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サンクチュアリ 2

サンクチュアリ2


軽やかな拍手が聞こえた。振り返ると開けっ放しだった扉の横にシュナイゼルが少しかたい表情で立っていた。

「ではセイレーンはクロヴィスに任せるとしようか」
「殿下、拘束せよとのご命令ですが」


控えていた武官が控えめに告げる。クロヴィスとコーネリアは彼女を隠すように庇った。シュナイゼルは武官を右手で制すると、柔らかい声で部下たちにいった。

「彼女の処遇が決まるまで、ということだったし、クロヴィスが責任をもつと言っているんだ。陛下も納得してくださるよ」


皇位継承権までかけるのだからと、暗に仄めかす。


「クロヴィス、私とコーネリアが証人だ。二言はないね?」
「はい。セイレーンは私がもらいうけます」
「分かった。父上のことは私に任せて、君たちは宮でゆっくりしているんだよ」


事が落ち着くまで宮から出るな。そういう意味だろう。言われずとも首の皮一枚で守られている今の状況で軽々しい振る舞いはしない。
シュナイゼルの後を追ってコーネリアが退室すると、クロヴィスは長椅子に座り込んだ。緊張がとけて一気に疲れが押し寄せたのだろう。彼は本来駆け引きをするような人間ではない。
セラは額を拳に押し付け頭を抱えるクロヴィスの隣に腰を下ろした。彼の髪を撫でる。小さな声が聞こえた。

「君を…モノのように言ってすまなかった」
「こんなどさくさで求婚してすまなかった…セラは兄上の妃になるものだと諦めていたんだ…こんなことになるまで言えなかった」
「うん」

セラは優しく頬に口付ける。その温かさにクロヴィスはハッと顔をあげた。


「しってたよ」
「気付いていた?」
「気づくよ。ずっと一緒にいたんだから。…私も、ずっとクロヴィスをみてた」
「やっと言える。クロヴィス、ずっと好きだったわ」
「…私たちは両想いだったんだな」
「皇帝の妃になるより、クロヴィスの隣にいたかった。こんな形で叶うなんて、悲しいけど…うれしいと思ってしまう」

セラは縋るようにクロヴィスの胸に顔を押し付けた。震えている。クロヴィスはできるだけ優しく包み込んだ。

「父は…母は…無事でしょうか…あまりお加減がよくないと聞いていたのに…」


自分が人質なのはわかっていた。未来の皇后と言っても、とても危うい立場なのはわかっていたつもりだった。皇帝の気分ひとつで破ってしまえるほど脆い平和のためにブリタニアに身を売ったのか。
悔しさが溢れてくる。
ついには我が身を守るためにクロヴィスから大切なものを奪ってしまうかもしれない。
セラは自身の無力さに絶望した。

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