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景時と望美

景時望美


京に残った望美


 私が京に残って、もうすぐ一月になる。以前のように梶原の京邸にお世話になって暮らしているわたしは、ただぼんやり毎日を過ごしていた。邸の主である景時さんは、戦争の事後処理などまだやることが沢山残っているらしく、家にも帰らない日々が続いている。九郎さんの堀川の邸に滞在しているそうだ。

表向きは政務が忙しくて家に帰る暇もない、ということになっているが、そうじゃないことをわたしは知っている。景時さんはわたしに会うのがこわいんだ。彼はまだ、わたしが全てを捨てて景時さんを選んだことに罪悪感をもっている。その証拠に彼はまだわたしを抱いたことがない。

「朔、今日も景時さん帰ってこないの?」
「ええ、堀川から連絡があったわ。着替えをもっていくつもりよ」
「それ、わたしが、いっていいかな?」

「景時さんのお着替えをもってきました」
「これは、神子殿!どうぞお上がりください」
「望美ちゃん・・・!」
「望美、久しぶりだな!」
「忙しそうですね九郎さん。」
「すまんな、景時を奪って。帰ってもいいと言うんだが、なんせ問題が山積みだ」
「景時さん、これ、お着替えです。あと、甘いもの、わたしが作ったんです。食べてください」
「ありがとう望美ちゃん、その、悪いね」
「・・・少しだけでいいんです、二人で話せませんか?」
「え、あの、えっと・・・」
「行ってこい景時。夜桜でもみてくるといい」
「・・・望美ちゃん、いこっか」

わたしは景時さんの手を繋ぎ、ぎゅっと力をこめた。すき。すき。思いが伝わらないかなって、とても強くにぎりしめた。
「望美ちゃん、ごめんね、不安にさせちゃったね」
堀川の夜桜はとてもきれいで、月の光がぼんやり照らす花びらは、そのまま消え失せてしまいそうだった。
「わたしが、いるから、京邸に帰ってこないんですか?」
「そんなことないよ、ほら、仕事がすごく忙しくてね、今はほんとに」
「わたし、分かってますよ?景時さんが、わたしのこと大切に思ってくれてること。そして、元の世界に戻らなかったわたしに罪悪感もってること。」
「そんなこと・・・」
「わたしは景時さんのことが世界で一番・・・世界より大切だから、こっちに残ったんです。景時さんのせいじゃないよ、わたしの選択なんです」
「だから、わたしのこと、避けないで。自分の家なんだから、かえってきて。わたしが邪魔なら、わたしがどこかいきますから」

景時さんは一瞬驚いた顔をしたあと、申し訳なさそうにごめんと呟いた。
「ごめん。避けてたつもりはなかったんだけど、逃げてたね。いつもの悪い癖がでたみたいだ。本当にごめんね」
「一緒にいると、君が好きで好きでたまらなくなるんだ。でも、もし欲望に負けて君を、その、抱いて・・・しまったら、きみが元の世界に戻りたいと思ったときに、オレのせいで戻れなかったら・・・って思ってしまって」

神子なる力は清浄な娘がその身に降ろす。もしその清浄さが汚されて失われてしまったら、その神通力は消え去るのだろうか。

「バカ・・・そんな覚悟で残ったわけじゃありません!わたしは、一生、景時さんから離れてなんてあげないんだから」
「ごめん望美ちゃん、君は、強いね」
「強くないです。景時さんに嫌われてたらどうしようって悩んでばっかりで、自分が自分じゃなくなってしまいそう」
「望美ちゃん・・・」
「今日は、家に帰ろうかな」
「はいっ」
「・・・その、夜這いにいっても、いいかな」
「・・・景時さん」
「なにもしないから!祝言まで、なにもしないから!そばで眠りたいんだ」
「祝言・・・?」
「落ち着いたらいうつもりだったんだけど、ヒノエくんにお願いして、熊野で祝言をあげたいなーなんて、計画中だったんだよ。思い出の土地だし、ちょうど神事の時期と重なるからいろんな人にきてもらいたいなーって」
「ありがとう景時さん。嬉しいです」
「それで、将臣くんに聞いたんだけど、そっちの世界では指輪を奥さんに贈るんだって?これ、浜辺で望美ちゃんがきれいっていってた桜貝を細工したんだ。良かったら、もらってくれないかな」
「ごめんね、不安になんてさせたくなかったんだけど、要領わるくて」
「もう、ぶっとびました。景時さんは魔法使いさんなんですね」

「景時さん・・・」
「夜這いにきました、なーんて」
「抱きしめてもらうの、久しぶりです。景時さんの腕の中、とっても気持ちいいんです」
「望美ちゃん、そんなこと言われちゃうと我慢できなくなっちゃうよ」

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