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癒える記憶 FE封印
クラリーネ19歳とパーシバル28歳
癒える記憶
王宮に音楽が溢れている。パーシバルは久々に夜会を訪れた。今夜はミルディン王子の招待だ。終戦慰霊の式典を控えた身内だけの舞踏会だが、普段のように多忙を理由に欠席するわけにはいかない。
盛装したのはギネヴィア女王の即位式以来だろう。彼はエトルリア代表としてベルンに招かれた時のことを思い出した。戦後間もないあの頃に比べると、なんと日々の穏やかなことだろう。人々の表情にもはや戦いの陰りはない。
大方の挨拶を終え、慣れない社交辞令に疲れをおぼえたころ、人気のないテラスに見知った少女をみつけた。
パーシバルはあまり少女と親しいとは言えなかったが、クレインの妹姫で共に大戦をくぐり抜けた程度には親交がある。あの社交好きの姫がひとりでいるのには違和感があった。
ウエイターからシャンパンを2つ受け取り、星空を眺めるクラリーネに声を掛けた。子供にシャンパンは良くなかったと一瞬後悔した。
「君がこんなところにいるとは珍しいな。」
「すぐに戻りますわ。少し疲れましたの。今夜は星がきれいですわね」
記憶の中の少女は、貴族の娘らしく気位の高いかおをしていたが、目の前の少し大人びた少女は今にも泣きだしそうな不安げなかおをして微笑んだ。まずいところに声をかけてしまっただろうか。パーシバルは女性の機微が読める性質でも、差しさわりのない会話をする技術もなかった。
「元気がないな」
「大切な方がなくなった日ですから」
シャンパンをゆっくりと飲み干すだけで、クラリーネの肌は淡く紅潮する。少女のわりに酒の飲み方を知っているなと感心したが、よく考えれば彼女はすでに社交界デビューを果たし、酒も夜会も日常のものなのだ。忙しさに忘れそうになるが、終戦から既に4年が経っている。
彼女にとってはまだ4年なのだろうか。多くの死者を出してあの動乱で、パーシバルもまた多くの知己を失ったが、クラリーネは最も愛しい者を亡くしていた。
「ルトガーか…」
「ご存じでしたの」
「ああ、仲間のことはよく思い出す。軍人でも友人の死は慣れないものだ。君のような姫君には辛い出来事だろう」
パーシバルは剣士を思い出す。彼のそばには幼かった少女の姿がいつもあった。当時は特に気にも留めなかったが、あのときの彼女は幸せそうに笑っていた。
クラリーネはずいぶんと大人びた表情でパーシバルに笑いかける。そっと触れられた手は夜風に冷えていた。
「わたくしだけではないのですわ。大切な方を失ったのは、わたくしだけではないのです。でも、この日が来ると、胸が切り裂けそうになりますの。ふふ…ルトガーに叱られてしまいますわね」
あれは一瞬のことだった。あのときパーシバルは彼らのすぐ近くで戦っていた。不意にあらわれた竜騎士の槍が、クラリーネをかばったルトガーの急所をとらえた。回復しない傷にすがりついて何度も杖をかかげる少女がいまでも目に焼き付いている。気付くのがあと10秒早ければ、彼を救えたかもしれない。
しかしそれも過ぎ去った話だ。
あと数日で終戦だった。気丈にふるまう妹が可哀相だとクレインが呟いていた。
「彼は後悔しないといいましたの。でもわたくしは後悔ばかりですわ」
もう4年も経つのにとクラリーネは僅かにこわ張った笑みで視線を逸した。星明かりにまつげの水滴が輝いている。涙を隠そうとする少女にパーシバルは胸が痛んだ。なんとかしてやりたいと思う反面、自分にはなにもできないことが彼を締め付ける。
「ミルディン様にも気をつかわせてしまって、こんな夜会まで開いていただきましたわ。皆さまルトガーのことには触れませんけど、こうして彼の話をさせていただけてうれしいですわ。もしかしたら彼の思い出を話したかったのかもしれません。長い間、言葉にすることができませんでしたの」
「彼の名をだしていいものか迷った。だが君の気持ちが少しでも軽くなったなら良かった」
クラリーネは明るくパーシバルに笑いかけた。わずかに幼さを残す笑顔に、紫の瞳は驚くほど大人の色をみせる。4年前とは違う。
彼女は日々成長し、もうあのわがままな世間知らずの姫ではなくなっていた。人を愛することを知った少女は大人の予想より遥かに女なのだ。彼女を変えたのは彼であり、彼の死だ。誰が忘れても、クラリーネだけはあの剣士が生きていたことを忘れることはないだろう。
「ルトガーだけを想い続けるようと思っていましたの。でも、彼に言われたことを思い出しました。結婚して、子どもをうんで、幸せになれ、と。俺の分まで生きろ…と。あの無口なルトガーがですわよ」
音楽が終わる。急に静かになった離宮にわずかな喧騒がカーテンの奥から聞こえた。
クラリーネが息を飲むのが分かった。白く細い首筋は、噛み付けば真っ赤な痕が美しかろう。
泣くのだろうか。
パーシバルは少女の瞳が揺れたことを見逃さなかった。抱きよせ、せめて一人で泣かずにいられるようにしてやりたいと感じた。
「わたくし決めましたわ。悲しむのは今夜でおわり。ルトガーが安心して眠れるくらい、幸せになってみせますわ」
花のように、という表現がふさわしい笑顔で、クラリーネは微笑んだ。涙はもう零れない。
彼女の手をとりパーシバルは光のもとに戻っていった。
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祈る腕の痛み/ ラクス ガン種
ガンダムシードのラクス。
嘘で塗り固めたラクススライン
祈る腕の痛み/
左と、右の指とを組み合わせると、それは祈るにふさわしい形となった。
懇願するように強く握り、骨が軋む。
わたくしの、彼と比べるまでもなく小さく、頼りないこの手のひらを、こうして組み合わせ目を閉じることで、世界は秩序を取り戻すのだ。
荒れ果てた大地、人、こころ。
彼らはわたくしという生身の人間を神聖化し、祀ることで、その安寧を再び得ようとしている。彼らはしらないのだ。
わたくしがとても浅ましく、自己愛的で、残虐な精神ですべてを見ていることを。
真白なベールで顔を隠し、電波に乗せて慈愛と偽善にみちた言葉を届ける。
「わたくしは、みなさまのへいわをねがっています。どうか、おこころをおだやかにおすごしください。たすけあい、あいしあって、へいわをみちびくのです。」
心にもない言葉は、ラクスクラインの真実となって浸透する。
決して自らを神としたいわけではないが、神という、恐ろしく野蛮な名を背負うことを誰かに押し付けたくなかったのだ。
彼は平和の女神のもとで慎ましく暮らし始め、わたくしには英雄が残った。
人はみな、彼を稀代の英雄と叫び、わたくしの騎士と呼ぶ。
穏やか過ぎる紫の瞳には、わたくしのものによく似た残虐が宿っていた。
どうか彼が救われますように、どうか彼らが愛し合い信じあい幸せを築けますように、どうか、いのちが、愛することを知りますように。
神のいない祭壇に祈りをささげると、ついに細かな痙攣が起きた。
世界の幸せを祈り続けられるほど、わたくしは強くも弱くもないのだ
コンラート 後悔したこと
コンラート 後悔したこと
まさか自分がこんな過ちをおかしてしまうなんて、昨日まで思いもしなかった。普段ならば絶対にしないようなことを、一時のセンチメンタルに支配されて、私はコントロールを失ってしまった。一生の不覚だ。
見慣れないベッドはウェラー卿のもので、そこかしこに自分と彼の服が散らかっている。一糸まとわぬ姿でシーツにくるまっていた私は、睡魔から目覚めたと同時に自分がおかした罪を自覚した。決して性欲の強いタイプではなく、酒にもムードにも流されることは今のいままでなかったというのに。長年の友人と寝てしまったという事実は私を自己嫌悪でいっぱいにするには十分すぎるものだった。
見慣れないベッドはウェラー卿のもので、そこかしこに自分と彼の服が散らかっている。一糸まとわぬ姿でシーツにくるまっていた私は、睡魔から目覚めたと同時に自分がおかした罪を自覚した。決して性欲の強いタイプではなく、酒にもムードにも流されることは今のいままでなかったというのに。長年の友人と寝てしまったという事実は私を自己嫌悪でいっぱいにするには十分すぎるものだった。
間違いだったといえば、彼は何もなかったように振る舞ってくれるだろう。しかしお互いの中では何もなかったことにはできない。この日私は貴重な男友達を失ってしまった。
「ごめん、こんなことするつもりじゃなかった」
とても彼の目を見れず、視線を合わさずに言った。脱ぎ捨てたシャツにすばやく腕を通しながら、立ち上がった。コンラートはベッドから上体を起こし、かすかに微笑んだ(ような気がした)
「お互い大人だから、たまにはこんなこともあるよ」
目の端に映る裸体の彼はとてつもなく色っぽかった。
「慰めてくれたのよね、ありがとう。おかげで元気になったわ」
「元気には見えないけど。俺のことで悩ませてしまったかな」
「元気には見えないけど。俺のことで悩ませてしまったかな」
yesともnoとも答えられず、曖昧に笑って彼の部屋から逃げ出した。ただのセンチメンタルが、相手のいる悩みに変わってしまったのは予定外の不幸だった。ただの感傷なら、数日自分を抑えこんでふて寝すれば過ぎ去ったのに。いつもながら自分の未熟には反吐がでる。
友達なんて、そう簡単にできるものではない。それが異性ならなおさらだ。私はたった一時の気の迷いでその貴重な友人を失ってしまったのだ。
友達なんて、そう簡単にできるものではない。それが異性ならなおさらだ。私はたった一時の気の迷いでその貴重な友人を失ってしまったのだ。
「そんなに避けないでほしいな。悲しくなる」
「避けてないよ。私たちお友達でしょ」
「いや、避けてるよ。あからさまじゃないけど、違和感を感じるくらいにはね」
「ごめん、気づかなかった。気をつける」
「俺のこと、意識してくれたのかと思ったんだけど?」
「それは…意識、するわよ。恋人でもない人と…しかも大切な友達と…一生の不覚よ」
「一生の不覚か…俺は嬉しかったよ。ただ、こんなことするつもりなかったと言われると、さすがに傷付いた」
「ごめんなさい。短慮だったわ。動揺してコンラートの気持ちを考えてなかった」
「いや、俺も、つい強がってなんでもないふりをしてしまった。」
「元通りになれるかしら」
「もう無理だよ」
「…そうよね…」
「俺としては、恋人になってくれなら嬉しいんだけどな」
「え!なんでそうなるのよ」
「全く鈍感だな。俺はずっと好きだったんだよ。だからあの夜、君が俺を頼ってくれて嬉しかったんだ。元通りにはなれないけど、新しい関係になるのはどうかな」
「気づかなかった…私ってすごく鈍感ね…」
「どう?前向きに検討してくれる?」
「私、誰とでも寝る女かもよ」
「それでもいいよ。でも違うだろ?」
「めんどくさい女だよ?たまに精神不安定になるし」
「知ってるよ。そのときは俺を頼ってほしいな」
「なんで私のことなんか好きなの・・・」
「ずっと側で見てきたんだ。信用してほしいな」
「あんた、うさんくさい・・・」
「はは、よく言われる」
コンラートは私を優しく抱きよせると、強く抱きしめた。やわらかい香りがする。見た目よりたくましい胸に顔を押しつけると、心臓の跳ねる音がした。
「避けてないよ。私たちお友達でしょ」
「いや、避けてるよ。あからさまじゃないけど、違和感を感じるくらいにはね」
「ごめん、気づかなかった。気をつける」
「俺のこと、意識してくれたのかと思ったんだけど?」
「それは…意識、するわよ。恋人でもない人と…しかも大切な友達と…一生の不覚よ」
「一生の不覚か…俺は嬉しかったよ。ただ、こんなことするつもりなかったと言われると、さすがに傷付いた」
「ごめんなさい。短慮だったわ。動揺してコンラートの気持ちを考えてなかった」
「いや、俺も、つい強がってなんでもないふりをしてしまった。」
「元通りになれるかしら」
「もう無理だよ」
「…そうよね…」
「俺としては、恋人になってくれなら嬉しいんだけどな」
「え!なんでそうなるのよ」
「全く鈍感だな。俺はずっと好きだったんだよ。だからあの夜、君が俺を頼ってくれて嬉しかったんだ。元通りにはなれないけど、新しい関係になるのはどうかな」
「気づかなかった…私ってすごく鈍感ね…」
「どう?前向きに検討してくれる?」
「私、誰とでも寝る女かもよ」
「それでもいいよ。でも違うだろ?」
「めんどくさい女だよ?たまに精神不安定になるし」
「知ってるよ。そのときは俺を頼ってほしいな」
「なんで私のことなんか好きなの・・・」
「ずっと側で見てきたんだ。信用してほしいな」
「あんた、うさんくさい・・・」
「はは、よく言われる」
コンラートは私を優しく抱きよせると、強く抱きしめた。やわらかい香りがする。見た目よりたくましい胸に顔を押しつけると、心臓の跳ねる音がした。
無双パロ続き
下ヒから許昌に戻り、とりあえずは落ち着いた生活を取り戻した。司馬懿にこき使われながら、戦後の雑務や、これからの国営を考える日々。戦場で剣を振るうより、内政の方が好きだと思った。上司にあたる司馬懿は、上の人たちと次の戦の話をしているようだった。
「体の調子はもういいのかい?」
「郭嘉殿」
「その分じゃ、傷はもう治ったのかな。心配したんだよ」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「なんだか雰囲気が変わったね。曹丕様に嫉妬してしまうな。唯一無二の神子の愛は如何様なものなのかな」
「郭嘉殿に嫉妬してもらえるようないいものじゃありませんよ。大して美人でもないし、賢くもないし…郭嘉殿には素敵な恋人がいっぱいいらっしゃるじゃないですかぁ」
「浮き世の戯れだよ。たった一人の愛する人を見つけられない愚か者だな私は」
「遊びなんですか?」
「やだなぁ、遊びも本気もないよ」
「わたしは器用じゃないし、心も狭いから、恋人が自分以外の女性とも親密だったら、嫌です。一夫多妻でもなんでも、やっぱりいい気持ちではいられない。なんて言うのかな…側にいる人を大切にしてくれたら嬉しいです。郭嘉殿は足りないものを探しているみたいに感じます。もしかしたら、もう側にあるのかも…なんて…」
「足りないものか…初めて言われたな…」
「ごめんなさい、好き勝手言っちゃいました。お気を悪くしないでくださいね!じゃ、わたし、司馬懿に呼ばれてるんで!」
「神子か…不思議な人だ」
「ふーっ、逃げ出せた」
「なにから逃げ出せたんだ?」
「わ!子桓!やだなぁ、びっくりさせないで
よ」
「挙動不審者を見つけたからな。どうした、なにかあったのか?」
「なんもないんだけど、さっき郭嘉殿に捕まって、子桓がうらやましいとかなんとか言われたんだよ。あの人いっぱい恋人いるのに、変なの」
「バカめお前は口説かれていたんだ。まったく自覚が足りなすぎる。仕置きが必要だな」
「やだ、そんなんじゃないってば…怖い顔しないでよ」
「ちっ、神子でもなければ叩ききってやったところを」
「でもなんか、悩んでる感じだったなぁ…」
「お前は!まんまと奴の術中にはまりおって」
「やん、ごめんなさい!許してー怒んないでって」
「ん…っ、子桓こんなところでキスするなんて…誰かに見られちゃうよ」
「お前が誰のものか見せつけているのだ。女官にでも見られて、噂になるくらいで丁度いい」
「そんなことしなくてもわたしは子桓が一番好きだよ?」
「二番がいるのか?」
「ははは、アホやこいつ。じゃ、わたし司馬懿に呼ばれてるんで、またね」
「ふぅ、司馬懿ーきたよー」
「遅い!バカなだけでなく愚図とはあきれるな」
「はいはいすんませんね。途中邪魔者に捕まってたんですよ」
「お前態度がデカくなったな」
「態度デカい人たちに合わせてるんで」
「ふんっ、まあいい、そんなことより、次の戦が決まったのだ。」
「どこ?」
「官渡だ。袁家を討つ」
「えー、曹操さまの幼なじみなんでしょ?」
「いつまでも奴の下にいても、覇道はままならんのだ。血筋だけの名門には乱世と共に消えていただく。」
「次も神子として連れて行くが、くれぐれも前回のようにならないよう、本陣を離れるなよ。お前には後方支援と負傷者の管理をやってもらう」
「分かったらさっさと鍛錬を終わらせてこい!」
「はーい」
あんまり納得がいかないが、友達でも戦うっていうのは乱世の宿命なのだろう。真矢は歴史の授業を思い出していた。どんな時代のどんな国でも、戦争があった。内乱もあった。日本にいるときだって、外国では戦争があっていたし、日本だって政争があった。気付かず生活していただけなのだ。
真矢は司馬懿にいわれたとおり、練兵所に向かった。考えてもどうにもならないときは無心に汗を流すのが一番なのだ。
「神子殿ではないですか!訓練ですか?」
「えっと、楽進さんも?」
「はい。私は一番槍ですので、1日の大半は鍛錬しております」
「そっかあ…いつも大活躍ですもんね」
「そんな、恐れ多い!神子殿のご活躍には遠く及びません!ですが…私などのことを見ていて下さっていると思うと、感激です!」
「いつも凄いなって思ってます。やっぱり先陣って、怖いじゃないですか。中になにがあるか全く分からないし…私は臆病者なので、後込みしてしまいます」
「神子殿が戦局を考えてくださるから、私は先陣を切れるのです。しかし神子殿の剣の冴え、感動しました!ぜひ鍛錬にご一緒させてください」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
「体の調子はもういいのかい?」
「郭嘉殿」
「その分じゃ、傷はもう治ったのかな。心配したんだよ」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「なんだか雰囲気が変わったね。曹丕様に嫉妬してしまうな。唯一無二の神子の愛は如何様なものなのかな」
「郭嘉殿に嫉妬してもらえるようないいものじゃありませんよ。大して美人でもないし、賢くもないし…郭嘉殿には素敵な恋人がいっぱいいらっしゃるじゃないですかぁ」
「浮き世の戯れだよ。たった一人の愛する人を見つけられない愚か者だな私は」
「遊びなんですか?」
「やだなぁ、遊びも本気もないよ」
「わたしは器用じゃないし、心も狭いから、恋人が自分以外の女性とも親密だったら、嫌です。一夫多妻でもなんでも、やっぱりいい気持ちではいられない。なんて言うのかな…側にいる人を大切にしてくれたら嬉しいです。郭嘉殿は足りないものを探しているみたいに感じます。もしかしたら、もう側にあるのかも…なんて…」
「足りないものか…初めて言われたな…」
「ごめんなさい、好き勝手言っちゃいました。お気を悪くしないでくださいね!じゃ、わたし、司馬懿に呼ばれてるんで!」
「神子か…不思議な人だ」
「ふーっ、逃げ出せた」
「なにから逃げ出せたんだ?」
「わ!子桓!やだなぁ、びっくりさせないで
よ」
「挙動不審者を見つけたからな。どうした、なにかあったのか?」
「なんもないんだけど、さっき郭嘉殿に捕まって、子桓がうらやましいとかなんとか言われたんだよ。あの人いっぱい恋人いるのに、変なの」
「バカめお前は口説かれていたんだ。まったく自覚が足りなすぎる。仕置きが必要だな」
「やだ、そんなんじゃないってば…怖い顔しないでよ」
「ちっ、神子でもなければ叩ききってやったところを」
「でもなんか、悩んでる感じだったなぁ…」
「お前は!まんまと奴の術中にはまりおって」
「やん、ごめんなさい!許してー怒んないでって」
「ん…っ、子桓こんなところでキスするなんて…誰かに見られちゃうよ」
「お前が誰のものか見せつけているのだ。女官にでも見られて、噂になるくらいで丁度いい」
「そんなことしなくてもわたしは子桓が一番好きだよ?」
「二番がいるのか?」
「ははは、アホやこいつ。じゃ、わたし司馬懿に呼ばれてるんで、またね」
「ふぅ、司馬懿ーきたよー」
「遅い!バカなだけでなく愚図とはあきれるな」
「はいはいすんませんね。途中邪魔者に捕まってたんですよ」
「お前態度がデカくなったな」
「態度デカい人たちに合わせてるんで」
「ふんっ、まあいい、そんなことより、次の戦が決まったのだ。」
「どこ?」
「官渡だ。袁家を討つ」
「えー、曹操さまの幼なじみなんでしょ?」
「いつまでも奴の下にいても、覇道はままならんのだ。血筋だけの名門には乱世と共に消えていただく。」
「次も神子として連れて行くが、くれぐれも前回のようにならないよう、本陣を離れるなよ。お前には後方支援と負傷者の管理をやってもらう」
「分かったらさっさと鍛錬を終わらせてこい!」
「はーい」
あんまり納得がいかないが、友達でも戦うっていうのは乱世の宿命なのだろう。真矢は歴史の授業を思い出していた。どんな時代のどんな国でも、戦争があった。内乱もあった。日本にいるときだって、外国では戦争があっていたし、日本だって政争があった。気付かず生活していただけなのだ。
真矢は司馬懿にいわれたとおり、練兵所に向かった。考えてもどうにもならないときは無心に汗を流すのが一番なのだ。
「神子殿ではないですか!訓練ですか?」
「えっと、楽進さんも?」
「はい。私は一番槍ですので、1日の大半は鍛錬しております」
「そっかあ…いつも大活躍ですもんね」
「そんな、恐れ多い!神子殿のご活躍には遠く及びません!ですが…私などのことを見ていて下さっていると思うと、感激です!」
「いつも凄いなって思ってます。やっぱり先陣って、怖いじゃないですか。中になにがあるか全く分からないし…私は臆病者なので、後込みしてしまいます」
「神子殿が戦局を考えてくださるから、私は先陣を切れるのです。しかし神子殿の剣の冴え、感動しました!ぜひ鍛錬にご一緒させてください」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
このおぞましい世界 シュナイゼル
このおぞましい世界
何度体を重ねただろう。実のない行為はいつの間にかわたしを蝕んで、日々をさらに憂鬱なものにしてくれた。彼はなにを思いながらわたしを抱いているのだろうか。求められたところで、それが本心とも思えない。
「もうすぐ誕生日だね。なにか欲しいものはあるかな?驚かせるより、喜んでもらいたいんだ。教えてもらえないかな」
「子供が…子供が欲しいです」
「それは…私と君の子ということかな?」
「はい」
「君がそういう風に思ってくれていたなんて知らなかったよ。嬉しいな…でも誕生日には違うプレゼントもさせてほしいな」
「子供が一番ほしいんです。」
「子供が欲しいと、おっしゃったんですって?殿下が嬉しそうにはしゃいでいらっしゃいましたよ」
「あの方でも、はしゃいだりするんですね」
「それは、表面上は落ち着いていらっしゃいましたけど、内心とてもお喜びでしたわ。殿下は小さな子がお好きですもの。セラ様とご自分のお子となれば格別ですよ」
「カノン、わたしは違うんです」
「子供ができれば、もうあの方に抱かれずにすむと思って言ってしまったんです」
「身重になれば、あの方は解放してくださる。母となれば、その子を中心に家族として繋がれる…体でなく…」
「それは…セラ様…殿下をお嫌なの?」
「シュナイゼル様をきらっているのではないんです。ただ、あの行為が、とても」
「とてもおぞましいものに思えて」
「命はそうやって繁栄してきたんですよ」
「繁栄のためだけの行為ならいいのです。終わりがいつかくるでしょう。男性の欲ばかりを受け止めるのは、わたしには荷が重すぎます」
「まるで意味のない行為におもえて、苦痛でなりません」
「恋をしらぬまま大人になってしまわれたのね」
「…そうかも、しれません」
「殿下に恋をなさいなさい。偽りの恋でもよろしいの。あの方はすばらしい方ですわ。尊敬は憧れになって、きっと恋の代わりにあなたの心をすくってくれる」
「そしていつか、愛に変わるでしょう」
「変わらなかったら?」
「諦めることですわ」
何度体を重ねただろう。実のない行為はいつの間にかわたしを蝕んで、日々をさらに憂鬱なものにしてくれた。彼はなにを思いながらわたしを抱いているのだろうか。求められたところで、それが本心とも思えない。
「もうすぐ誕生日だね。なにか欲しいものはあるかな?驚かせるより、喜んでもらいたいんだ。教えてもらえないかな」
「子供が…子供が欲しいです」
「それは…私と君の子ということかな?」
「はい」
「君がそういう風に思ってくれていたなんて知らなかったよ。嬉しいな…でも誕生日には違うプレゼントもさせてほしいな」
「子供が一番ほしいんです。」
「子供が欲しいと、おっしゃったんですって?殿下が嬉しそうにはしゃいでいらっしゃいましたよ」
「あの方でも、はしゃいだりするんですね」
「それは、表面上は落ち着いていらっしゃいましたけど、内心とてもお喜びでしたわ。殿下は小さな子がお好きですもの。セラ様とご自分のお子となれば格別ですよ」
「カノン、わたしは違うんです」
「子供ができれば、もうあの方に抱かれずにすむと思って言ってしまったんです」
「身重になれば、あの方は解放してくださる。母となれば、その子を中心に家族として繋がれる…体でなく…」
「それは…セラ様…殿下をお嫌なの?」
「シュナイゼル様をきらっているのではないんです。ただ、あの行為が、とても」
「とてもおぞましいものに思えて」
「命はそうやって繁栄してきたんですよ」
「繁栄のためだけの行為ならいいのです。終わりがいつかくるでしょう。男性の欲ばかりを受け止めるのは、わたしには荷が重すぎます」
「まるで意味のない行為におもえて、苦痛でなりません」
「恋をしらぬまま大人になってしまわれたのね」
「…そうかも、しれません」
「殿下に恋をなさいなさい。偽りの恋でもよろしいの。あの方はすばらしい方ですわ。尊敬は憧れになって、きっと恋の代わりにあなたの心をすくってくれる」
「そしていつか、愛に変わるでしょう」
「変わらなかったら?」
「諦めることですわ」