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tueto hum pa

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虜2

虜2


捕虜になって数日が過ぎた。正確な時間の経過はわからない。クルーゼに薬を盛られるため意識が朦朧とする日々をおくっていた。理性を保っている間に命を絶ってしまおうかと考えたが、それはどうしてもできなかった。いつか機をみてここを脱出し、アークエンジェルへ戻る。無事にアークエンジェルを軍に送り届けるのだと歯を噛み締めて耐えた。でも本当は、もう一度フラガさんに会いたい、それだけだった。
任務を死なない言い訳にするなんて随分熱心な軍人だったんだなと他人のことのように感じたが、私の本当の望みはフラガさんにちゃんとさよならを言うことのようだった。あまり考えないようにしている。望みが叶うかはまったくわからないし、もし脱出のチャンスがあってもこの麻薬に犯された体では敵艦から逃げ出すことはかなわないだろう。
「傷は治りましたね・・・痛むところはありませんか?」
「・・・大丈夫です。アスラン、私の仲間はどうなっていますか?」
「申し訳ないが、教えられません。ただ、我々の任務はまだ遂行できていませんとだけ・・・」
「そう、ありがとう・・・」
「イオリは、私のことをうらんでいないのですか?さらってきたのは俺です。あんな・・・ことまでして、どうして俺なんかに丁寧に話すんですか」
自分より3つ若い少年にイオリはむしろ憐れみを抱いていた。心優しい人が、したくもないことを(それも不必要でさえある行為を)上官命令に逆らえずしている。捕虜蹂躙なんて好む男はいくらでもいるだろうに、わざわざ誠実な彼をこの役にあてがったクルーゼの真意が読めなかった。部下への褒美のつもりならもっと彼が喜ぶものをあたえるだろうに。アスランがこの役に向いていないのは明らかだった。
「あなたの苦しみがわかるから」
「え・・・」
「アスランを責めても意味がないもの。早く帰りたい。それだけです」
「すみません・・・それは俺の力では・・・」
「分かってるんです。
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ガン種 虜1

虜1




「キラ君!危ない!」

イオリの叫び声と、鈍い衝撃に、キラは自分が彼女の機体に体当たりされたことに気づいた。
一瞬の隙。引き金を引く一瞬の迷いだった。
「え…」
イオリの機体コスモスがイージスに捕獲されるところが見えた。一瞬前まで自分がいた座標だった。キラは慌てて引き金を引こうとするが、管制に止められる。「ジン大尉にあたる」とナタルの声が聞こえた気がした。
「逃げて!私はあなたを死なせるわけにはいきません」
「イオリさん!」
通信に砂嵐が混じる。イージスは仲間に守られながら母艦のほうへ見えなくなっていく。
「フラガさん、あとは、お願いします…みんな…守っ…て」
それが最後に聞こえたイオリ・ジン大尉の声だった。
アークエンジェルに戻るとフラガがヘルメットをぞんざいに脱ぎ捨てた。短い付き合いだが、飄々として印象のあるフラガには不釣合いな激情に駆られていると思った。
「クソっ!イオリ…」
「あ…ぼく…ぼくのせいで…」
「イオリも軍人だ。…覚悟は出来てた。守れなかった俺が悪い」
「でも、ぼくを庇って…」
フラガは悲痛な目でキラをみていた。この子は民間人だ。それをイオリがかばうのは当然の行動だったのだ。キラに責任はない。こみ上げてくる怒りをぐっとこぶしに隠しこみ、彼の両肩に手をついた。これでパイロットは自分ひとりになった。これからアークエンジェルを守るにはキラの力が不可欠だ。ここで彼を責めるわけにはいかないのだ。
「これからは俺とお前の2人でこの艦を守らなきゃならん。イオリを取り戻すまで、やれるか?」
「はいっ、絶対、助けてみせる…」



「お手柄だなアスラン。新型MSだ。コスモスと言うらしいぞ。ブルーコスモスの象徴のようだ。小さいが、しぶとい」
拘留室として使われることになった部屋にアスランは呼び出された。簡素なベッドには点滴につながれている若い女性が寝ていた。これがあの機体のパイロットなのだろう。まさか女性だったとは思わなかった。
クルーゼはコスモスの映像を流しながら、実に見事な腕だとつぶやく。
「は、隊長…ありがとうございます」
「こちらがパイロットのイオリ・ジン大尉だ」
「…女性…だったんですね」
「彼女はちょっとした有名人でね。捕らえられたのは幸運だよ」
「はぁ」
「ああ、彼女はこうみえて本当に優秀なパイロットであり、技術者であり…連合の古い軍人家系の血統なんだよ」
「そうですか…」
「まるで我々のような優秀さだと思わないか」
「まさか!」
「どうだろうね、大尉?」
気付くと目を覚ましていた女性と目があった。深い緑色をしていた。まるでかつての地球のような色だ。
「黙秘します。国際法に則った捕虜の待遇を希望します。クルーゼ隊長」
「国際法か…君は女性兵士の捕虜がどんな扱いをされるか知っているかな?」
「知らないわけではありません」
「ならば話は早い。アスラン、彼女を君に与えよう。陵辱して構わない」
「そんな、隊長、できません」
「アスラン、これは命令だ。君が従わないなら、ほかの者にやらせるだけなんだよ」
「君は優しい男だからな、荒っぽい連中に与えるよりいいと思ったんだが」
アスランはイザークやディアッカを思い浮かべた。彼らは喜ぶだろう。そういう経験もアリだと話していたのを聞いたことがある。
「捕虜の待遇規定と違います」
「ここは戦場なのだよ。彼女も、奪取した機体のなかから遺体で発見されたことになるだけのことだ。わかるね?」
「ころしなさい!私を!ラウ・ル・クルーゼ!」
「この生意気な口を黙らせるように。嘘をついてもすぐにわかることだ。励めよ」

「殺してください…辱めを受けるくらいなら…殺して」
「すみません、上官命令に逆らえません・・・」
こっちだって混乱しているのだ。アスランは今にも舌を噛み切りそうなイオリをよく観察しながら憤った。彼には嫌がる女を無理やり犯す趣味はなかったが、それ以上に上官に逆らうことは軍人として許されない。
「ザフトはこのようなことを許すのですか!」
「そっちだって…血のバレンタインを忘れたのか!」
「俺は母を失った。ただの農業プラントだぞ…これ以上犠牲を増やしたくないんだ!君は敵軍のパイロットだ。俺の仲間を沢山殺している。そりゃあお互い様さ、俺も沢山君の仲間を殺した。そっちからはじめた戦争なんだ…」
「あなた、名前は?」
「キミには関係ない」
「私はイオリ。あなたは?」
「…アスラン・ザラだ」

アスランは悲痛な面持ちで包帯だらけのイオリに覆い被さった。ラスティや殺された仲間たちの顔が浮かぶ。憎しみと困惑がごちゃまぜになる。隊長は何を考えているのか?敵軍の女を抱いて、この憎しみが消えるわけはない。捕虜の女を抱くなんて卑怯者の軍隊がすることだと思っていた。戦争なのだから、そういうことはある程度起こっているのだろうが、いざ自分がその立場にたってみるとどうすればいいか分からなくなった。
「あなたは人道的に扱ってくれるんでしょう?」
「…あぁ…すまない」
「戦争しているんだから、仕方ないわ。優しそうな人で良かった」

傷が痛むのか、イオリは苦しそうな表情でアスランを受け入れた。それ以上彼女は一言も話すことはなく、アスランは初めて女を抱いた。優しくしたい、でもできない。
なかなか挿入が上手くいかなかった。イオリは悪い顔色を更に青くし、震えていた。
一通り済ませ、服を着ているときにアスランの視界に赤い染みがうつった。血がシーツに付着していた。男女のことに疎いアスランでもそれくらいの意味はわかった。
「あ…まさか、初めてだったんですか…」
何もいわないイオリにとても罪悪感を感じた。剥ぎ取った衣類を彼女の手の届くところにそっと置く。なんと言えばいいのかわからなかった。自分だって好きで抱いたのではない。
「申し訳ありません…俺が言えたことじゃないのは重々承知ですが、その…謝らせてください」
「いいのよ、私は捕虜なんだから…」
緑色の瞳にはうっすら涙が滲んでいた。女性は守るものだとアスランは信じていた。婚約者であるラクスのことも、結婚するまではなにかあってはいけないと、キスをするのもはばかられた。
「キミは、その、好きな人はいるんですか?」
「…います。大切なの。守りたかった」
ポツリとイオリは呟いた。キラのことだろうか。彼女は身を挺して彼をかばって捕虜になった。
「アスランには大切な人はいるんですか?」
「…はい、婚約者がいます」
「みんな守るために戦っている・・・一緒なんです」
「…休んでいて下さい。隊長に報告してきます」

「イオリ君、今日君の機体を奪われたよ。乗っていたうちのパイロットは殉職した」
「そうですか。コスモスはあなた方に簡単に扱えるものではありませんから、荷物が減って良かったですね」
「そのようだ。しかしナチュラルであるはずの君は華麗に舞ってみせる。不思議なものだな」
「君のことは知っているよ。ブルーコスモスの重鎮であるジン家の娘、生まれたときから軍人になると定められていた少女」
「…詳しいんですね。内通者が?」
「女性将校は珍しくないがね、君は我々と比べても優秀だ。なぜか。そう、君は地球軍が極秘裏に作ったコーディネーター…優秀な駒だ。美しい少女が前線で戦っている。すると志願兵が増える。象徴は戦場で散るまで戦わせ続け、あわよくば勝利を手に入れる」
「恐ろしい話だね。自分の娘にそんなことができるんだからな。こうなることも織り込み済みかな」
「なにが言いたいんですか」
「ザフトに来ないか。ここは同朋ばかりだ。地球軍にいりよりよっぽどいいと思うがね」
「あんなことをさせておいて、よくそんな事がいえますね」
「優しい男だったろう」
「貴方よりは」
グラリと世界がゆれた。奇妙なめまいに頭を抑える。体が熱い。
「さて、そろそろ効いてきたかな。君は処女だったと聞いた。性に目覚めるまで彼に相手をさせる」
「クルーゼ隊長!私に何を!」
「点滴に少し麻薬をいれただけさ。麻薬といっても医療用の麻酔のようなものだ。体が興奮し、覚醒状態にもできる。体からはすぐに排出されるから依存もしにくい。安心したまえ」
ドクンドクンと心臓が脈打つ。体を奪われたばかりか、そんな仕打ちまでするのか。この男は普通じゃない。イオリの薄れる理性はクルーゼの微笑を恐怖したが、そのうちなにも考えられなくなった。
「アスランを向かわせる。それまで待つんだな」

「失礼します…どうなさったんですか!すぐに医師を呼びます」
「クルーゼに姦淫薬をもられましたっ…体が…おかしい…」
「助けて下さい…お願い…」
「っ…」
「あっ、…あ…や…」
「イオリさん…」
「や、いっちゃ…」
「いってくださいっ、楽になって」
「あぁ…フ…ラガ…さん…」
フラガ。誰かの名前だ。前にいっていた彼女の思い人だろうか。夢の中でくらい、好きな男に抱かれる幸せを味わっているのなら、それでいいと思った。自分のような敵の男ではなく、彼女が愛し信頼する男と幸せになる未来だってきっとあったはずだ。アスランはなにも考えずイオリを抱き続けた。

「隊長!いくらなんでも酷すぎます。あんな薬を与えるなんて…」
「部下を殺されているんだ。あれくらい、彼女がしてきたことに比べれば優しいものだよ。君も、満足できただろう?」
クルーゼは仮面の下に感情のない笑みをつくってみせた。アスランはカーっと顔が熱くなるのを感じた。
「我々も、敵を殺しています!」
「それはねアスラン、お互い様なのだよ。うちの兵士が捕虜になれば、必ず全員が国際法にのっとって、平和的に扱われると思っているのかな?投降してもそのまま銃殺された仲間を知っているだろう。私たちは戦争をしているんだ。多少の闇は存在するものだ」
アスランもそういった戦場の実態はわかっているつもりだった。いつどこで自分がそのような目に合うかもわからない。現に地球で残酷な扱いをされ心を病んでしまった知り合いもいる。しかしこれが正義なのだろうか。敵地でひとり捕虜となっている少女を陵辱することが正義だとはとても思えなかった。
「しかし・・・」
「前にもいったな、アスラン。君が嫌なら、別の者に与えるだけだ。なぜ私が君にこの役目を与えたかわかるかね?」
「いいえ」
「君は優しすぎる。彼女と接することで、敵に対する扱いというものを学んでほしいんだ。情けは自分の身に返ってくるぞ。私たちは軍人だよ。非情になることも仕事の内だ」

仮面の下はどんな表情をしているのだろう。アスランには伺いしることもできなかった。自分のことを本当に考えてくれていて、このような非道なまねをさせているのだろうか。これ以上考えることはできなかった。
クルーゼはおかしくてたまらなかった。アスランが出て行くと自然と笑みがこぼれた。あの優しい少年が、可哀想な地球軍の娘を蹂躙する。アスランの苦悩も、彼女の苦痛も、彼にとって愉快でたまらない出来事だった。あのパトリック・ザラの息子が(まっすぐに優しく育ち、愛らしい婚約者までいる)おそらく初めてであろう性体験を敵の仕官を無理やり犯す形で経験する。戦争を生き残ってもそれは一生彼に付きまとい、人を愛することを邪魔するだろう。とても気分がよかった。
表向きは非情になりきれていない部下を心配する上司を演じる必要がある。たまに本音を言ってしまいたいときもあるが、それは我慢だ。アスランを、ひいてはパトリック・ザラを裏切るときはどんな愉快な感情を味わえるのだろう。クルーゼはそのときを楽しみに、今は小さな遊びで満足していた。

イオリとフラガ

「お父さんたちに話したんです。好きな人はいるのかってきかられたから、MAのパイロットの人だって。」
「へぇ、それで?」
内心フラガはドキドキしていた。お互い遠い場所に赴任しているので、最近はネット回線でしか会っていないが、もう3年の付き合いになるのにまだ挨拶にもいっていない。
「今度会いたいって」
「まあ、そうなるよなぁ」
「エンディミオンだから、むりよって言ったの。私も、異動決まって宇宙にいくし」
「コスモポリスのラボに決定?」
「うん。パイロット兼技術者扱い。大尉だって。お父さんは難しい顔してたけど、危なくない場所だから少し安心したって」
「俺も安心したよ。できればイオリがコスモポリスにいる間に終戦するといいな」
「お父さんもそう言ってました。」
「帰ったらご挨拶にいくよ。遅くなって申し訳ない」
「あの、いいんですよ、無理しなくても」
「無理じゃないよ。あと何年かしたら、イオリを貰いますって早く話しとかないと、提督が驚いて倒れてしまうだろ」
「あの、とっても真面目な付き合いだからって言ってるから。それに、お母さんがすごく喜んでくれてるから、きっと大丈夫」
「お母さんが味方なら心強いな。年上すぎるって反対されなかったか?」
「お父さんと、お母さんも年が離れてるの。だから自分たちを思い出すって」
「そりゃあラッキーだ」
「うん。私はしばらくまだ本部勤務だから、まとまった休みがとれたら、良かったらきてください」
「手みやげはなにがいいかなぁ」
「お父さんも甘いものが好き」

次の日、エンディミオン宙域はひどい戦闘に陥り、ほとんどが壊滅したと連絡がはいった。
報告を聞いたハルバートンがイオリにそう告げたとき、彼女は泣き出しそうな顔で気丈に「生きていると信じている」といった。
事実フラガは奇跡的な戦果をおさめて生き残ったのだが、イオリの異動と、ザフトとの関係の悪化、いろいろな理由でフラガがイオリの家に挨拶へ行くことはできなかった。
フラガがハルバートンに会ったのはアークエンジェルの格納庫だった。
彼は娘を守るために盾となり、フラガに娘を託した。

「ご挨拶が、こんなに遅くなって申し訳ありませんでした」
「戦時下の軍人だ。君の責任ではないさ。君と話せて良かったよ」
「はは、てっきり殴られるかと」
「誠実な男に見える。あの子は、知っているだろうが難しい生まれだ。だが私と妻は心をこめて育てたと思っている。その娘が選んだ男だ。君たちの幸せを祈っている」
「ありがとうございます」
「戦争は必ず終わる。そしたら我が家に来てくれないか。妻にも会ってほしい。一緒にアルバムでもみよう」
「いいんですか?」
「くれぐれも、イオリを泣かせるなよ」
「それはもう、努力します」
「お父さんに似てる人だと、言っていたんだ。嬉しかった。父親冥利につけるな。」
「いつもご家族の話をしてくれます。人を愛せるように育ててくれたと。実家のほうは…あまり話しませんが…私も、ご家族のようにイオリを幸せにしたいと思っています」
「なんとしても君たちを地上におろすぞ。戦況は分かっている。私が死んだらあの子を支えてやってほしい」
「そんな」
「私も軍人だ。覚悟はしている。が、イオリのことが心配でな。君にしか頼めん」
「…了解しました。必ず」
「さて、少しイオリと話してくるよ。呼び止めて悪かったね」

「お父さん!…って今呼んでいいですか?」
「はは、誰もおらん。昇任おめでとうイオリ」
「また会えて嬉しいです。お母さんにもジョンにも早くあいたい」
「明日には地上だ。会えるよ」
「そうだ、さっきフラガ少佐と話してきた。いい青年だな。」
「ええ!私も、一緒に話したかったのに!」
「すまんすまん。偶然見つけてな。私も、君がいると素直に話せないんだよ。娘をとられた気分になる」
「ふふ、お父さんとはこれからも一緒です」
「いいかイオリ、絶対生き残るんだ。私も、最善をつくす。君も彼も、生きて幸せになってほしい」
「はい」
「お父さん、今日は私の部屋に泊まりませんか?」
「そうだな。懐かしいな。」
「写真とかいっぱいあるんです。見せたいんです」

イオリとフラガ

9歳差
イオリ13歳
フラガ22歳
士官学校の先輩後輩

「イオリ・ジンです。よろしくお願いします」
「ムウ・ラ・フラガだ。よろしくなお嬢ちゃん」

イオリと初めて会ったとき、彼女はまだハイスクールにも行かない年ごろの少女だった。何個も博士号を持っている天才だとしって驚き、パイロットの素質を見せ付けられてまた驚いた。
ジン総督の娘、ジン家の人間ということで敬遠する者もいたが、フラガはいい意味でも悪い意味でも出自にこだわる性質ではなかったので自然に接していた。気負わないフラガに心をひらいたのか、イオリはよくフラガに懐いた。ロリコンなどからかう仲間もいたが、兄弟がほしかったフラガはイオリが懐いてくれるのが嬉しかった。

フラガの卒業まで半年ほどになって、イオリは訓練の終わりに秘密を教えてくれた。
ジン家から虐待を受けていたこと
ハルバートン提督が引き取って育ててくれたこと
そこで人間の暖かさをしったこと
実父の要請で大学をやめて士官学校に入学したこと
コーディネーターであること
大体、推測はついていたことだったが、淡々と語るイオリはどこか心細そうだった。ハルバートン提督はイオリを軍人にはしたくなかったそうだが、プラントとの関係が悪化する今、地球のコーディネーターである自分にできることがあるはずだと養父を説得したそうだ。

「お父さんはお父様が嫌いなんです。わたしはお父さんが好き。ジンの家の者は、あまり好きじゃありません。でも、割り切れるほど賢くないんです。」
「イオリは人間が好きなんだな。俺も人間が好きなんだ。損したなって思うことも多いけどね。」
「ああ、はい。人間が好きです。ナチュラルとか、コーディネーターとか、そういうの全部含めて人間が好き。お父さんもお母さんもジョンも大好きなんです。実家のひとたちも、多分すき。でも怖いことを言うから、近寄らないようにしようってお父さんと決めたんです。いつか分かり合える日がくることもあるかもしれないし、ないかもしれない。でも私には家族がいるし、満足なんです。」
「今日はいっぱいしゃべるね。なにかあったのか?」
「うふふ。フラガさんのことも好き。なんだか違う好き。お友達に聞いてみたら、それは恋かもしれないっていうんです。付き合ってほしいとか、それはいいんです。ロリコンって言われてからかわれるのわかってるし、ばれてこまるのはさせたくない。でも、好きになったら好きっていってもいいんだよってルーシーがいうの。困らせましたか?」
「嬉しいよ。周りのことはいいんだ、気にしなくて。たしかに君と俺がいますぐどうこう、ってわけにはいかないけど、好きになってもらえて嬉しい」
「私は、フラガさんが好きだから、この気持ちは私とフラガさんと、ルーシー・・・相談した子です、3人の秘密にします。お父さんにも内緒。はじめての内緒です」
「イオリは大人だな。俺が君の年ごろだったときは黙ってられなかったよ」
「いつか、大きな声で言います。だからいまはいいの」
「ハルバートン提督に殺されそうだな」
「お父さん、優しいから大丈夫です。フラガさん、お父さんに似てるんです。わたしのために一緒に楽しんでくれたりするところ」
「いいお父さんなんだな」
「実をいうと、男の人のことはちょっと苦手。実父のことを思い出すんです。カウンセラーはフラッシュバックだから仕方ないって、好きになる人もきっと現れるっていっていました。そして現れた。」
「ところでフラガさん、手はつないでいいですよね?今までも手を引いてくれました。じゃあキスはいけないでしょうか?でもお父さんともお母さんともキスをするし、友達ともします。OK?」
「そうだな、種類によるかもしれないが・・・OK、かな」
「じゃあセックスはダメなんでしょうか?私のお友達、もう経験している子もいますが、それは同年代同士のことなので、司法の範囲外ですよね。フラガさんは成人なので、わたしとそういうことをすると罪にとわれてしまいます。どうすればいいんでしょうか」
「おい、イオリ、お前そんなこと考えてたのか」
「大切な問題です。大学の友達が言っていましたし、心理学でも重要な意味を持っています。同じ年の友達は、興味本位の子と愛を理由にする子両方がいます。士官学校の男の人たちがよくその話題で盛り上がってるのも知ってます。だから、大切なことだと思います。」
「そうだな、ああ、大切なことだな。だから、大切にしていこう。イオリはまだ13歳だから、セックスはダメだ。俺も我慢することにする。君が大人になるのを待ちたい」
「キスは?」
「・・・まだここまで」
「・・・」
「おい、イオリ?どーしちゃったの」
「心臓がいたい・・・」
「ロマンがないなぁ。そういう時は、ドキドキするっていうんだ。」
「・・・ドキドキする」
「俺もドキドキするよ」

9も年下の子にときめいてどうするんだと思う反面、あと5年もたてば問題ないかと楽しみにする自分もいる。いつかハルバートン提督に殴られる日がくるかもしれないなと思いながら、イオリとパイロット寮に戻り、夕食をとった。カレーだった。軍のカレーは本当に旨いが、表情が乏しいイオリが嬉しそうな笑顔をしていたのでフラガは自然と幸せな気分になった。
家族を失った彼は、ちょうどいいと思い軍人になったが、家族を得たイオリが地球を守る手段を探すために軍人になったのは、彼女の深い愛なんだと思った。この子のために、絶対に死ねない。フラガはどんなことをしても生き残ろうと胸に誓った。

イオリ育成日記

イオリは今日から学校に通うことになった。
幼稚園からは大学を進められたが、こんなに大人びている子を大人の中にいれることに私が反対したため折衷案をとることになった。週に3日は大学に通い、残りは近所の幼稚園に通う。大学は歴史を専攻することにした。イオリは「戦争の原因は歴史観の欠如だとおもうんです」といきなり言い出して、私と妻をびっくりさせたが、私と同じ考えをしているイオリを嬉しく思った。
近所の大学はレベルの高いことで有名な学校だったが、試験に難なくパスしたイオリにはまた驚かされた。いつ読み書きや、知識を得たのか聞いてみると、「なんでも一度見ればわかるし、その先が見える」と言っていた。天才とはこういうものなのかもしれない。

「今日は幼稚園にいってきました。同じ年の子がいっぱいいて、一緒に遊びました。やっちゃいけないって思ってることをお友達がするんです。そして、先生に怒られるんです。でも、先生は許してくれるの。不思議です」
「イオリたちはまだ子供なんだ。いっぱいいたずらや、困らせることをしていいんだよ。いや、しなきゃいけないんだ。私もお母さんもいたずらが大好きで、小さいころは先生によく怒られた」
「お父さんもお母さんもですか?」
「!」
「あ、お父さん・・・って、お母さんがいつも呼んでるから・・・」
「嬉しいなぁ。イオリがお父さんってよんでくれたよ。マチルダ!イオリが、お父さんって呼んでくれた!お祝いをしないと!」
「あらあらあら、よかったわねお父さん、そうだ、ケーキの材料があるから、一緒につくりましょうか」
「ああ、イオリ、イオリも一緒につくらないか?」
「はい!」

初めて3人で作ったケーキは甘くてとてもおいしかった。私と妻はシャンパンをあけ、イオリはぶどうジュースを飲んだ。彼女が大きくなって一緒にシャンパンを飲める日がくるのがとても楽しみだ。

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