスモスの重鎮であるジン家の娘、生まれたときから軍人になると定められていた少女」
「…詳しいんですね。内通者が?」
「女性将校は珍しくないがね、君は我々と比べても優秀だ。なぜか。そう、君は地球軍が極秘裏に作ったコーディネーター…優秀な駒だ。美しい少女が前線で戦っている。すると志願兵が増える。象徴は戦場で散るまで戦わせ続け、あわよくば勝利を手に入れる」
「恐ろしい話だね。自分の娘にそんなことができるんだからな。こうなることも織り込み済みかな」
「なにが言いたいんですか」
「ザフトに来ないか。ここは同朋ばかりだ。地球軍にいりよりよっぽどいいと思うがね」
「あんなことをさせておいて、よくそんな事がいえますね」
「優しい男だったろう」
「貴方よりは」
グラリと世界がゆれた。奇妙なめまいに頭を抑える。体が熱い。
「さて、そろそろ効いてきたかな。君は処女だったと聞いた。性に目覚めるまで彼に相手をさせる」
「クルーゼ隊長!私に何を!」
「点滴に少し麻薬をいれただけさ。麻薬といっても医療用の麻酔のようなものだ。体が興奮し、覚醒状態にもできる。体からはすぐに排出されるから依存もしにくい。安心したまえ」
ドクンドクンと心臓が脈打つ。体を奪われたばかりか、そんな仕打ちまでするのか。この男は普通じゃない。イオリの薄れる理性はクルーゼの微笑を恐怖したが、そのうちなにも考えられなくなった。
「アスランを向かわせる。それまで待つんだな」
「失礼します…どうなさったんですか!すぐに医師を呼びます」
「クルーゼに姦淫薬をもられましたっ…体が…おかしい…」
「助けて下さい…お願い…」
「っ…」
「あっ、…あ…や…」
「イオリさん…」
「や、いっちゃ…」
「いってくださいっ、楽になって」
「あぁ…フ…ラガ…さん…」
フラガ。誰かの名前だ。前にいっていた彼女の思い人だろうか。夢の中でくらい、好きな男に抱かれる幸せを味わっているのなら、それでいいと思った。自分のような敵の男ではなく、彼女が愛し信頼する男と幸せになる未来だってきっとあったはずだ。アスランはなにも考えずイオリを抱き続けた。
「隊長!いくらなんでも酷すぎます。あんな薬を与えるなんて…」
「部下を殺されているんだ。あれくらい、彼女がしてきたことに比べれば優しいものだよ。君も、満足できただろう?」
クルーゼは仮面の下に感情のない笑みをつくってみせた。アスランはカーっと顔が熱くなるのを感じた。
「我々も、敵を殺しています!」
「それはねアスラン、お互い様なのだよ。うちの兵士が捕虜になれば、必ず全員が国際法にのっとって、平和的に扱われると思っているのかな?投降してもそのまま銃殺された仲間を知っているだろう。私たちは戦争をしているんだ。多少の闇は存在するものだ」
アスランもそういった戦場の実態はわかっているつもりだった。いつどこで自分がそのような目に合うかもわからない。現に地球で残酷な扱いをされ心を病んでしまった知り合いもいる。しかしこれが正義なのだろうか。敵地でひとり捕虜となっている少女を陵辱することが正義だとはとても思えなかった。
「しかし・・・」
「前にもいったな、アスラン。君が嫌なら、別の者に与えるだけだ。なぜ私が君にこの役目を与えたかわかるかね?」
「いいえ」
「君は優しすぎる。彼女と接することで、敵に対する扱いというものを学んでほしいんだ。情けは自分の身に返ってくるぞ。私たちは軍人だよ。非情になることも仕事の内だ」
仮面の下はどんな表情をしているのだろう。アスランには伺いしることもできなかった。自分のことを本当に考えてくれていて、このような非道なまねをさせているのだろうか。これ以上考えることはできなかった。
クルーゼはおかしくてたまらなかった。アスランが出て行くと自然と笑みがこぼれた。あの優しい少年が、可哀想な地球軍の娘を蹂躙する。アスランの苦悩も、彼女の苦痛も、彼にとって愉快でたまらない出来事だった。あのパトリック・ザラの息子が(まっすぐに優しく育ち、愛らしい婚約者までいる)おそらく初めてであろう性体験を敵の仕官を無理やり犯す形で経験する。戦争を生き残ってもそれは一生彼に付きまとい、人を愛することを邪魔するだろう。とても気分がよかった。
表向きは非情になりきれていない部下を心配する上司を演じる必要がある。たまに本音を言ってしまいたいときもあるが、それは我慢だ。アスランを、ひいてはパトリック・ザラを裏切るときはどんな愉快な感情を味わえるのだろう。クルーゼはそのときを楽しみに、今は小さな遊びで満足していた。
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