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雨に閉ざされた秘密 銀魂夢

今どき立ち姿がきれいな女は珍しい。
すっと伸びた背筋は細くて頼りない。そのくせ凛としてみえるんだ。
こいつは一筋縄でいく女じゃないなと、生徒相手になに考えてんだ俺。
 
 
雨に閉ざされたひみつ 
 
 
「あれ、どうしたの由良ちゃん。休日出勤なんて俺と同じくらい真面目だなぁ。」 
 
 
通学鞄は雨に色が滲んでいた。
よくみると髪からこぼれる水滴に、セーラーの襟が色を滲ませている。外は雨か。3日前にみた天気予報では、たしか休日は一日中晴れるはずだった。窓をみて初めて音が耳に入った。俺の聴覚もだいぶん役立たずだ。そういえば雨のにおいがする。
 
 
「忘れ物とりにきたついでに少し勉強してこかなぁ、と思ったんだけど教室誰もいなくて。」
「寂しくなって俺に会いに来たの?」
「帰るところです。」
「まあまあ、そう言わないで少し寄ってきな。お菓子もあるよ。あ、そうだ由良ちゃんお前だけだぞ面談やってないの。」 
 
 
由良は空を少しみつめて溜め息をついた。
あからさまに盛大な溜め息。雨が嫌なのか俺が嫌なのか、はたまた面談が嫌なのか。
 
 
「…イチゴポッキーが食べたい。」 
 
 
大量にあるぞ!
 
 
*
 
 
タオルを渡すと髪を押さえるように水気をとっていった。僅かに傾けた首筋がセーラー服に色っぽいなとか、先生はそんなこと考えませんとも。セーラー服はAVで補完計画だ。 
 
 
「それでなに?由良ちゃん地元受けるんだ。」
 
 
とりそこなっていた調書に進路希望先を書き込んだ。俺の汚い文字をみて、由良はあからさまに眉をしかめる。なにか嫌われるようなことしただろうかと思うけれど、きっと彼女のような娘は俺のような駄目な大人が嫌いなんだろう。彼女はまだ子供で、潔癖に生きているふりをしている。
伸ばされた背中。
あれは一種の自己表示なんじゃないだろうか。わたしは真っ直ぐに実直にいきているわよ、って。
 
 
「あそこレベル高いよね。国立だし。」
「今年はうちのクラス多いな。たしか土方と桂もここだよ。あと高杉もか。優秀だねぇ。」
「は?高杉くん?そういえば最近学校ちゃんと来てるね。」
「そうそう、人は見掛けによらないんだぞ~。」 
 
 
今までの模試の結果をとりだして、よくよく眺める。彼女の希望する大学は難関校といわれる部類で、どうしてこんな難しい道を選ぶのか俺にはよく分からなかった。分かるような気もしたけど、やっぱり俺としては人生苦しむべきじゃないと思ってるんだよね。受験って苦しいのよ。ずっと昔のことを思い出す。そういや俺も受験したっけ。
 
 
「ま、由良ちゃんなら大丈夫でしょう。このままゆるめに頑張ってね。」
「は~い。」 
 
 
由良はイチゴポッキーをかじりながら視線だけ外をみる。長いまつげが弧を描いて上をむいているのがわかった。案外大きな瞳は、無邪気な印象。まだ子供だ。
人は見かけによらない。
自分は表裏も少なく、だめな大人として生きているけれど、それでも生徒に見せない顔がある。この子供と大人のはざまにいる娘は、いったいどんな顔をもっているのか。意地悪な好奇心だと思った。この子が必死に隠している、一人の人間、一人の女としての顔を覗いてみたいというのは、大人のいやらしい悪趣味だ。
 
 
「まだ、雨降ってる。」
「先生のお菓子食べ尽くさないなら、まだいてくれていいぞ。」 
 
 
食べ尽くしても、いてもいいよ。
 
 
人形みたいな顔してるから、芸術鑑賞のつもりでもうすこし眺めさせてくれないかねえ。ポッキーを口内へ導くように薄い唇が器用に動いた。内側にピンク色のチョコが溶けて残っている。
俺はオードリーよりマリリン派なわけで、薄いより厚い唇が好みなんだけれど、このときばかりはこのボリュームにかける唇になんだかムラムラした。
女子高生っていいよね。若さと紙一重に幼さが同棲している。こいつの場合は処女性までも。どうして処女だと思うかって、こいつはまだ男に幻想抱いてる潔癖症の女だからだ。 
 
 
「…由良ちゃんさぁ、」
「え、ごめん、食べ過ぎ?」
「いやね、あの大学選んだのって、土方と一緒だから?」 
 
 
一瞬、表情から幼さが消えてすぐに元通りになる。かおを作るのが上手な女だ。自分がまわりからどういう風にみられていて、どういう風に振舞うのを望まれているか理解している。きっとすべてが計算ずくなんだ。しゃべりかたや笑うタイミング、伏せる瞼とか。無意識にしろそうでないにしろ。
 
 
「違います。わたし昔から行くならあそこって決めてたし、先生が思ってるような関係じゃないですから。」
「知ってる?由良ちゃん嘘つくとき丁寧語になるの。」 
 
 
黒目がちな瞳が俺を捕らえる。引きずり込まれそうになる気迫に怯えた。美人は真顔でも美人だが、整ってる分恐ろしい。いままでそうやって大人を騙して来たんだろうけど、中途半端に大人になった銀八先生には通用しないんだ。 
 
 
「知らなかった。」
「・・・冗談だよ。俺そこまでお前のことしらねえもん。なんにしても、お前が自分で決めたんなら問題ない。」
 
 
由良はふわり、唇で笑う。
 
 
「嘘つき。先生はわたしのこと、よく知ってるでしょ。」
「え、おいおい、大人をからかうんじゃありませんよぉ。」
「雨あがった。また明日、先生。」 
 
 
生徒にあしらわれてるんじゃあ、俺の教師業もあがったりだ。事実、俺はあいつのことを良く知っていたから。 
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