忍者ブログ

tueto hum pa

06«  2025/07  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31   »08
Admin | Write | Comment

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

こころのなかの鬼


こころの中の鬼

あるところに,とても美しい少女がいました。
少女は顔かたちだけでなく,心までとても美しく,なにより人の役に立てることに幸せを感じていました。

少女の住んでいる村には鬼がたくさんいました。
鬼たちは美しい少女のことをねたみ,いじわるをしたりします。
鬼はとても怖い顔をしていて,いつも嫉妬や憎悪でいっぱいだったので,
人の役にたちたいと思う少女のことがどうしても信じられません。
絶対に自分たちのように,こわい心を持っているはずと,少女に意地悪をくりかえします。

本当はわたしのことを嫌っているんでしょう?
なにかもらえると思って手伝っているんでしょう?
そんなにいい人に思われたいの?
あの子はまた人に媚をうってるよ。
きれいだと思って調子にのってるわ。

少女は重たい荷物を持っている鬼を助けたり,
「おはよう,今日もいい天気ですね」と話しかけたり,
おなかをすかせている人に自分のパンを分けて,一緒にたべているだけでした。

少女はあたりまえだと思ったことを,あたりまえにしているだけなのに,
鬼たちはこっそり,ときにははっきり,少女の悪口をいいます。

少女は思いました。
どうしてみんなひどいことをするのかしら。
きっとなにか辛いことがあったのね。
ひどいことをしてしまって,きっと今頃落ち込んでるわ。
ひどいことをされるのは悲しいけれど,わたしになにかを言うことでみんなが元気になれるなら,それでもいいのかもしれない。
辛いことがなくなったら,みんなきっと優しい人になるわ。

少女は毎日,鬼たちからの嫌がらせに耐えました。
でもどんなに時間が過ぎても,鬼たちが優しくなることはありませんでした。

鬼たちは,どうにかして少女から悪い言葉や,嫉妬や,憎悪をひきだそうと,一生懸命少女をいじめました。
でも少女はいつも美しい心で,優しい言葉をかけてくれます。
鬼は思いました。
これは,少女の表の顔なんだ,と。
裏の顔は自分たちと同じように,とても怖い顔をしているはずだと決めつけました。

少女は自分にもひとにも平等に,みんなに優しく生きてきたので,鬼が何をいっているのか理解できませんでした。

裏じゃどうおもってるんだか。

鬼たちは親切な少女にそういうようになりました。
少女はとても傷つきました。

そしてとうとう,少女は思ったのです。
鬼たちこそ,信じられないくらいひどいことをしているわ。
いつも私をいじめているわ。心が醜いのは鬼の方よ。
みんな,大嫌い。

少女は鏡にうつった自分の顔をみてハッとしました。
そこには鬼がうつっていたのです。
美しい顔が,憎しみに歪んで,とてもこわい鬼のような顔でした。
少女は泣いてしまいました。

わたしはなんて醜いんだろう。
なんてひどいことを思っているんだろう。
これでは自分をいじめていた鬼たちにそっくりじゃないか。

鬼になっている少女をみて,鬼たちはとても喜びました。

ほうら,やっぱりあの子も鬼だった。
あの子も自分たちと同じ鬼だった。
これでこの村には仲間しかいなくなったから,安心だ。

鬼たちは少女にはじめて優しい言葉をかけました。

どうして泣いているの?大丈夫?
これからみんなでご飯を食べるから,一緒にいこうよ。

少女はとてもうれしく思いました。
でも,もう昔のように,美しい心で笑えません。
この優しい鬼も,あとで自分の悪口をいうんだろうかと,心配しながら笑っています。

もう少女が心から笑える日がくることはありませんでした。
もう心から人の役にたちたいと思うこともありませんでした。

少女は鬼になってしまったのです。
あるとき,村に旅人がやってきました。
旅人は,昔の少女のようにとても美しい心をもった人でした。
そこで鬼たちは,旅人の醜い心を引き出そうと,またいじわるをします。
変におもった旅人はいいました。
どうして人の嫌がることをするんですか?
どうして人の美しい心を信じられないんですか?
どうしてみんな怖い顔をしているんですか?
世界は広いんですよ。美しい心をもったひともいれば,怖い心をもった人もいます。

少女はまたハッとしました。
旅人がいったことは,鬼になるまえの少女が思っていたことだったからです。
でも,それをどう言葉にしていいか分からず,ぼんやりと思っていたことでした。

少女は旅人にいいました。
私の心には鬼がいます。
それでも人を愛して生きることができるのでしょうか?

旅人はにこりと微笑みました。
もちろんです。
わたしの中にも鬼がいることでしょう。
でもわたしは人にやさしくすることが好きで,自分の美しい心が大好きです。
あなたの中の鬼も,ほら,小さくなっていませんか?

少女は鏡を見ました。
そこには以前の美しい少女が映っていました。
少女は旅人と村をでました。
ときおり,心の中の鬼が大きくなって,少女を苦しめます。
でも,少女はわかったのです。
誰の心の中にも鬼がいて,誰の心のなかにも優しい気持ちがあることを。
少女はむかしよりも幸せになりました。
自分のなかの鬼と,仲よくしていきたいと思いました。
むかしより,もっと,人にやさしくできるようになりました。

PR

Comment

Name
Title
Mail(非公開)
URL
Color
Emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Comment
Pass   コメント編集に必要です
 管理人のみ閲覧

カレンダー

06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

フリーエリア

最新TB

プロフィール

HN:
naco
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R

カテゴリー

アーカイブ

<< BACK  | HOME |   NEXT >>
Copyright ©  -- tueto hum pa --  All Rights Reserved
Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]