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tueto hum pa

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the brilliant 3

ベイビー、マイ ブリリアント スター 3



さてどうしたものか。酔いの覚めたマヤは自室に戻り、まだぼんやりする身体をテラスで休ませていた。夕日がかげりだす。ノックの音が聞こえた。


「戻っていたのですね」


ギュンターはよく冷えた水をグラスに注ぐとマヤに勧めた。


「コンラートの部屋にいたの。泥酔しちゃってた」
「気持ちは分かりますが、気を付けてください。彼も男ですし…」


その男に告白されました、とは言えなかった。
コンラートとの出来事を気取られないようにマヤは彼と目をあわさず話をかえた。実に自然な仕草だった。


「ねぇギュンター、あなたの名前だしてごめんね。巻き込んで悪いと思ってる」
「あの状況ではわたくし名を出すのが一番でしょう。多少動揺はしましたが、マヤを守れたのなら本望です」


グウェンダルとヴォルフラムはシュピッツベーグ家の外戚にあたるし、コンラートは貴族ではない。マヤの身近な男で条件にあう者はギュンター以外いなかった。


「でも困ったわ。ほんとにギュンターと結婚するわけにもいかないし、わたしの容姿は目立ちすぎて逃亡生活には不向きだし…」
「わたくしは…そろそろ結婚するのも良いと思っていたところなので、マヤさえよろしければ…」
「あはは、またそんなこと言っちゃって。貧乏クジはわざわざ自分から引くことないの!混血の子供の保護者やってみたり、せっかく保護者卒業したのに今度は結婚相手になるなんて…マゾ?」


マヤが血盟城へやってきたとき、ギュンターが後見人についた。双黒の名に恥じない強力な家名をもち、国の中枢にいる人物。名ばかりの後見ではなく、彼は名実ともに彼女の保護者をやってのけた。彼の溺愛ぶりは民にもしれるほどだった。


「マヤ、あなたは自己評価が低すぎます。わたくしはあなたのためならこの身を捧げても惜しくはないのですよ。もっと自分を愛して差し上げてください」
「せっかくあんなに愛して育ててくれたのに、ひねくれちゃってごめんね」
「結婚など…しなくてよいのです。あなたが命じてくだされば、フォンクライストの家名をかけてあなたを守ります。十貴族が、純血がなんだというのです…」


マヤが一番いやなことが、自分のためになにかを犠牲にされることだった。自分が傷つくことは受け入れられるが、誰かの苦しむ姿はみたくない。誰も傷つかないように政略結婚も受け入れたのに、これでは本末転倒だ。


「政略結婚なんて山ほどみてきたわ。自分の番になっただけ。ギュンター、相手を探すわよ。シュピッツベーグ以外でね」
「…分かりました。明日には候補者をみつくろって参ります。しかし、わたくしも立候補させていただきますので!」
「いやそんな姑根性ださなくたって」
「違います!わたくしはマヤを愛しているのです!あなたがわたくしを見てくれるまで告げるつもりはなかったのですが、この際です」



「愛していますマヤ」



男の目が変わる。優しい保護者からただの男の顔になった。



「わたくしを見て、ギュンターて意外といい男だったのね!と思ってくださったなら、わたくしをお選びください」



ギュンターはそう言い残すとマヤの手のひらに口付け退室した。



「…なんなの…モテ期?」

彼氏いない歴うん十年。鉄の処女と呼ばれるマヤに恋の季節が訪れていた。

せめて、せめてあと数日はやくきて欲しかった。
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the brilliant 2

ベイビー、マイ ブリリアント スター 2



コンラートは酔っ払いを抱えて彼女の私室に向かっていた。結局ワイン3本を空けたマヤは自分で歩けなくなってしまった。ギュンターに水をかけられたコンラートが部屋に戻るついでにマヤを運ぶことになったのだ。


「マヤ、鍵は?」
「うー…」
「マヤ」


うなりごえしか出さなくなった。コンラートは仕方なく自分の私室にマヤを連れて行くと、飾り気のないベッドに彼女を寝かせた。シャワーを浴びて戻ると、気持ち悪そうな顔をしてマヤがうずくまっていた。


「マヤ!大丈夫か?弱いのにあんなに飲むから…」
「…失敗した…こんなはずじゃ…」
「吐く?だせるならだしたほうがいいぞ」
「いや、大丈夫…水…」
「ゆっくりのんで」
「…まさか、まだ人間の血のことをいわれるとはおもわなかったわ」
「…本当に結婚するつもりなのか?」
「逃亡するにも宛がないし…この目と髪だし、人間の国にいくわけにもいかないわ」


人間の世界では黒は忌むべき色だ。コンラートと違い、マヤは魔族として生きるしか道がない。
しかし十貴族でもなく、ましてや人間の血が色濃く流れているコンラートではマヤの結婚相手としては不適格だ。


「俺と逃げる?」
「いいお誘いね」
「本気だよ」

コンラートは優しく微笑んでいるが、その目には力が宿っていた。おそらく本当に本気なのだろう。


「わたしのことが好きなの?」
「知らなかった?」
「うん」
「内緒にしてたから」
「そうなんだ。ワガママな妹ポジションだと思ってた」


マヤは苦しそうに笑った。アルコールが抜けるまでしばらくは辛い思いをするだろう。
コンラートは汗ばんだ額にはりついた髪を払ってやると、もう一度水をのませた。



マヤは幼いころに血盟城で保護されて当時王子だったコンラートたちと共にそだった。ギュンターは保護者として、コンラートたちは兄のように慈しんだ。ヴォルフラムよりわずかに年上のマヤは兄弟に守られながら育ったのだ。


「妹なんて思ったことないさ」


コンラートはマヤに口付ける。彼と交わした初めてのキスだった。

the brilliant

マヤ シェイリース
ヴォルフラムと同年代
双黒
人間のクォーター
夢魔


ギュンター…元保護者
グウェン…幼なじみの兄
コンラート…混血仲間
ヴォルフラム…幼なじみ
ヨザック…混血仲間




ベイビー、マイ ブリリアント スター



仰々しくやってきたフォンシュピッツベーグ卿シュトッフェルに呼び出されたマヤは怒りを露わに昼食の席についた。あまりの様子にだれも声をかけることができず、お通夜のような昼食だ。カチャカチャと食器の音だけが響く。非常に居心地がわるい。
メインをきれいに食べ終えたマヤがようやく沈黙を破った。


「聞いて!」
「あ、あぁ…」


向かいに座っていたグウェンダルが恐る恐る返事をかえす。


「要約すると、「マヤ様ももうよいお年です。そろそろご結婚を考えられてはいかがでしょうか。マヤ様は何分人間の血が入っておりますので不満に思う者も多い。後ろ盾のしっかりした貴族の子息を伴侶にして、ご隠居なさってはいかがでしょう。ちょうど我が家にも年の近い青年がおりますし…」と、いわれたわ」
「要約してないだろ…」


ヴォルフラムの小さなツッコミは無言でスルーされる。


「つまり!十貴族からの信頼を得たければ俺の親戚と結婚しろゴラァってこと!脅しよ!この、わたしを、脅してるのよふざけんなっての。信頼?あいつより絶対わたしのほうが眞王陛下の信頼篤いわ」

怒りを抑えられないのかマヤは煽るようにワインを飲み干した。手酌でボトルを次々空にしていく。男らしい。グウェンダルはその様子にひきつりながら、先日出席した円卓会議の様子を話し出した。人間との関係悪化が現実味を帯びてきた今、マヤにとばっちりがきたのだ。


「しかし、十貴族会議でそのような話が出ていたのも事実だ。シュトッフェルがわざわざ伝えにきたということは、近々正式に話があるだろう」
「グウェンダル知ってたの?そんな政略結婚なんてダメだよ。マヤさんだって好きでもない人と結婚なんてできないだろ?」
「陛下がそういってくださるのは嬉しいことこの上ないのですが、陛下もからだは人間の身…わたしを庇うのは得策ではありません」
「でもマヤさんはクォーターでほとんど魔族だし、双黒だし、税制大臣だし、俺なんかよりよっぽど眞魔国のためになってるじゃん!4分の1人間だからってそんな…」

ユーリには政略結婚というものが理解できないらしい。この世界では当たり前のものだが、自立した女性がふりまわされるのが理解しがたいようだ。アニシナやツェリしかしらないユーリならば致し方ない。


「そこで、あいつの親戚の嫁になるのはごめんなので、フォンクライスト卿とそういう関係なので結婚すると言ってきました」

ギュンターが含んでいた水をふきだす。コンラートが直接被害をうけていた。


「マヤ?!な、あなた、ちょ…」
「えー?!ギュンターマヤさんとそういう関係だったの?いやー初耳だよ。それなら二人の意志で幸せな結婚。お祝いしなきゃな」
「いえ陛下。嘘です。」
「しかしあの狸オヤジには効果絶大でした。フォンクライスト家なら後ろ盾として申し分ありませんし、ギュンターはわたしの元保護者。そういう関係であってもおかしくはありません。時間稼ぎにはなりそうです」


コンラートは濡れた髪を払いながら厳しい目でマヤを見つめた。本気でなにかを考えているときの表情だ。落ち着いてきたマヤの飄々とした態度にユーリは油断してしまったが、彼の表情をみるにやはり難しい問題のようだ。


「時間稼ぎにはなるだろうが…」
「マヤ、どうするつもりだ?」
「1、ギュンターと偽装結婚する。2、ほかの誰かと偽装結婚する。3、逃亡する、の3択ね」
「偽装結婚なんだ」


おなかいたいな話 ギュンター

小さなノックが聞こえたような聞こえなかったような気がしたあと、執務室の扉がゆっくりと開いた。

「ギュンター」
「マヤ、どうしましたか?お腹すいたんですか?」

マヤがギュンターを訪ねるのはよくあることだったが、今日のマヤは元気がないように見えた。


「んー…おなかいたい…」


「それは…!では部屋へ参りましょう。今日はもう寝ていてください」
「すぐ治る…」

立ち上がったギュンターに勢いよく抱きついたマヤはイヤイヤと首をふった。

「マヤ…」
「仕事してていいから、だっこして」
「それでいいんですか?仕事を切り上げてよろしいんですよ」
「うん」


しかたなくマヤを膝にのせると、子猫のように顔をすりよせた。幼いころ弱っているときによくしていた仕草にギュンターは昔のように抱きしめて頭を撫でた。最近はまったく頼ってくれなくなってしまったからこうして甘えてくれることが嬉しかった。
ギュンターの常識よりもずいぶん成長の早い子供だったが、彼女の「じいや」をしていたときは幸せだった。

「ギュンター…邪魔してごめんね」
「仕事よりマヤが大切なんです。甘えてくれて嬉しいですが、早く元気になってくださいね。あなたが辛いのはわたくしも辛いのです」

規則的な寝息が聞こえてくる。ギュンターはペンを持つと書きかけの書類にとりかかった。

おなかいたいな話 コンラート



月に一度訪れる苦難の日。二日目の悪夢とよんでいる。


陛下と楽しいティータイムだというのに、悪夢は突如やってきた。鈍い腹痛がマヤを襲う。ときおり内臓をぞうきん絞りされたような激しい痛みがやってくるが、なんとか我慢する。笑顔に脂汗がにじんでいるが、陛下に心配をかけたくないのだ。


「そういえばマヤ、グウェンダルがお茶がすんだら来てほしいといってたよ」
「じゃあお開きにしようか!またギュンターと勉強再開再開と…」


にっこり笑顔でユーリを見送って、重い腰をあげる。立つのも歩くのも億劫だが、グウェンダルに会わなければならない。
ヨロヨロ歩き出したところでふわりと体が浮いた。

「コンラート!ちょっとなにするの」

コンラートに横抱きにされたマヤは驚いて身を捻った。彼と目があう。いつもの笑みを浮かべるコンラートに少し安堵した。

「部屋に連れて行こうと思って。歩くのも辛いんだろ?」
「グウェンダルが呼んでるんでしょ?」
「嘘も方便」

陛下に心配かけたくないみたいだったから。と、コンラートは微笑んだ。この人はわたしの心が読めるんじゃないか?マヤは大人しく彼の首に腕をまわした。細く長いようにみえるが、軍人らしい力強い首筋をしている。

「大丈夫?」
「…大丈夫じゃない」
「ギーゼラに見てもらうか?」
「や、病気じゃないの…その…毎月恒例行事だから」
「あぁ、だったらもっと大事にしないと」

ベッドに優しく降ろされる。ガラス細工に触れるような手つき。彼がどんなに自分を大切にしてくれているのかを肌でかんじる。100の言葉より指先が雄弁とは。


「コンラート、手、握っていい?」
「どこにもいかないよ」


コンラートはマヤの額に口付けるとベッドの端に座った。髪をなでる彼の温かい手がなによりも心地よかった。

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