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トリコ アラスカ演説ーフリーダム登場
「こちらアラスカ地球軍本部イオリ・ジン大佐。地球軍、ザフト軍双方に入電いたします。直ちに戦闘を中止し、当基地より可能な限り離れて下さい。当基地地下に大量のサイクロプスを発見しました。アラスカ司令部は既に基地を捨て、脱出しています」
オープンチャンネルでの通信だった。ニュートロンジャマーの影響で画質が悪いが、地球軍将校の制服の女が映っている。若すぎる女にそぐわない階級証だ。すぐに画面が切り替わりサイクロプスと、もぬけの殻の司令室が映し出される。笑顔でリニアに乗り込む将校達の映像。断片的だが爆破、道連れ、犠牲と音声が聞き取れた。
あの短時間でこの証拠を集めたのだ。
システム開発者の名は伊達ではなかったな。フラガはイオリの言葉を実現させるため、更に速度を上げた。
「現在、アラスカ司令部最高位の将官として命令いたします。直ちに戦闘を中止、基地より10キロ…20キロ以上離れなさい。繰り返します。直ちに戦闘を中止、基地より20キロ退避。ザフト軍も、指示に従って下さい。」
イオリの焦りを含んだ声が届く。
もういい。近くにはクルーゼが迫っている。サイクロプスの起動タイミングは将校達の気まぐれだ。いつになるか誰にも分からない。もういい、もう逃げていいんだ。
フラガは領海で戦闘中のアークエンジェルを発見した。弾幕が薄い。みなイオリの声を聞いているのだ。
艦に緊急着陸をすると、マリューが驚いた顔をして叫んだ。何故ここに。そんなことは決まっている。
「通信、聞いてるだろ!イオリに従え!俺もサイクロプスを見てきた。だから戻って来たんだ!急げ!」
イオリの声がまだ響いている。
兵たちを納得させるには言葉が足りないと分かっているのだ。
「ここにいる皆さんは、ここで何も知らずに死を要求されたのです。ザフト軍の作戦目標が急に変わったのは何故ですか?地球軍基地にも関わらず、自軍に補給もさせず、主だった士官が転属になったのは何故ですか。私たちは敵ではありません。本当の敵は、軍の内側に巣くう、この戦争を終わらせたくない、憎しみを連鎖させる者達です。」
もういい。
これ以上傷つかなくていいんだ。
「私はコーディネーターです。父、地球連合軍参謀本部議長ソウイチロウ・ジンが私をコーディネーターとして世に生み出しました。コーディネーターである私に、同朋を討たせ、世間には事実を隠し、少年志願兵としてプロパガンダに利用しました。コーディネーターを敵だと決めたのは誰ですか。ブルーコスモス。我が一族はブルーコスモスと深い繋がりがあります。」
言ってしまったと思った。
イオリが、ひた隠しにさせられてきた真実。これを話したからには上層部は秘密を破ったイオリを許さないだろう。地球軍の暗部。なにが青き清浄なる世界か。一人の少女に背負わせるには重すぎる猛毒だ。
この発言によって、彼女を信望して入隊した兵たちの中にも、彼女を裏切りと感じる者がいるだろう。ザフトにも、ナチュラル側についたコーディネーターとして憎しみの対象にする者がいるだろう。たとえ生き延びたとしても、一生敵に終われることになる。
イオリはここで死ぬつもりなのだと分かった。
「やめろイオリ!もう十分だ!早く、脱出してくれ…!」
「私たちが戦うべきは、今この場にいる人たちではありません。今すぐ戦線を離脱して下さい。生き残った地球軍には除隊を許可します。もし、まだ私の志と共に戦ってくれる者がいたら、そのまま艦と共にオーブ軍に加わって下さい。全責任は私に帰属します。あなた方は騙されていたのです!逃げて!生きて下さい!」
ガタッと物音がした。急に通信が途切れる。サイクロプスが作動したのか?クルーゼに見つかったのか?フラガには何も分からない。ただ、彼女の言葉を実行させることだけしか出来ない。
「艦長!周りの艦に入電しろ!退避だ!早く!イオリの行動を無駄にするな!」
「は、はい…!地球軍に告ぐ、我に続け」
誰も判断が出来なかった。軍人として、捨て石として命令に従うのが正しいことなのだろう。しかし、無駄死にしていい命なんて存在しないはずだ。マリューは全速前進を指示した。そのとき、目前にザクの銃口が差し出された。
時が止まる。これが走馬灯と言うのか。
私はなにも守れなかった。この艦も、少年たちも、イオリの言葉も…
死を前に神に祈った。
輝く剣。空から下されたのは、銃弾ではなく光り輝く救いの刃だった。
「アークエンジェル!無事ですか?キラ・ヤマトです。」
「キラくん…?」
「なぜこんなことに!」
「命令なのよ、サイクロプスが仕掛けられていて、捨て石にされたの、ジン大佐の通信があって」
「分かりました。援護します。早く脱出してください」
見慣れない機体に乗って現れたキラは、次々に両軍を戦闘不能に追いやった。武器、銃口のみを的確に射抜く光。圧倒的な力だった。
「こちらフリーダムパイロットキラ・ヤマト、地球軍、ザフト軍両軍に告げます。この海域から脱出してください!」
キラの声はクリアに響いた。
ニュートロンジャマーの影響など一切受けない通信に、疑問を抱く者はこのとき存在しなかった。
オープンチャンネルでの通信だった。ニュートロンジャマーの影響で画質が悪いが、地球軍将校の制服の女が映っている。若すぎる女にそぐわない階級証だ。すぐに画面が切り替わりサイクロプスと、もぬけの殻の司令室が映し出される。笑顔でリニアに乗り込む将校達の映像。断片的だが爆破、道連れ、犠牲と音声が聞き取れた。
あの短時間でこの証拠を集めたのだ。
システム開発者の名は伊達ではなかったな。フラガはイオリの言葉を実現させるため、更に速度を上げた。
「現在、アラスカ司令部最高位の将官として命令いたします。直ちに戦闘を中止、基地より10キロ…20キロ以上離れなさい。繰り返します。直ちに戦闘を中止、基地より20キロ退避。ザフト軍も、指示に従って下さい。」
イオリの焦りを含んだ声が届く。
もういい。近くにはクルーゼが迫っている。サイクロプスの起動タイミングは将校達の気まぐれだ。いつになるか誰にも分からない。もういい、もう逃げていいんだ。
フラガは領海で戦闘中のアークエンジェルを発見した。弾幕が薄い。みなイオリの声を聞いているのだ。
艦に緊急着陸をすると、マリューが驚いた顔をして叫んだ。何故ここに。そんなことは決まっている。
「通信、聞いてるだろ!イオリに従え!俺もサイクロプスを見てきた。だから戻って来たんだ!急げ!」
イオリの声がまだ響いている。
兵たちを納得させるには言葉が足りないと分かっているのだ。
「ここにいる皆さんは、ここで何も知らずに死を要求されたのです。ザフト軍の作戦目標が急に変わったのは何故ですか?地球軍基地にも関わらず、自軍に補給もさせず、主だった士官が転属になったのは何故ですか。私たちは敵ではありません。本当の敵は、軍の内側に巣くう、この戦争を終わらせたくない、憎しみを連鎖させる者達です。」
もういい。
これ以上傷つかなくていいんだ。
「私はコーディネーターです。父、地球連合軍参謀本部議長ソウイチロウ・ジンが私をコーディネーターとして世に生み出しました。コーディネーターである私に、同朋を討たせ、世間には事実を隠し、少年志願兵としてプロパガンダに利用しました。コーディネーターを敵だと決めたのは誰ですか。ブルーコスモス。我が一族はブルーコスモスと深い繋がりがあります。」
言ってしまったと思った。
イオリが、ひた隠しにさせられてきた真実。これを話したからには上層部は秘密を破ったイオリを許さないだろう。地球軍の暗部。なにが青き清浄なる世界か。一人の少女に背負わせるには重すぎる猛毒だ。
この発言によって、彼女を信望して入隊した兵たちの中にも、彼女を裏切りと感じる者がいるだろう。ザフトにも、ナチュラル側についたコーディネーターとして憎しみの対象にする者がいるだろう。たとえ生き延びたとしても、一生敵に終われることになる。
イオリはここで死ぬつもりなのだと分かった。
「やめろイオリ!もう十分だ!早く、脱出してくれ…!」
「私たちが戦うべきは、今この場にいる人たちではありません。今すぐ戦線を離脱して下さい。生き残った地球軍には除隊を許可します。もし、まだ私の志と共に戦ってくれる者がいたら、そのまま艦と共にオーブ軍に加わって下さい。全責任は私に帰属します。あなた方は騙されていたのです!逃げて!生きて下さい!」
ガタッと物音がした。急に通信が途切れる。サイクロプスが作動したのか?クルーゼに見つかったのか?フラガには何も分からない。ただ、彼女の言葉を実行させることだけしか出来ない。
「艦長!周りの艦に入電しろ!退避だ!早く!イオリの行動を無駄にするな!」
「は、はい…!地球軍に告ぐ、我に続け」
誰も判断が出来なかった。軍人として、捨て石として命令に従うのが正しいことなのだろう。しかし、無駄死にしていい命なんて存在しないはずだ。マリューは全速前進を指示した。そのとき、目前にザクの銃口が差し出された。
時が止まる。これが走馬灯と言うのか。
私はなにも守れなかった。この艦も、少年たちも、イオリの言葉も…
死を前に神に祈った。
輝く剣。空から下されたのは、銃弾ではなく光り輝く救いの刃だった。
「アークエンジェル!無事ですか?キラ・ヤマトです。」
「キラくん…?」
「なぜこんなことに!」
「命令なのよ、サイクロプスが仕掛けられていて、捨て石にされたの、ジン大佐の通信があって」
「分かりました。援護します。早く脱出してください」
見慣れない機体に乗って現れたキラは、次々に両軍を戦闘不能に追いやった。武器、銃口のみを的確に射抜く光。圧倒的な力だった。
「こちらフリーダムパイロットキラ・ヤマト、地球軍、ザフト軍両軍に告げます。この海域から脱出してください!」
キラの声はクリアに響いた。
ニュートロンジャマーの影響など一切受けない通信に、疑問を抱く者はこのとき存在しなかった。
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