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パナマ後
「イザーク、君にこの方のお世話を頼む。私の客人だ、丁重におもてなしして差し上げてくれ」
「どのような方…なのですか?」
イザークはベッドに横たわる少女を見つめた。黒髪の薄汚れた娘が眠っている。顔が傷だらけだ。額に大きなガーゼが貼られている。
「私の記憶が正しければ、彼女は地球連合軍イオリ・ジン…今は大佐だったかな。MSコスモスのパイロットにして、地球連合の姫君…といったところかな」
「なッ…敵ではありませんか!」
「敵は敵だが、身分というものがある。彼女は重要なカードだ。私は自分の運が恐ろしいよ」
クルーゼのいなくなった部屋で、イザークは傷跡にそっと触れた。もう痛みはない。歪な凹凸が存在した。
何故こんなナチュラルを。
いくら高級士官と言えども兵士は兵士だ。捕虜は捕虜として扱われるべきだとイザークは思っていた。
コスモスのパイロット。苦々しい記憶がよみがえる。ストライクほどの恨みはないが、こんな女に散々苦戦し、さらには命を救われたのか。パナマで浮力を失ったデュエルを運んでくれたのはコスモスだった。あのとき助けてもらえなければ、自分はここにはいない。
「くそッ…」
こんな女に。
イオリはまだ目覚めない。
12時間がたった。パナマ戦の混乱と事態の収集にザフトも地球軍も沈黙を守っている。パイロットであるイザークの仕事は今はなかった。敵軍の将校の目覚めをただ待っていた。
何度も殺してやろうかと思ったが、クルーゼの命令となにより命を救われた事実が彼をどこか冷静にさせた。
「ん…」
「目覚めたか」
「あ…ここは…」
女は一瞬体を強張らせた。イザークの軍服からここが敵陣だと悟ったのだろう。
「イオリ・ジン大佐だな」
「ええ…わたし、捕まったの?」
「捕虜ではないはずだ。お前はラウ・ル・クルーゼ隊長の客人という扱いになっている」
「ラウ・ル・クルーゼ…あなたは?」
「クルーゼ隊イザーク・ジュール…」
「デュエル…?」
「…そうだ」
「良かった…生きてた」
彼女の言葉がイザークのプライドを逆撫でた。ため息のように吐き出された安堵の声にイザークは自分がとてもちっぽけなもののように感じた。
「俺は敵だぞ!なぜ助けた!ナチュラルなんかに救われて…俺が…喜ぶとでも思ったのか!」
「もう、だれも死んでほしくなかった…それだけ」
コスモスの奇怪な戦闘の理由が分かったような気がした。火力やエンジンを壊すだけで決定打にかけるあの戦い方を思い出す。
ラスティ、ミゲル、ニコル…失った戦友たちの顔がよみがえる。
「ならば何故!俺の仲間を殺した!」
「そっちこそ!わたしの仲間を…」
ハッとする。イオリの目には零れんばかりの水滴が溜まっていた。憎しみに染まった目が伏せられると、すぐになにも写さなくなった。涙が感情を流しさったようだ。
この時初めてイザークは気付いた。自分に仲間がいるようにナチュラルにも仲間がいて、死んでほしくないと思っているということを。いままで気付かなかった。見ないようにしてきたのだ。
「す、まない…失言だった」
「ごめんなさい」
「もう少し眠るといい。…救ってくれたこと、感謝している」
「どのような方…なのですか?」
イザークはベッドに横たわる少女を見つめた。黒髪の薄汚れた娘が眠っている。顔が傷だらけだ。額に大きなガーゼが貼られている。
「私の記憶が正しければ、彼女は地球連合軍イオリ・ジン…今は大佐だったかな。MSコスモスのパイロットにして、地球連合の姫君…といったところかな」
「なッ…敵ではありませんか!」
「敵は敵だが、身分というものがある。彼女は重要なカードだ。私は自分の運が恐ろしいよ」
クルーゼのいなくなった部屋で、イザークは傷跡にそっと触れた。もう痛みはない。歪な凹凸が存在した。
何故こんなナチュラルを。
いくら高級士官と言えども兵士は兵士だ。捕虜は捕虜として扱われるべきだとイザークは思っていた。
コスモスのパイロット。苦々しい記憶がよみがえる。ストライクほどの恨みはないが、こんな女に散々苦戦し、さらには命を救われたのか。パナマで浮力を失ったデュエルを運んでくれたのはコスモスだった。あのとき助けてもらえなければ、自分はここにはいない。
「くそッ…」
こんな女に。
イオリはまだ目覚めない。
12時間がたった。パナマ戦の混乱と事態の収集にザフトも地球軍も沈黙を守っている。パイロットであるイザークの仕事は今はなかった。敵軍の将校の目覚めをただ待っていた。
何度も殺してやろうかと思ったが、クルーゼの命令となにより命を救われた事実が彼をどこか冷静にさせた。
「ん…」
「目覚めたか」
「あ…ここは…」
女は一瞬体を強張らせた。イザークの軍服からここが敵陣だと悟ったのだろう。
「イオリ・ジン大佐だな」
「ええ…わたし、捕まったの?」
「捕虜ではないはずだ。お前はラウ・ル・クルーゼ隊長の客人という扱いになっている」
「ラウ・ル・クルーゼ…あなたは?」
「クルーゼ隊イザーク・ジュール…」
「デュエル…?」
「…そうだ」
「良かった…生きてた」
彼女の言葉がイザークのプライドを逆撫でた。ため息のように吐き出された安堵の声にイザークは自分がとてもちっぽけなもののように感じた。
「俺は敵だぞ!なぜ助けた!ナチュラルなんかに救われて…俺が…喜ぶとでも思ったのか!」
「もう、だれも死んでほしくなかった…それだけ」
コスモスの奇怪な戦闘の理由が分かったような気がした。火力やエンジンを壊すだけで決定打にかけるあの戦い方を思い出す。
ラスティ、ミゲル、ニコル…失った戦友たちの顔がよみがえる。
「ならば何故!俺の仲間を殺した!」
「そっちこそ!わたしの仲間を…」
ハッとする。イオリの目には零れんばかりの水滴が溜まっていた。憎しみに染まった目が伏せられると、すぐになにも写さなくなった。涙が感情を流しさったようだ。
この時初めてイザークは気付いた。自分に仲間がいるようにナチュラルにも仲間がいて、死んでほしくないと思っているということを。いままで気付かなかった。見ないようにしてきたのだ。
「す、まない…失言だった」
「ごめんなさい」
「もう少し眠るといい。…救ってくれたこと、感謝している」
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