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種 うまく行かなかった話 夢の桟橋
イオリ→←フラガ
でもダメだった話→イザーク
二人とも29歳
夢の桟橋
私はね、と彼女は話し始めた。終戦後、数年ぶりに再会した彼女は少し大人びていて、年齢的には立派な大人になっていたが、その心が不安定なのは一目で分かった。会議のあとの一晩の余暇。余暇といっても、パーティーに出席して、ホテルにもどり、朝食後はすぐ移動だ。一週間プラントで様々な会議に出席したあとは、地球に戻る。
元地球連合軍、現地球平和維持軍の代表の一人を務める彼女とは、友人の友人であり、代表のアテンド役だと思われているが実は違う。ラウ・ル・クルーゼが非公式にアラスカから彼女を連れ去った際、内密に世話係をしたことが、二人の出会いだった。
お互いの無事や動向はメディアを通じてなんとなく知っていたが、再会を果たすまで何年もかかった。
彼女が捕らわれていたとき、彼女には愛する男がいた。しかし今回、彼は側にいなかった。
「私はね、守ってくれる大人の男性が欲しかったの。父親みたいに…いえ、父親にしては若すぎたわね。お兄さんみたいに愛してくれて、守ってくれて、あの人がいるから、安心して戦える。そんな人だった」
彼女はまとめていた髪をほどくと、頭を振って根本をほぐした。血行が良くなったのか、頬に赤みが差した。
「あれから、彼と付き合ったの。ちゃんと、想いを伝えて、彼も特別な愛情をくれた。でも、ダメだったの。私が欲しかったのは彼の健全な愛情じゃなくて、血縁の小さな子どもにしか向けられない、聖なる愛情だった。彼は頑張ってくれた。でも、ダメだった。私は成長しないと人を幸せに出来ない、私も前に進めないって気付いて、別れた」
「彼は砂漠の、復興部隊を志願したわ。あそこはアークエンジェルが…私たちが滅茶苦茶にした地域でしょ。ずっと気になってみたい。私の支えになってくれてたから行けなかったけど、別れたから。そこで、ある人と再会して、幸せにしてるみたい。」
「私は、男の人に支えられるんじゃなくて、自分で自分を支えられるようになりたくて、しばらく人を好きにならないって決めたの。少しはマシになった。仕事は、アシスタントに頼るけど。」
あなたはどうだったの?彼女は最後の一口を飲み干して聞いた。同じものを注文したので、自分の分も頼んだ。
「俺は、最初は軍に残って再建活動に携わった。後進が育ったので、軍は辞めて評議会入りだ。」
「それはみんな知ってる。」
「そうだな。じゃあもう少し個人的なことを話す」
「正直、忙しすぎて恋愛や女性に本気になることはなかった。結婚…というか子どもを持つことを強く勧められたこともあったが、相手や子どもに負担をかけるのが分かっていたから断ってきた。」
「相変わらず優しいのね」
「俺のことをそういうのはお前くらいだ」
「笑顔がないからよ」
「そうか?笑っているつもりだが」
「うーん、もっと大げさにやらないと、伝わらない。ディアッカくらい分かり易いといいのに」
「アスランは俺と同じくらい無表情だろう」
「彼はもとが柔らかい顔立ちだし、抜けてるからイザークとは違うのよ」
「なんだ。10年ぶりに会って言うことか」
「あのときも、あなた優しかった。敵同士だったけど信頼して背中預けられた。戦ってたときは、めちゃくちゃ邪魔だったけど」
「俺もだ。でも、殺さないでいられて良かったと思っている。こうして話せた」
「老兵の再会ってかんじ。乾杯」
「まだ若い。乾杯」
「だめよ、私、年上好みなの。知ってるでしょ。」
「そうか?俺も、あのときの彼と同世代になったんだが」
「じゃあ、私、精神的に成長できたのね」
「まあ、気長に口説く。まだ若い。」
「え、本気?」
「本気じゃなけりゃ、こんな夜更けまで残業しない。この仕事も自分から引き受けた。やっと、お前に釣り合う身分になったはずだ。お前にパートナーがいないならエントリーさせてもらおうと思ってた。」
「あの…私、当然バージンじゃないけど」
「なにか問題が?」
「ああ…地球の上流階級ではまだたまにね」
「石器時代だな。チェック」
「どこいくの」
「そろそろクローズだ。部屋で話そう」
「ちょっと、私の気持ちは?」
「何年俺のこと考えてた?」
「なんで…」
「俺がそうだからな」
「あんたがアテンドだって聞いて嬉しかったわよ。でも私は昔のイオリじゃない。大人になって、わがままになった。」
「お前は昔から、わがままで強情で、諦めが悪い。」
「いいか、選べ。俺に愛されるだけか、お互い愛し合うか。」
「愛されるのは決定事項ってこと?」
「俺はお前を愛している。自分で選んで欲しい。欲しいものを掴み取れ」
「なんで、そんなに自信満々なのよ」
「付いてきただろ?イヤなら、自分の部屋に帰れたんだ。早く選べ。部屋に入る前に」
「…私、裏切るかも。あんたの愛情試して、勝手に絶望して、逃げだすかも」
「試されても困ることはないし、逃がさない。イオリの問題は理解している。お前が嫌いなお前を含めて愛している。ただし、ムリヤリ愛して、悪者にはなってやらん。お前が選んで、お前が責任をとる。裏切るのも逃げるのもお前の選択だ。」
「なんで、10年ぶりの男に、こんな受け入れられなきゃいけないのよ…!」
「俺が大人になるまで時間がかかった。すまない」
「私、あんたを選ぶわ…」
ピッと電子錠が開く。部屋になだれ込むと、ソファに彼女を押し倒した。彼女に触れたのは10年前、彼女をエターナルに引き渡した際に手を引いたときだけだ。
「ずっと好きだった。彼と別れたのも知っていた。その後、誰とも付き合わないのもな。俺のことを想っていたなんてうぬぼれはしないが、嬉しかった。でも心配だった。誰か、支えてくれる人間はいるのか、心配だった。」
「ずっとって、いつからよ…!」
「ずっとだ。出会ったときに一目惚れした。話してみて、好きになった。だから、お前を彼の元に返せるよう動いた。ヤキンドゥーエで再会したとき、体が震えて止まらなかった。お前が地球とプラントを行き来しているときも、会いたくて仕方がなかった。」
「会いに来れば良かったのに」
「代表と、一兵士。下っ端議員。お前を色々なものから守れるようにならなければ会いに行けないと思ったんだ。」
「バーで話したの、嘘ばっかり」
「照れくさかったんだよ」
「イオリ、朝だ。お姫様抱っこで部屋に運ばれたくなかったら起きて服を着ろ」
「…ご飯抜きで…」
「お前の部屋にルームサービスをとった。今から一緒に部屋に帰って、お前はシャワーをあびる。俺はお前の荷物と書類をまとめて、一緒に食事をとる。予定通りホテルを出る。いいな?」
「了解」
でもダメだった話→イザーク
二人とも29歳
夢の桟橋
私はね、と彼女は話し始めた。終戦後、数年ぶりに再会した彼女は少し大人びていて、年齢的には立派な大人になっていたが、その心が不安定なのは一目で分かった。会議のあとの一晩の余暇。余暇といっても、パーティーに出席して、ホテルにもどり、朝食後はすぐ移動だ。一週間プラントで様々な会議に出席したあとは、地球に戻る。
元地球連合軍、現地球平和維持軍の代表の一人を務める彼女とは、友人の友人であり、代表のアテンド役だと思われているが実は違う。ラウ・ル・クルーゼが非公式にアラスカから彼女を連れ去った際、内密に世話係をしたことが、二人の出会いだった。
お互いの無事や動向はメディアを通じてなんとなく知っていたが、再会を果たすまで何年もかかった。
彼女が捕らわれていたとき、彼女には愛する男がいた。しかし今回、彼は側にいなかった。
「私はね、守ってくれる大人の男性が欲しかったの。父親みたいに…いえ、父親にしては若すぎたわね。お兄さんみたいに愛してくれて、守ってくれて、あの人がいるから、安心して戦える。そんな人だった」
彼女はまとめていた髪をほどくと、頭を振って根本をほぐした。血行が良くなったのか、頬に赤みが差した。
「あれから、彼と付き合ったの。ちゃんと、想いを伝えて、彼も特別な愛情をくれた。でも、ダメだったの。私が欲しかったのは彼の健全な愛情じゃなくて、血縁の小さな子どもにしか向けられない、聖なる愛情だった。彼は頑張ってくれた。でも、ダメだった。私は成長しないと人を幸せに出来ない、私も前に進めないって気付いて、別れた」
「彼は砂漠の、復興部隊を志願したわ。あそこはアークエンジェルが…私たちが滅茶苦茶にした地域でしょ。ずっと気になってみたい。私の支えになってくれてたから行けなかったけど、別れたから。そこで、ある人と再会して、幸せにしてるみたい。」
「私は、男の人に支えられるんじゃなくて、自分で自分を支えられるようになりたくて、しばらく人を好きにならないって決めたの。少しはマシになった。仕事は、アシスタントに頼るけど。」
あなたはどうだったの?彼女は最後の一口を飲み干して聞いた。同じものを注文したので、自分の分も頼んだ。
「俺は、最初は軍に残って再建活動に携わった。後進が育ったので、軍は辞めて評議会入りだ。」
「それはみんな知ってる。」
「そうだな。じゃあもう少し個人的なことを話す」
「正直、忙しすぎて恋愛や女性に本気になることはなかった。結婚…というか子どもを持つことを強く勧められたこともあったが、相手や子どもに負担をかけるのが分かっていたから断ってきた。」
「相変わらず優しいのね」
「俺のことをそういうのはお前くらいだ」
「笑顔がないからよ」
「そうか?笑っているつもりだが」
「うーん、もっと大げさにやらないと、伝わらない。ディアッカくらい分かり易いといいのに」
「アスランは俺と同じくらい無表情だろう」
「彼はもとが柔らかい顔立ちだし、抜けてるからイザークとは違うのよ」
「なんだ。10年ぶりに会って言うことか」
「あのときも、あなた優しかった。敵同士だったけど信頼して背中預けられた。戦ってたときは、めちゃくちゃ邪魔だったけど」
「俺もだ。でも、殺さないでいられて良かったと思っている。こうして話せた」
「老兵の再会ってかんじ。乾杯」
「まだ若い。乾杯」
「だめよ、私、年上好みなの。知ってるでしょ。」
「そうか?俺も、あのときの彼と同世代になったんだが」
「じゃあ、私、精神的に成長できたのね」
「まあ、気長に口説く。まだ若い。」
「え、本気?」
「本気じゃなけりゃ、こんな夜更けまで残業しない。この仕事も自分から引き受けた。やっと、お前に釣り合う身分になったはずだ。お前にパートナーがいないならエントリーさせてもらおうと思ってた。」
「あの…私、当然バージンじゃないけど」
「なにか問題が?」
「ああ…地球の上流階級ではまだたまにね」
「石器時代だな。チェック」
「どこいくの」
「そろそろクローズだ。部屋で話そう」
「ちょっと、私の気持ちは?」
「何年俺のこと考えてた?」
「なんで…」
「俺がそうだからな」
「あんたがアテンドだって聞いて嬉しかったわよ。でも私は昔のイオリじゃない。大人になって、わがままになった。」
「お前は昔から、わがままで強情で、諦めが悪い。」
「いいか、選べ。俺に愛されるだけか、お互い愛し合うか。」
「愛されるのは決定事項ってこと?」
「俺はお前を愛している。自分で選んで欲しい。欲しいものを掴み取れ」
「なんで、そんなに自信満々なのよ」
「付いてきただろ?イヤなら、自分の部屋に帰れたんだ。早く選べ。部屋に入る前に」
「…私、裏切るかも。あんたの愛情試して、勝手に絶望して、逃げだすかも」
「試されても困ることはないし、逃がさない。イオリの問題は理解している。お前が嫌いなお前を含めて愛している。ただし、ムリヤリ愛して、悪者にはなってやらん。お前が選んで、お前が責任をとる。裏切るのも逃げるのもお前の選択だ。」
「なんで、10年ぶりの男に、こんな受け入れられなきゃいけないのよ…!」
「俺が大人になるまで時間がかかった。すまない」
「私、あんたを選ぶわ…」
ピッと電子錠が開く。部屋になだれ込むと、ソファに彼女を押し倒した。彼女に触れたのは10年前、彼女をエターナルに引き渡した際に手を引いたときだけだ。
「ずっと好きだった。彼と別れたのも知っていた。その後、誰とも付き合わないのもな。俺のことを想っていたなんてうぬぼれはしないが、嬉しかった。でも心配だった。誰か、支えてくれる人間はいるのか、心配だった。」
「ずっとって、いつからよ…!」
「ずっとだ。出会ったときに一目惚れした。話してみて、好きになった。だから、お前を彼の元に返せるよう動いた。ヤキンドゥーエで再会したとき、体が震えて止まらなかった。お前が地球とプラントを行き来しているときも、会いたくて仕方がなかった。」
「会いに来れば良かったのに」
「代表と、一兵士。下っ端議員。お前を色々なものから守れるようにならなければ会いに行けないと思ったんだ。」
「バーで話したの、嘘ばっかり」
「照れくさかったんだよ」
「イオリ、朝だ。お姫様抱っこで部屋に運ばれたくなかったら起きて服を着ろ」
「…ご飯抜きで…」
「お前の部屋にルームサービスをとった。今から一緒に部屋に帰って、お前はシャワーをあびる。俺はお前の荷物と書類をまとめて、一緒に食事をとる。予定通りホテルを出る。いいな?」
「了解」
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