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無双パロ蜀編4
呂布の首が晒されたのはそれから数日も経たないうちだった。味方に暗殺されるというのは、武神呂布の死としてはなんともあっけないものだと思った。真矢は曹丕の隣でなんとも言えない表情をしていた。首を見に行くことはなかった。
「今宵、袁紹が宴を開くそうだ。劉備殿も参加する。真矢も来い」
「いく!私、劉備様の軍師の、諸葛亮さんに会わなきゃいけないの。龍眼を持つ人なんだって…もしかしたら、張角がいってた人かも」
「そうか」
「姜維殿が紹介してくれることになってるんだ」
「そうか」
「姜維さん!」
「真矢殿、お久しぶりです」
「妻が世話になったそうだな。礼をいう」
「ちょっと子桓!なんで、そんなに偉そうなのよ!すっごくお世話になったんだから!」
「ははは、とんでもありませんよ。良かった、曹丕殿の隣にいる真矢殿は大変お元気そうだ。それが本来のあなたなのですね」
「そうですか?自分じゃわからないですけど、でも帰ってきたなって思うんです」
「それは良かった。では、あちらで師がお待ちです」
「…はい。」
「お初にお目にかかります。私は諸葛亮と申します。姜維よりお話は伺っています神子殿」
「初めまして、諸葛亮殿。お会いできて、嬉しいです」
「これは…暁の神子とは実在したのですね。神気が見えます。これほどまでとは」
「あなたはまだ帰れません。神を下ろした者をおくることは私にも容易くない」
「諸葛亮殿が龍ではないんですか?」
「龍は私です。奇跡を起こすこともできます。しかし、あなたは神の力をお持ちです。龍は神には及びません」
「そんな…」
「今はその時ではないということです。私にわかるのは、あなたが元の世界に帰れるのは東南の風の吹くその時…なにを意味するのかはまだわかりません。しかし、その時ならば私があなたをお返しできるでしょう」
「東南の風…?」
「時が来ねば私にもわかりません。申し訳ございません」
「いえ、ありがとうございました。実は迷っていたんです。もし帰れたとしても、帰りたくないんじゃないかって」
「ほう…」
「私はここでたくさんの人を殺してしまいました。元通りの世界にはもう戻れないんだと、思いました。この世界でできることをしたいと思います」
「あなたは強い女性ですね」
「…そうなりたいです」
「ってことで、私、帰れませんでした」
「真矢、飲め!今日は飲んで忘れろ」
「馬超殿!もう真矢殿も飲みすぎです!」
「姜維殿も、趙雲殿も今日くらい無礼講だ!真矢を見習ってほら、飲め」
「それで、真矢殿はこれからどうなさるのですか?」
「諸葛亮殿は、東南の風が吹くときがその時だっておっしゃっていました。その時まで、できることをしたいと思います」
「蜀にいらっしゃいませんか。師の側にいたほうが、その機も掴みやすいと思います。私も真矢殿にいていただけたら嬉しい」
「姜維さん…ありがとう。でも私、曹丕のお手伝いがしたいんです。曹丕がいなかったらわたし、もう死んでたと思うの。恩返しというか…」
「真矢は曹丕殿を好いているんだな」
「…うん、好きなんです」
「妬けるな。なあ趙雲殿よ」
「そうですね。しかし私は真矢殿が幸せであってくだされば、それが嬉しい」
「みんなに出会えてよかった」
「また戦場で会うこともあろう。敵でないことを祈っているが、我らはお前を守ろう」
「ありがとう。できれば仲間として戦いたいな」
「お迎えだ。真矢、またな」
「お疲れ様。偉い人は大変ね。酔ってるね」
「部屋で飲み直すぞ。付き合え。司馬懿、お前もだ」
「司馬懿と話すのも久しぶりだね」
「まったく、私がどれだけお前のために時間を割いたと思っている。しっかり働いて返してもらうぞ」
「はいはい。せっかく再会できたんだからもっと友好的にいこうよ」
「司馬懿としては十分友好的だ」
「どこで歪んじゃったんだか」
「真矢!うるさい凡愚め!」
「真矢、お前はこれからどうする?龍の話では帰る機会は来るのだろう」
「うん。私はここに、魏にいるよ。子桓についていく。みんなのためになにか出来ることがしたいの」
「龍の側にいたほうが、よいのではないか?友人としての意見だ。軍師としては、神子を他国に渡すのは反対だが…お前のためなら手を打とう」
「ううん、その時がくるなら、私がどこにいても帰れるはず。運命ってそういうものじゃない?」
「そうかもしれぬな」
「それにね、劉備様の軍にいたときに、日本に帰りたいより、曹丕のいる魏に帰りたいって思ってたの」
「惚気は余所でしろ」
「すまんな司馬懿。私はこれが可愛くてたまらん」
「ふっ、その調子では無傷で帰すのは無理そうですな」
「もう怪我しちゃったしね」
「そういう意味ではない。貞操の話だバカめが」
「て、貞操!」
「邪魔者は退散いたします。あまりしつこくなさりませんよう」
「心得ている」
「ちょっと!子桓!」
「お前はもう少し酒を飲むべきだな。飲ませてやろう、遠慮するな」
「うっ、ん…」
「私の元に残るのだろう。本当の妻になる、そういうことだろう」
「あ…そう、うん、そうなりますよね」
「お前が残ると言ってくれて嬉しかった」
「子桓…」
「愛している」
「お久しぶりです曹丕様、満足なさいましたか」
「とりあえずはな」
「私がいないうちに鋭気を養わせている」
「生娘には堪えましょうな」
「手加減くらいわきまえている。それで司馬懿、今後の予定は決まったか?」
「曹操様は袁家を討つおつもりです。後顧の憂いをなくし、富国強兵につとめよとのお達しです。私としても、依存はありませんので、準備が整い次第出陣となるでしょう。主戦場は官渡となりましょう」
「名族の終焉か…無常なものだな」
「曹操様としては、戦女神のご威光が欲しいようで、真矢を従軍させたいとのお達しです」
「使えるものは、つかう、か。真矢は後方で控えさせよう。もう前線にはださん。お前が見張ってくれ」
「はっ…しかしあれが大人しくしておるとは考えにくく…私はか弱いです故」
「うむ…戦女神というだけはあるな。しかしもう懲り懲りだ。淵小父上を近くに配置しよう。真矢とお前は本陣で軍師らしくしているんだな」
「寝ているのか?」
「あ…おはよう子桓、あれ、もう夜?」
「夜も朝も知らなくていい。私だけを覚えておればな」
「なっ…そんなこという人だったっけ」
「愛しい妻には睦言も囁く」
「つ、ま…」
「もうすぐまた戦になる。敵は袁家だ。勝利の宴のあとに祝言をあげるからそのつもりでいてくれ」
「それって、正妻ってこと?」
「それ以外になんだというんだ?不満か?」
「子桓は、王子様だから、正妻は名家のお姫様なんだろうなーとか、思ってて。私はほら異世界の住人で実家の力とかまったくないわけだし、それで、いいの?」
「私が妻の実家の助力なしでは天下を築けぬと思うのか?」
「そうじゃなくて、一般的な話」
「お前さえいてくれれば、私はなんだってできる。本当はこの屋敷で大切に守って行きたいが…暁の巫女として私を支えてくれないか」
「うん。もちろんだよ。そのためにここにいるんだから」
「久しいな真矢。元気そうでなによりだ」
「あんたねぇ、乙女をからかって楽しい?オヤジ趣味のセクハラやめてくんない?」
「はっ、もう乙女ではなかろうに」
「うわ、最低!上司の奥さんにそーいうこという?」
「バカめが!」
「素直じゃない奴」
「なにが素直じゃないというのだ!」
「うっざ」
「それで、袁家攻めるんでしょ?私はなにをすればいいの?また前線いき?」
「もうお前は前線には出さぬ。後方で神子の存在を知らしめるのがお前の役目だ」
「今宵、袁紹が宴を開くそうだ。劉備殿も参加する。真矢も来い」
「いく!私、劉備様の軍師の、諸葛亮さんに会わなきゃいけないの。龍眼を持つ人なんだって…もしかしたら、張角がいってた人かも」
「そうか」
「姜維殿が紹介してくれることになってるんだ」
「そうか」
「姜維さん!」
「真矢殿、お久しぶりです」
「妻が世話になったそうだな。礼をいう」
「ちょっと子桓!なんで、そんなに偉そうなのよ!すっごくお世話になったんだから!」
「ははは、とんでもありませんよ。良かった、曹丕殿の隣にいる真矢殿は大変お元気そうだ。それが本来のあなたなのですね」
「そうですか?自分じゃわからないですけど、でも帰ってきたなって思うんです」
「それは良かった。では、あちらで師がお待ちです」
「…はい。」
「お初にお目にかかります。私は諸葛亮と申します。姜維よりお話は伺っています神子殿」
「初めまして、諸葛亮殿。お会いできて、嬉しいです」
「これは…暁の神子とは実在したのですね。神気が見えます。これほどまでとは」
「あなたはまだ帰れません。神を下ろした者をおくることは私にも容易くない」
「諸葛亮殿が龍ではないんですか?」
「龍は私です。奇跡を起こすこともできます。しかし、あなたは神の力をお持ちです。龍は神には及びません」
「そんな…」
「今はその時ではないということです。私にわかるのは、あなたが元の世界に帰れるのは東南の風の吹くその時…なにを意味するのかはまだわかりません。しかし、その時ならば私があなたをお返しできるでしょう」
「東南の風…?」
「時が来ねば私にもわかりません。申し訳ございません」
「いえ、ありがとうございました。実は迷っていたんです。もし帰れたとしても、帰りたくないんじゃないかって」
「ほう…」
「私はここでたくさんの人を殺してしまいました。元通りの世界にはもう戻れないんだと、思いました。この世界でできることをしたいと思います」
「あなたは強い女性ですね」
「…そうなりたいです」
「ってことで、私、帰れませんでした」
「真矢、飲め!今日は飲んで忘れろ」
「馬超殿!もう真矢殿も飲みすぎです!」
「姜維殿も、趙雲殿も今日くらい無礼講だ!真矢を見習ってほら、飲め」
「それで、真矢殿はこれからどうなさるのですか?」
「諸葛亮殿は、東南の風が吹くときがその時だっておっしゃっていました。その時まで、できることをしたいと思います」
「蜀にいらっしゃいませんか。師の側にいたほうが、その機も掴みやすいと思います。私も真矢殿にいていただけたら嬉しい」
「姜維さん…ありがとう。でも私、曹丕のお手伝いがしたいんです。曹丕がいなかったらわたし、もう死んでたと思うの。恩返しというか…」
「真矢は曹丕殿を好いているんだな」
「…うん、好きなんです」
「妬けるな。なあ趙雲殿よ」
「そうですね。しかし私は真矢殿が幸せであってくだされば、それが嬉しい」
「みんなに出会えてよかった」
「また戦場で会うこともあろう。敵でないことを祈っているが、我らはお前を守ろう」
「ありがとう。できれば仲間として戦いたいな」
「お迎えだ。真矢、またな」
「お疲れ様。偉い人は大変ね。酔ってるね」
「部屋で飲み直すぞ。付き合え。司馬懿、お前もだ」
「司馬懿と話すのも久しぶりだね」
「まったく、私がどれだけお前のために時間を割いたと思っている。しっかり働いて返してもらうぞ」
「はいはい。せっかく再会できたんだからもっと友好的にいこうよ」
「司馬懿としては十分友好的だ」
「どこで歪んじゃったんだか」
「真矢!うるさい凡愚め!」
「真矢、お前はこれからどうする?龍の話では帰る機会は来るのだろう」
「うん。私はここに、魏にいるよ。子桓についていく。みんなのためになにか出来ることがしたいの」
「龍の側にいたほうが、よいのではないか?友人としての意見だ。軍師としては、神子を他国に渡すのは反対だが…お前のためなら手を打とう」
「ううん、その時がくるなら、私がどこにいても帰れるはず。運命ってそういうものじゃない?」
「そうかもしれぬな」
「それにね、劉備様の軍にいたときに、日本に帰りたいより、曹丕のいる魏に帰りたいって思ってたの」
「惚気は余所でしろ」
「すまんな司馬懿。私はこれが可愛くてたまらん」
「ふっ、その調子では無傷で帰すのは無理そうですな」
「もう怪我しちゃったしね」
「そういう意味ではない。貞操の話だバカめが」
「て、貞操!」
「邪魔者は退散いたします。あまりしつこくなさりませんよう」
「心得ている」
「ちょっと!子桓!」
「お前はもう少し酒を飲むべきだな。飲ませてやろう、遠慮するな」
「うっ、ん…」
「私の元に残るのだろう。本当の妻になる、そういうことだろう」
「あ…そう、うん、そうなりますよね」
「お前が残ると言ってくれて嬉しかった」
「子桓…」
「愛している」
「お久しぶりです曹丕様、満足なさいましたか」
「とりあえずはな」
「私がいないうちに鋭気を養わせている」
「生娘には堪えましょうな」
「手加減くらいわきまえている。それで司馬懿、今後の予定は決まったか?」
「曹操様は袁家を討つおつもりです。後顧の憂いをなくし、富国強兵につとめよとのお達しです。私としても、依存はありませんので、準備が整い次第出陣となるでしょう。主戦場は官渡となりましょう」
「名族の終焉か…無常なものだな」
「曹操様としては、戦女神のご威光が欲しいようで、真矢を従軍させたいとのお達しです」
「使えるものは、つかう、か。真矢は後方で控えさせよう。もう前線にはださん。お前が見張ってくれ」
「はっ…しかしあれが大人しくしておるとは考えにくく…私はか弱いです故」
「うむ…戦女神というだけはあるな。しかしもう懲り懲りだ。淵小父上を近くに配置しよう。真矢とお前は本陣で軍師らしくしているんだな」
「寝ているのか?」
「あ…おはよう子桓、あれ、もう夜?」
「夜も朝も知らなくていい。私だけを覚えておればな」
「なっ…そんなこという人だったっけ」
「愛しい妻には睦言も囁く」
「つ、ま…」
「もうすぐまた戦になる。敵は袁家だ。勝利の宴のあとに祝言をあげるからそのつもりでいてくれ」
「それって、正妻ってこと?」
「それ以外になんだというんだ?不満か?」
「子桓は、王子様だから、正妻は名家のお姫様なんだろうなーとか、思ってて。私はほら異世界の住人で実家の力とかまったくないわけだし、それで、いいの?」
「私が妻の実家の助力なしでは天下を築けぬと思うのか?」
「そうじゃなくて、一般的な話」
「お前さえいてくれれば、私はなんだってできる。本当はこの屋敷で大切に守って行きたいが…暁の巫女として私を支えてくれないか」
「うん。もちろんだよ。そのためにここにいるんだから」
「久しいな真矢。元気そうでなによりだ」
「あんたねぇ、乙女をからかって楽しい?オヤジ趣味のセクハラやめてくんない?」
「はっ、もう乙女ではなかろうに」
「うわ、最低!上司の奥さんにそーいうこという?」
「バカめが!」
「素直じゃない奴」
「なにが素直じゃないというのだ!」
「うっざ」
「それで、袁家攻めるんでしょ?私はなにをすればいいの?また前線いき?」
「もうお前は前線には出さぬ。後方で神子の存在を知らしめるのがお前の役目だ」
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無双パロ蜀3
「真矢殿、もうすぐ下ヒです。」
「曹家の軍はいる?」
「いえ、ここからでは見えません。反対側に進軍していると書簡が届いています」
「そっか…戦局はどうなの?」
「苦しいですね。ただ、呂布といえども籠城には限度があります。直に動きもありましょう」
「姜維のお師匠さまには会えそうかな?」
「師は策のためにずいぶんと後退しておいでです。戦場で合流となるとおもいます。」
「勝ったら、宴があるよね。そこであえないかな?絶対勝つから!」
「ええ、必ず」
「私も、出陣します。いままでお世話になった恩を返させて。劉備様にも、お礼になるような活躍をしてみせるわ」
「体はもう大丈夫ですか?」
「バッチリ」
「では真矢殿は趙雲殿とともにお進みください。中央門を落とします。ご武運を」
「姜維も、元気でね!」
「さすがに兵が厚いね。城壁も籠城にぴったり」
「水路を封鎖ってできますか?」
「水路、ですか」
「はい。水攻めをしましょう。そのうち中から開けてくれますよ」
「門が開いたぞ!総攻撃とする!」
「呂布を討て!」
「あんたね、この前はひどいことしてくれたじゃない。おかげで大怪我だったのよ!」
「暁の神子か。生きていたとは驚きだな」
「死んでたまるもんですか!」
「女だとて容赦はせん!」
「私もよ、あんた倒して、赤兎馬もらう!」
「赤兎馬?真矢殿?」
「あんたはモーションが遅いのよっ!」
「ちっ、この俺が背をむけるか」
「逃げてんじゃないわよ!あ、赤兎馬もらったからね!もう私のよ!」
「趙雲殿、このまま攻めます!」
「お待ちください!あそこに、曹の旗印が…」
「真矢!」
「…あ、子桓!!」
「無事だったか」
「あ、あ、会いたかったよ」
「私もだ。どこも無事か?」
「劉備様の軍に保護していただいていたの。こちらは趙雲殿。お世話や護衛をしてくれたの。お友達よ」
「妻が、ご迷惑をかけた。劉備殿にもお会いしたいとお伝えくださるか」
「はっ、必ずや」
「真矢殿、ここでお別れですな。あなたのそばで働けてよかった。またいずれお会いしましょう」
「趙雲殿も、お気をつけて。本当にありがとう!みんなにも、ありがとうって、伝えてください!」
「はっ。勝利の宴でお会いしましょう!」
「馬鹿者が!どれだけ心配したと思っている…探し回ったのだぞ」
「ごめん…早く連絡を取りたかったんだけど、劉備様が書簡を連合本軍にだしてくれてたんだけど、まだ届いてなかったんだね
「袁紹め、情報を回さなかったな…わざと書簡を止めて神子を手中に収めようとしたのか…もしくは無能故見落としたのか…」
「一枚岩じゃないってことだよね。他の陣営には気をつけるよ。あ、でも蜀のみんなは良い人たちだった」
「そのようだな。お前を助けてくれた礼をせねば」
「怪我は、ないか?いや、ないわけがないな。もういいのか?」
「うん…もう大丈夫。また会えて嬉しい」
「ずいぶん素直になったな真矢」
「だって、もう会えないかもって…呂布にやられたとき、私死んだかなとか思って…」
「お前が無事で良かった。お前が行方知れずになってから、ずっと探していた。無事に元の世界に返すと約束したが、守れなかったことをずっと悔やんでいたのだ」
「子桓、好き。怖かったよ、会いたかったよ、抱きしめて欲しかったの」
曹丕はもう遠慮はいらないとばかりに真矢を抱き締めた。久しくかいでいなかった女神の香りに頭がクラクラ揺れた。蜀では大事にされていたようだが、はたして本当に無事だったのかそればかり気になってしまう。真矢を送り届けた将軍は感じのよい美青年だった。曹丕は人に嫉妬する性質ではないが、大切に思っている女が守られ、信頼する男にザワザワと胸が騒ぐ。
「あの将軍、随分親しいように見えたが、こんなことはされなかったか?」
曹丕は真矢の唇を荒々しく奪った。吐息混じりに「こんなことしない」と真矢が呟く。消え入りそうな声は少しかすれて、曹丕の耳を刺激した。こんな風に感情を他人にぶつけたことがあっただろうか。大切にしたいと思うが、反対にめちゃくちゃにしてやりたいとも思った。
「傷をみたい。いいか?」
「う…ん」
衣を一枚一枚脱がしていく。唇を重ねながら、丁寧に剥ぎ取った。館の薄暗いなかに、真矢の白い肌が浮かび上がった。初めてみる真矢の素肌に息をのむ。彼女はまるで少年のような言動をとるし、服の上からはあまり女性的な体にはみえなかった。しかし裸の真矢はまるで女そのものだった。美しい胸の膨らみに、くびれた腰から続く柔らかそうな脚。恥ずかしそうに目をきつく結んでいる彼女は、普段の勝ち気な姿と相まって愛らしく感じた。
「傷は、もうすぐ消えそうだな。安心した…」
「うん、ひどい怪我だったんだけど、劉備様がお医者さんをつけてくれたの。呂布の腕が良かったから、傷跡も分かりにくいだろうって」
「そうか。それだけは奴の武に感謝しよう」
「子桓、お願い、もっと抱きしめて。帰ってきたって感じたいの」
「ずっとここに帰ること考えてた。日本にじゃなくて、子桓のとこに帰るって、思ってたんだよ」
「あっ…」
曹丕は真矢の全身を優しく愛撫した。湿っぽい唇で口付けを落としながら、身をしならせる真矢を楽しむ。動物になった心地だった。こんな風に女を愛するのは初めてだった。自分の指が真矢を喜ばせていることが嬉しかった。
このまま自分のものにしてしまいたい。曹丕は身を振るわせる真矢の荒い呼吸を聞きながら自分を抑える。思いを遂げて、そうすればもう真矢を手放せなくなるだろう。平和な世界から来た真矢を、この戦乱の世に縛り付けることはできなかった。
抱き合ったまま朝を迎えた。
「曹家の軍はいる?」
「いえ、ここからでは見えません。反対側に進軍していると書簡が届いています」
「そっか…戦局はどうなの?」
「苦しいですね。ただ、呂布といえども籠城には限度があります。直に動きもありましょう」
「姜維のお師匠さまには会えそうかな?」
「師は策のためにずいぶんと後退しておいでです。戦場で合流となるとおもいます。」
「勝ったら、宴があるよね。そこであえないかな?絶対勝つから!」
「ええ、必ず」
「私も、出陣します。いままでお世話になった恩を返させて。劉備様にも、お礼になるような活躍をしてみせるわ」
「体はもう大丈夫ですか?」
「バッチリ」
「では真矢殿は趙雲殿とともにお進みください。中央門を落とします。ご武運を」
「姜維も、元気でね!」
「さすがに兵が厚いね。城壁も籠城にぴったり」
「水路を封鎖ってできますか?」
「水路、ですか」
「はい。水攻めをしましょう。そのうち中から開けてくれますよ」
「門が開いたぞ!総攻撃とする!」
「呂布を討て!」
「あんたね、この前はひどいことしてくれたじゃない。おかげで大怪我だったのよ!」
「暁の神子か。生きていたとは驚きだな」
「死んでたまるもんですか!」
「女だとて容赦はせん!」
「私もよ、あんた倒して、赤兎馬もらう!」
「赤兎馬?真矢殿?」
「あんたはモーションが遅いのよっ!」
「ちっ、この俺が背をむけるか」
「逃げてんじゃないわよ!あ、赤兎馬もらったからね!もう私のよ!」
「趙雲殿、このまま攻めます!」
「お待ちください!あそこに、曹の旗印が…」
「真矢!」
「…あ、子桓!!」
「無事だったか」
「あ、あ、会いたかったよ」
「私もだ。どこも無事か?」
「劉備様の軍に保護していただいていたの。こちらは趙雲殿。お世話や護衛をしてくれたの。お友達よ」
「妻が、ご迷惑をかけた。劉備殿にもお会いしたいとお伝えくださるか」
「はっ、必ずや」
「真矢殿、ここでお別れですな。あなたのそばで働けてよかった。またいずれお会いしましょう」
「趙雲殿も、お気をつけて。本当にありがとう!みんなにも、ありがとうって、伝えてください!」
「はっ。勝利の宴でお会いしましょう!」
「馬鹿者が!どれだけ心配したと思っている…探し回ったのだぞ」
「ごめん…早く連絡を取りたかったんだけど、劉備様が書簡を連合本軍にだしてくれてたんだけど、まだ届いてなかったんだね
「袁紹め、情報を回さなかったな…わざと書簡を止めて神子を手中に収めようとしたのか…もしくは無能故見落としたのか…」
「一枚岩じゃないってことだよね。他の陣営には気をつけるよ。あ、でも蜀のみんなは良い人たちだった」
「そのようだな。お前を助けてくれた礼をせねば」
「怪我は、ないか?いや、ないわけがないな。もういいのか?」
「うん…もう大丈夫。また会えて嬉しい」
「ずいぶん素直になったな真矢」
「だって、もう会えないかもって…呂布にやられたとき、私死んだかなとか思って…」
「お前が無事で良かった。お前が行方知れずになってから、ずっと探していた。無事に元の世界に返すと約束したが、守れなかったことをずっと悔やんでいたのだ」
「子桓、好き。怖かったよ、会いたかったよ、抱きしめて欲しかったの」
曹丕はもう遠慮はいらないとばかりに真矢を抱き締めた。久しくかいでいなかった女神の香りに頭がクラクラ揺れた。蜀では大事にされていたようだが、はたして本当に無事だったのかそればかり気になってしまう。真矢を送り届けた将軍は感じのよい美青年だった。曹丕は人に嫉妬する性質ではないが、大切に思っている女が守られ、信頼する男にザワザワと胸が騒ぐ。
「あの将軍、随分親しいように見えたが、こんなことはされなかったか?」
曹丕は真矢の唇を荒々しく奪った。吐息混じりに「こんなことしない」と真矢が呟く。消え入りそうな声は少しかすれて、曹丕の耳を刺激した。こんな風に感情を他人にぶつけたことがあっただろうか。大切にしたいと思うが、反対にめちゃくちゃにしてやりたいとも思った。
「傷をみたい。いいか?」
「う…ん」
衣を一枚一枚脱がしていく。唇を重ねながら、丁寧に剥ぎ取った。館の薄暗いなかに、真矢の白い肌が浮かび上がった。初めてみる真矢の素肌に息をのむ。彼女はまるで少年のような言動をとるし、服の上からはあまり女性的な体にはみえなかった。しかし裸の真矢はまるで女そのものだった。美しい胸の膨らみに、くびれた腰から続く柔らかそうな脚。恥ずかしそうに目をきつく結んでいる彼女は、普段の勝ち気な姿と相まって愛らしく感じた。
「傷は、もうすぐ消えそうだな。安心した…」
「うん、ひどい怪我だったんだけど、劉備様がお医者さんをつけてくれたの。呂布の腕が良かったから、傷跡も分かりにくいだろうって」
「そうか。それだけは奴の武に感謝しよう」
「子桓、お願い、もっと抱きしめて。帰ってきたって感じたいの」
「ずっとここに帰ること考えてた。日本にじゃなくて、子桓のとこに帰るって、思ってたんだよ」
「あっ…」
曹丕は真矢の全身を優しく愛撫した。湿っぽい唇で口付けを落としながら、身をしならせる真矢を楽しむ。動物になった心地だった。こんな風に女を愛するのは初めてだった。自分の指が真矢を喜ばせていることが嬉しかった。
このまま自分のものにしてしまいたい。曹丕は身を振るわせる真矢の荒い呼吸を聞きながら自分を抑える。思いを遂げて、そうすればもう真矢を手放せなくなるだろう。平和な世界から来た真矢を、この戦乱の世に縛り付けることはできなかった。
抱き合ったまま朝を迎えた。
無双パロ蜀へ2
体も回復し、真矢は外ですごすことが増えてきた。曹丕はどうしているだろうか。心配してるかな。すぐに連絡をとりたくてもここには電話もメールもない。軍を興したばかりの劉備殿では、曹家に遣いをだすことはなかなか難しいそうだ。連合軍の盟主である袁家を通して書簡を送ってくれているというのだが、いつ届くかどうかは分からない。
「神子殿?どうなさいました?ぼっとされて、まさか熱でも!」
「い、いえ、ちょっと考えごとしてました。ごめんなさい、えっと、薬草もちゃんと摘んでますよ」
「それは…毒草ですね」
「あ…わたし、だめですね」
「これはよく似ているので、熟練の者でも間違えるのです。お気になさらないでください」
「姜維殿はすごいですね。お強いし、頭もいいし、いろんなこと知ってるし。かっこいいです」
「そんな…私なんて師に比べればなんでもありません。まだまだ勉強中の身」
「お師匠様がいるんですか?」
「はい。今は別働隊として動いていらっしゃいますので、書簡で指示を頂いています」
「こっちの動きも指示なさるんですか?」
「はい。師は龍眼を持つお方です。この世の全てを見通しておられるのではないかと思うほどです」
「龍…」
「神子殿?」
「あの、その方にはお会いできませんか?わたし、龍を宿す方を探しているんです。」
「龍を宿す、ですか。しかし師とは行軍の予定が合うかどうか。機があれば、必ずご紹介いたしましょう」
「ありがとうございます!」
「神子殿も、ご事情がおありなのですね」
「はい…信じていただけないかも知れませんが、私、張角って導師に違う時代からさらわれて来たんです。曹丕に拾われて、乱に参加して張角に元の時代に帰してもらおうとしたら、龍を宿す術師じゃなきゃできないって」
「そうなのですか。あなたは不思議な方だ。神子とはそういう神秘性をもつのでしょうか。あなたが嘘を言っているようには思えない」
「いきなり暁の神子なんて呼ばれて驚いたんです。今でも自分がそんな立派ななにかなのかって信じられないけど、みんなが求めてるならこの時代にいる間は頑張ろうって思ってます」
「神子殿なんでも私に頼ってください!ご協力は惜しみません。私はあなたに笑っていてほしいと、思いました…その…」
「姜維殿、お優しいんですね」
「そ、そろそろ戻りましょう」
「はい」
「神子殿は…お名前を教えていただけませんか」
「真矢です。橘真矢」
「真矢殿…」
「真矢って呼んでください」
薬草摘みから帰ってくると、馬超が馬の手入れをしていた。
「おお神子殿、薬草はとれました」
「はい。ほとんど姜維殿が、ですけど」
「ははは、そのうち山のように摘んでこられるようになります。神子殿は野山の暮らしには不慣れなようにお見受けしますな」
「そうですね、馬に触るのも初めてでした」
「馬に?よっぽどのお嬢様か、海育ち…には見えませんが」
「ここじゃない世界からきたから、ちょっと勝手が違うみたいですね」
「外国人にしては言葉が美しいな。てっきり都の出かと思っておりました」
「そうですか?」
「確かに、戦女神は異国より現れるといいますからな。とても、神秘的だ」
「え?」
「馬もよく神子殿に懐いています。元々おとなしい生き物ですが、気が荒いやつまであなたには気を許しているようだ。曹家に帰すのが嫌になります」
「あ…曹家は仇だと、お聞きしました…」
「それもありますが、神子殿を独占したくなりました。神子殿では味気ない。お名はなんと申される」
「真矢です。橘真矢。これでお友達ですね」
「…真矢、こちらの世界では特別な相手以外に名は明かさぬものだ」
「俺を特別な男と思ってくれたと解釈するぞ」
「え!そんなの初めてきいた!」
「まあ、そういうことだと思っていた。これからは注意しろよ」
「なんでいきなり口調まで変わるのよ!」
「俺たちは特別なお友達、だろ」
「なんか、違う気がする…」
「お前も口調が変わっているぞ。そっちが、素だな?勝ち気な女は好きだ」
「ちょっと触らないでよ!神子に手出したら劉備様に怒られるわよ!」
「このくらいで神子殿の清浄性は失われたりせぬさ」
「や、馬超、どこ触って…」
「意外と女らしい体つきをしているじゃないか。声もいい」
「お友達にこんなことするの!?」
「愛情表現だ。馬だってすることさ」
「馬って、私たち、人間だからね、もう少し複雑なんじゃないかな!」
「うっ、お前…やるな…」
「ばーか!」
「はぁ、びっくりした」
「なにが、びっくりしたんですか?」
「きゃ!趙雲殿!」
「そろそろ夕餉の支度ができますので、お探しさしていました」
「ありがとうございます!おなかペコペコだな~」
「なににびっくりしたんですか?」
「え、そのはなし蒸し返します?」
「ええ、神子殿のことはなんでも知っていたいのです」
「あの、馬超殿に名前を教えたら、この世界では特別な相手にしか名前は教えないものだって迫られて、びっくりして逃げてきたんです」
「な、馬超殿が、神子殿にご無礼を!?お怪我はありませんか!!もしや、なにか失礼なことなど、ございませんでしたか?」
「はい、びっくりして勢いで蹴っちゃって…そのまま逃げてきました…」
「姜維殿は名前を名乗ってもそんなことしてこなかったので、本当にびっくりしたんです。名乗っちゃダメなんて知らなかったし…」
「姜維殿にも、教えたのですか…」
「はい、聞かれたから名乗っただけのつもりだったのですが…これからは気をつけます」
「夕餉はお部屋にお持ちしますので、ごゆっくり落ち着かれてください」
「趙雲殿、真矢のところにいくのか?」
「真矢?」
「おっと、神子殿だ。なんだ、知らなかったのか」
「女性の名を聞くなんて、ましてや神子殿ですぞ馬超殿!」
「ははは、美しい女性を口説くのに神子もなにも関係ないさ。謝っておいてくれるか。次は優しくするから恋しくなったら呼べ、とな」
「馬超殿!?」
「あの娘、色気のないと思っていたが、予想以上だったぞ」
「神子殿、夕餉をお持ちしました」
「ありがとうございます。あの、よかったら、一緒に食べませんか?ひとりじゃ寂しくて」
「では、お言葉に甘えて」
「真矢殿とおっしゃるんですね」
「はい」
「馬超殿が、次は優しくするから恋しくなったら呼べとおっしゃっていました」
「な!あいつ!そんなことばっかり言って!」
「随時仲が良いんですね」
「友達です!それ以上でも以下でもないです」
「友達…では、私は、なんなのでしょう。正直、私だけお名前を教えていただけなくて、落ち込んでおります。もちろん!女性の慎ましさとは理解しておりますが、馬超殿に自慢までされて、私のほうが神子殿と親しくさせていただいていると思っていただけに…」
「そんなことありません!趙雲殿のこと、私は大好きです。助けていただいて、お世話までしていただいて…立派な方にお友達なんて、失礼かと後込みしてしまいました。私の国では、男性も女性も名前は誰にでも教えて大丈夫なんです。あまり考えもせずに教えてしまいました…これからは気をつけます」
「私も、お友達になってもいいですか?真矢殿と、二人のときなどはお呼びしてよいでしょうか」
「はい!」
「あと、馬超殿になにをされたんですか?」
「えっと…抱きしめられて、その、体、触られて…あの人慣れてるっていうか、気づけなくて…」
「なんてことを…」
「わわわ、いいんです、いや、よくないけど、もう気をつけますし、私が迂闊だったのが、いけないんです」
「私はあなたを守りたいんです…真矢殿…ここにいる間だけでも、私はあなたの槍になりたい」
「趙雲殿…」
「子龍と申します。そうお呼びください」
「あ…子龍…殿」
この笑顔は反則でしょう。ごめん曹丕。ちょっと心が揺れちゃった。
「私、曹丕の妻なんです!ほんとの妻じゃないけど、奥さんだから、ほかの男性にクラクラしちゃダメなんですわたし!」
「本当の妻ではない?どういうことですか?」
「私、元の世界に帰るから、キレイなままで返してくれるって、だから、ほんとの奥さんじゃないけど、一応、人妻なんです」
「…すごい方だ。真矢殿を愛していらっしゃるんですね」
「…わかりません。でも、あの人に会いたいです」
「この子龍、真矢殿を絶対に曹家まで無事にお届けします」
「ありがとう…」
「神子殿?どうなさいました?ぼっとされて、まさか熱でも!」
「い、いえ、ちょっと考えごとしてました。ごめんなさい、えっと、薬草もちゃんと摘んでますよ」
「それは…毒草ですね」
「あ…わたし、だめですね」
「これはよく似ているので、熟練の者でも間違えるのです。お気になさらないでください」
「姜維殿はすごいですね。お強いし、頭もいいし、いろんなこと知ってるし。かっこいいです」
「そんな…私なんて師に比べればなんでもありません。まだまだ勉強中の身」
「お師匠様がいるんですか?」
「はい。今は別働隊として動いていらっしゃいますので、書簡で指示を頂いています」
「こっちの動きも指示なさるんですか?」
「はい。師は龍眼を持つお方です。この世の全てを見通しておられるのではないかと思うほどです」
「龍…」
「神子殿?」
「あの、その方にはお会いできませんか?わたし、龍を宿す方を探しているんです。」
「龍を宿す、ですか。しかし師とは行軍の予定が合うかどうか。機があれば、必ずご紹介いたしましょう」
「ありがとうございます!」
「神子殿も、ご事情がおありなのですね」
「はい…信じていただけないかも知れませんが、私、張角って導師に違う時代からさらわれて来たんです。曹丕に拾われて、乱に参加して張角に元の時代に帰してもらおうとしたら、龍を宿す術師じゃなきゃできないって」
「そうなのですか。あなたは不思議な方だ。神子とはそういう神秘性をもつのでしょうか。あなたが嘘を言っているようには思えない」
「いきなり暁の神子なんて呼ばれて驚いたんです。今でも自分がそんな立派ななにかなのかって信じられないけど、みんなが求めてるならこの時代にいる間は頑張ろうって思ってます」
「神子殿なんでも私に頼ってください!ご協力は惜しみません。私はあなたに笑っていてほしいと、思いました…その…」
「姜維殿、お優しいんですね」
「そ、そろそろ戻りましょう」
「はい」
「神子殿は…お名前を教えていただけませんか」
「真矢です。橘真矢」
「真矢殿…」
「真矢って呼んでください」
薬草摘みから帰ってくると、馬超が馬の手入れをしていた。
「おお神子殿、薬草はとれました」
「はい。ほとんど姜維殿が、ですけど」
「ははは、そのうち山のように摘んでこられるようになります。神子殿は野山の暮らしには不慣れなようにお見受けしますな」
「そうですね、馬に触るのも初めてでした」
「馬に?よっぽどのお嬢様か、海育ち…には見えませんが」
「ここじゃない世界からきたから、ちょっと勝手が違うみたいですね」
「外国人にしては言葉が美しいな。てっきり都の出かと思っておりました」
「そうですか?」
「確かに、戦女神は異国より現れるといいますからな。とても、神秘的だ」
「え?」
「馬もよく神子殿に懐いています。元々おとなしい生き物ですが、気が荒いやつまであなたには気を許しているようだ。曹家に帰すのが嫌になります」
「あ…曹家は仇だと、お聞きしました…」
「それもありますが、神子殿を独占したくなりました。神子殿では味気ない。お名はなんと申される」
「真矢です。橘真矢。これでお友達ですね」
「…真矢、こちらの世界では特別な相手以外に名は明かさぬものだ」
「俺を特別な男と思ってくれたと解釈するぞ」
「え!そんなの初めてきいた!」
「まあ、そういうことだと思っていた。これからは注意しろよ」
「なんでいきなり口調まで変わるのよ!」
「俺たちは特別なお友達、だろ」
「なんか、違う気がする…」
「お前も口調が変わっているぞ。そっちが、素だな?勝ち気な女は好きだ」
「ちょっと触らないでよ!神子に手出したら劉備様に怒られるわよ!」
「このくらいで神子殿の清浄性は失われたりせぬさ」
「や、馬超、どこ触って…」
「意外と女らしい体つきをしているじゃないか。声もいい」
「お友達にこんなことするの!?」
「愛情表現だ。馬だってすることさ」
「馬って、私たち、人間だからね、もう少し複雑なんじゃないかな!」
「うっ、お前…やるな…」
「ばーか!」
「はぁ、びっくりした」
「なにが、びっくりしたんですか?」
「きゃ!趙雲殿!」
「そろそろ夕餉の支度ができますので、お探しさしていました」
「ありがとうございます!おなかペコペコだな~」
「なににびっくりしたんですか?」
「え、そのはなし蒸し返します?」
「ええ、神子殿のことはなんでも知っていたいのです」
「あの、馬超殿に名前を教えたら、この世界では特別な相手にしか名前は教えないものだって迫られて、びっくりして逃げてきたんです」
「な、馬超殿が、神子殿にご無礼を!?お怪我はありませんか!!もしや、なにか失礼なことなど、ございませんでしたか?」
「はい、びっくりして勢いで蹴っちゃって…そのまま逃げてきました…」
「姜維殿は名前を名乗ってもそんなことしてこなかったので、本当にびっくりしたんです。名乗っちゃダメなんて知らなかったし…」
「姜維殿にも、教えたのですか…」
「はい、聞かれたから名乗っただけのつもりだったのですが…これからは気をつけます」
「夕餉はお部屋にお持ちしますので、ごゆっくり落ち着かれてください」
「趙雲殿、真矢のところにいくのか?」
「真矢?」
「おっと、神子殿だ。なんだ、知らなかったのか」
「女性の名を聞くなんて、ましてや神子殿ですぞ馬超殿!」
「ははは、美しい女性を口説くのに神子もなにも関係ないさ。謝っておいてくれるか。次は優しくするから恋しくなったら呼べ、とな」
「馬超殿!?」
「あの娘、色気のないと思っていたが、予想以上だったぞ」
「神子殿、夕餉をお持ちしました」
「ありがとうございます。あの、よかったら、一緒に食べませんか?ひとりじゃ寂しくて」
「では、お言葉に甘えて」
「真矢殿とおっしゃるんですね」
「はい」
「馬超殿が、次は優しくするから恋しくなったら呼べとおっしゃっていました」
「な!あいつ!そんなことばっかり言って!」
「随時仲が良いんですね」
「友達です!それ以上でも以下でもないです」
「友達…では、私は、なんなのでしょう。正直、私だけお名前を教えていただけなくて、落ち込んでおります。もちろん!女性の慎ましさとは理解しておりますが、馬超殿に自慢までされて、私のほうが神子殿と親しくさせていただいていると思っていただけに…」
「そんなことありません!趙雲殿のこと、私は大好きです。助けていただいて、お世話までしていただいて…立派な方にお友達なんて、失礼かと後込みしてしまいました。私の国では、男性も女性も名前は誰にでも教えて大丈夫なんです。あまり考えもせずに教えてしまいました…これからは気をつけます」
「私も、お友達になってもいいですか?真矢殿と、二人のときなどはお呼びしてよいでしょうか」
「はい!」
「あと、馬超殿になにをされたんですか?」
「えっと…抱きしめられて、その、体、触られて…あの人慣れてるっていうか、気づけなくて…」
「なんてことを…」
「わわわ、いいんです、いや、よくないけど、もう気をつけますし、私が迂闊だったのが、いけないんです」
「私はあなたを守りたいんです…真矢殿…ここにいる間だけでも、私はあなたの槍になりたい」
「趙雲殿…」
「子龍と申します。そうお呼びください」
「あ…子龍…殿」
この笑顔は反則でしょう。ごめん曹丕。ちょっと心が揺れちゃった。
「私、曹丕の妻なんです!ほんとの妻じゃないけど、奥さんだから、ほかの男性にクラクラしちゃダメなんですわたし!」
「本当の妻ではない?どういうことですか?」
「私、元の世界に帰るから、キレイなままで返してくれるって、だから、ほんとの奥さんじゃないけど、一応、人妻なんです」
「…すごい方だ。真矢殿を愛していらっしゃるんですね」
「…わかりません。でも、あの人に会いたいです」
「この子龍、真矢殿を絶対に曹家まで無事にお届けします」
「ありがとう…」
無双パロ蜀へ1
「う…ん…」
「将軍!意識を取り戻しましたぞ」
「暁の神子殿、わかりますか?」
「は、はい、ここは…」
「劉備様の陣でございます。神子殿が倒れているのを私がお連れしました」
「そうだった…私、呂布に追われて、少しでも引き離さないとって・・・」
「虎牢関は落ちました。これより連合軍は下ヒに攻め入るようです」
「助けていただきありがとうございます」
「私は趙雲と申します。神子殿はお身体のご回復を一番にお考えください。劉備様よりお世話と護衛を任されました」
「趙雲殿、ありがとうございます…うっ」
「傷が開きます!どうかご安静になさってください」
「これでは馬にも乗れない…でも、帰らないと、みんな心配してると思います」
「曹操軍も下ヒへ向かっています。…そのうちお仲間とも再会できましょう」
「わかりました・・・お世話になります。あの、安心したら眠くなってきました」
「私は外に控えております。いつでもお声掛けください」
「神子殿、夕餉をお持ちしました」
「いい匂い…私、お腹すいてたみたいです」
「そのままで。お口もとまでお世話させてください」
「恥ずかしい…将軍にこんなことさせられません」
「私がやりたいのです。神子殿のお世話をさせてください」
「初めて神子殿を戦場でお見かけしたとき、女性ながら美しい剣技と、その神々しさに見とれて落馬しそうになりました」
「まさか」
「戦女神の美しさは、我が軍でも語り草です」
「そんなに褒めてもらって…実物はこれですからお恥ずかしい限りです」
「そんな!神子殿はお美しいです!どんな女性よりお美しい!」
「趙雲殿、外まで声が筒抜けですよ」
「姜維殿!」
「初めまして神子殿、姜維伯約と申します。お薬湯をお持ちしました」
「ありがとうございます。姜維殿」
「何分野営ですので、ご不便だと思いますが、なにかありましたら私でも趙雲殿にでもお申し付けください」
「趙雲殿、神子殿は今はお眠りになるのが肝要。さあ参りましょう」
「お傷ももうじき完治すると医師が申しておりました。頑張ってくだされ…神子殿?どうされました」
「お薬湯が苦いんです」
「本当だ、苦いですな」
「そうだ、沐浴しても良いそうですので、用意いたしました。いかがですか?」
「ぜひ!助かります」
「星彩を呼んで参ります」
「女性の方もいらっしゃるんですね」
「私は劉備様の弟、張飛の娘です。一緒に戦っております」
「気持ちいいです。ありがとうございます星彩さん。久しぶりのお風呂なんです」
「傷にはしみませんか?」
「はい」
「星彩とお呼びください」
「私のことは真矢と呼んでください。女の子のお友達ができてうれしい」
「いえそのような無礼は…」
「私じゃ、お友達になれない?」
「いえ…真矢…これから友達、ですね」
「この服は?」
「劉備様からの贈り物です。もうじきこちらに仲間とお戻りになられるそうです」
「いいんでしょうか、こんなよくしていただいて」
「殿は仁のお方。神子殿も安心して殿のご好意をお受け取りください。殿も喜ばれます」
「趙雲殿は劉備様が大好きなんですね」
「はい!我が槍を捧げたお方です」
「趙雲殿の槍、みてみたいな」
「神子殿さえよろしければ、明日、練兵がありますので、ご覧になっていただけますか?」
「はい!お願いします!」
「おはようございます趙雲殿」
「神子殿!みな神子殿がいらっしゃるときいて張り切っておりますよ」
「神子殿はこちらにおかけください」
「姜維殿、ありがとうございます」
「あちらの方、凄くお強いですね!」
「馬超殿ですね。戦場ではもっと壮観ですよ。ああ、こちらにいらっしゃるようですね」
「これはこれは、暁の神子殿ですな。俺は馬孟起。最近は趙雲殿も姜維殿もあなたの話ばかりで、お会いしてみたかったのです」
「馬超殿!」
「はは、本当のことだろう」
「神子殿の前で恥ずかしい」
「これほどの美姫なら夢中になるのも仕方ない。お二人とも、いいところを見せたらどうだ?」
「では、姜維殿お手会わせを」
「凄い迫力!」
「お二人とも優秀な将軍です。これほど心強いものはない」
「暁の神子殿、失礼します。私は劉備玄徳と申します」
「劉備殿!ご好意ありがとうございます。だいぶ体も良くなりました」
「傷が残らぬと良いのですが」
「趙雲殿や皆さんにもよくしていただいて、ゆっくり休ませていただきました」
「もうじきこの陣も下ヒへ向けて出発いたします。神子殿のご陣営にも合流できるようご協力させていただきます」
「ありがとうございます。こんな体ですが、なにかお役に立てませんか?していただくばかりで、わたしもなにかお返しがしたいんです」
「まずはお身体をお癒しください。我が軍が神子殿をお迎えできたことだけで名誉なのです。なにも望むものはありません」
「ですが…」
「でしたら、武将たちと親しくしてやってくださらぬか。士気も上がるでしょう」
「はいっ」
「将軍!意識を取り戻しましたぞ」
「暁の神子殿、わかりますか?」
「は、はい、ここは…」
「劉備様の陣でございます。神子殿が倒れているのを私がお連れしました」
「そうだった…私、呂布に追われて、少しでも引き離さないとって・・・」
「虎牢関は落ちました。これより連合軍は下ヒに攻め入るようです」
「助けていただきありがとうございます」
「私は趙雲と申します。神子殿はお身体のご回復を一番にお考えください。劉備様よりお世話と護衛を任されました」
「趙雲殿、ありがとうございます…うっ」
「傷が開きます!どうかご安静になさってください」
「これでは馬にも乗れない…でも、帰らないと、みんな心配してると思います」
「曹操軍も下ヒへ向かっています。…そのうちお仲間とも再会できましょう」
「わかりました・・・お世話になります。あの、安心したら眠くなってきました」
「私は外に控えております。いつでもお声掛けください」
「神子殿、夕餉をお持ちしました」
「いい匂い…私、お腹すいてたみたいです」
「そのままで。お口もとまでお世話させてください」
「恥ずかしい…将軍にこんなことさせられません」
「私がやりたいのです。神子殿のお世話をさせてください」
「初めて神子殿を戦場でお見かけしたとき、女性ながら美しい剣技と、その神々しさに見とれて落馬しそうになりました」
「まさか」
「戦女神の美しさは、我が軍でも語り草です」
「そんなに褒めてもらって…実物はこれですからお恥ずかしい限りです」
「そんな!神子殿はお美しいです!どんな女性よりお美しい!」
「趙雲殿、外まで声が筒抜けですよ」
「姜維殿!」
「初めまして神子殿、姜維伯約と申します。お薬湯をお持ちしました」
「ありがとうございます。姜維殿」
「何分野営ですので、ご不便だと思いますが、なにかありましたら私でも趙雲殿にでもお申し付けください」
「趙雲殿、神子殿は今はお眠りになるのが肝要。さあ参りましょう」
「お傷ももうじき完治すると医師が申しておりました。頑張ってくだされ…神子殿?どうされました」
「お薬湯が苦いんです」
「本当だ、苦いですな」
「そうだ、沐浴しても良いそうですので、用意いたしました。いかがですか?」
「ぜひ!助かります」
「星彩を呼んで参ります」
「女性の方もいらっしゃるんですね」
「私は劉備様の弟、張飛の娘です。一緒に戦っております」
「気持ちいいです。ありがとうございます星彩さん。久しぶりのお風呂なんです」
「傷にはしみませんか?」
「はい」
「星彩とお呼びください」
「私のことは真矢と呼んでください。女の子のお友達ができてうれしい」
「いえそのような無礼は…」
「私じゃ、お友達になれない?」
「いえ…真矢…これから友達、ですね」
「この服は?」
「劉備様からの贈り物です。もうじきこちらに仲間とお戻りになられるそうです」
「いいんでしょうか、こんなよくしていただいて」
「殿は仁のお方。神子殿も安心して殿のご好意をお受け取りください。殿も喜ばれます」
「趙雲殿は劉備様が大好きなんですね」
「はい!我が槍を捧げたお方です」
「趙雲殿の槍、みてみたいな」
「神子殿さえよろしければ、明日、練兵がありますので、ご覧になっていただけますか?」
「はい!お願いします!」
「おはようございます趙雲殿」
「神子殿!みな神子殿がいらっしゃるときいて張り切っておりますよ」
「神子殿はこちらにおかけください」
「姜維殿、ありがとうございます」
「あちらの方、凄くお強いですね!」
「馬超殿ですね。戦場ではもっと壮観ですよ。ああ、こちらにいらっしゃるようですね」
「これはこれは、暁の神子殿ですな。俺は馬孟起。最近は趙雲殿も姜維殿もあなたの話ばかりで、お会いしてみたかったのです」
「馬超殿!」
「はは、本当のことだろう」
「神子殿の前で恥ずかしい」
「これほどの美姫なら夢中になるのも仕方ない。お二人とも、いいところを見せたらどうだ?」
「では、姜維殿お手会わせを」
「凄い迫力!」
「お二人とも優秀な将軍です。これほど心強いものはない」
「暁の神子殿、失礼します。私は劉備玄徳と申します」
「劉備殿!ご好意ありがとうございます。だいぶ体も良くなりました」
「傷が残らぬと良いのですが」
「趙雲殿や皆さんにもよくしていただいて、ゆっくり休ませていただきました」
「もうじきこの陣も下ヒへ向けて出発いたします。神子殿のご陣営にも合流できるようご協力させていただきます」
「ありがとうございます。こんな体ですが、なにかお役に立てませんか?していただくばかりで、わたしもなにかお返しがしたいんです」
「まずはお身体をお癒しください。我が軍が神子殿をお迎えできたことだけで名誉なのです。なにも望むものはありません」
「ですが…」
「でしたら、武将たちと親しくしてやってくださらぬか。士気も上がるでしょう」
「はいっ」
無双パロ7
私は軍師として司馬懿の補佐に任じられた。司馬懿の下なら最低限目が届くし、私の勉強にもなるだろうということだった。司馬懿は子桓の先生だったらしく、こちらのことが全くわからない私にも厳しく指導してくれた。今思い出しても殺意がわくが、おかげで軍師としても赤っ恥をかかない程度にはこの時代のことがわかってきた。
「あとは、その口の効き方だけだな。私に恥をかかせるなよ」
「この部屋でくらいいいじゃん。リラックスさせてよ」
「日頃の行いが染み出すのだ。バカめが」
「神子殿、戦の準備はいかがですか?」
「順調に整っておりますわ。司馬懿様は人使いが荒くて、大変です」
「ははは、喧嘩でもなさいましたか」
「いいえ喧嘩なんて」
「曹丕様の奥方にそのような失礼はなさらないか」
「ええ、今から子桓様に呼ばれておりますので、失礼いたします」
「待って」
「え?」
「私も曹丕様のところに向かう途中なのですが、書物を取りにいかねばならぬのです。量も多くて、もし良かったら手伝っていただけませんか」
「ええ、かまいませんよ」
「女性の手を煩わせて申し訳ありません」
「いえ、これくらい、日頃司馬懿様に持たされるものと比べたら軽いものです」
「神子殿に重い荷物を?」
「あの人は全く性格が悪くて困ります」
「神子殿、いえ真矢姫、普通主君の奥方に荷物を持たせたりはしませんよ」
「それは、私が弟子だから容赦ないのです」
「あなたは以前、曹丕様とはそういう関係ではないと仰いましたね。実際はどのようなご関係なんですか」
「わたしは、子桓の妻で・・・」
「違う」
「なぜそう言い切れるのです」
「あなたからは人妻の匂いがしないのですよ。まだ蕾だ」
「なっ・・・」
郭嘉は真矢の唇をその唇で縫い止めた。動けない真矢の顔は混乱の色に変わっていく。郭嘉は涼しい顔をして口付けたまま笑んだ。
「こんなに赤くなって、真矢姫は可愛らしい顔をする。私はあなたが何者でも構いません。気が変わったらいつでも私のもとへいらっしゃい」
「私は子桓の奥さんなんだから!」
「あなたは、男を狂わせる香りがするんだよ」
「子桓・・・あのね」
「どうした。司馬懿のしごきに音をあげたか?」
真矢は曹丕に抱きついた。筆が墨汁の染みをつくる。
「真矢?」
「私、さっき、キスされた。郭嘉に、いきなり。私は子桓の奥さんじゃないって」
「なに」
「怖かったよ。嫌だっておもったの。子桓じゃなきゃやだ、私、やだ」
「何故ばれた」
「人妻の匂いがしないって言ってた。匂いがするって、その、男を、狂わせる香りが」
「目ざとい奴だな」
「子桓?」
「真矢、お前に話していなかったことがある。屋敷で話そう」
体調不良と銘打って、曹丕は真矢を屋敷に連れ帰った。真矢は明らかに狼狽していて、曹丕は馬車の中でずっと彼女の手を握りしめていた。
「落ち着いたか?」
「うん。ごめんね、取り乱しちゃって」
「よい。私こそ、守るといっておいてお前を守れなかった。すまない」
「子桓は悪くないよ・・・郭嘉が・・・」
「真矢、暁の女神は戦の神ということは知っているな」
「うん」
「もう一つ、異名があるのだ」
「異名?」
「お前が気にするとおもって黙っていたが、裏目にでた」
「暁の女神は愛と豊饒の女神。見るもの全てを虜にし、その体からはえもいわれぬ香りを放つと言われている」
「どういうこと?」
「・・・お前が望むと望まないと、お前の香りは男たちを惑わせる。女神を手に入れた男は天下をも手中におさめるだろうともな」
「そんな、まさか」
「やはり出仕させたのは間違いだった。勘のいい奴め」
「仕事はいくよ。子桓の役に立ちたい」
「真矢・・・」
「ねぇ、キスして?子桓の唇でキレイにして」
「私も、抑えが効くかわからんぞ」
「それでもいい」
「・・・バカが」
曹丕は真矢を引き寄せ、力強い腕を腰に回した。男性にこんな風に抱き締められたのは初めてだったが、強張っていた体から緊張が解けていくのを感じた。好きになるってこういうことなのかなとまぶたを閉じると、頬に影が浮かぶ。
こう素直になられるのもくすぐったいと曹丕は思ったが、安心しきって身をまかせる真矢をできるだけ優しく抱きしめると、口付けた。初めは浅く、徐々に深くなる口付けに、呼吸が荒くなる。真矢の反応を楽しみながら、曹丕は郭嘉に嫉妬している自分に気づいた。
何故自分が軍師風情に嫉妬せねばならないのか。曹丕の身分ならばどんな美女もおもいのままだ。父親に似て曹丕も女性をよく好んだが、これまで屋敷に連れ帰るほどの女性はいなかった。
曹丕の母は、曹操の側室のひとりで、息子の目に不幸な女として映っていた。また、曹丕を跡継ぎとすることに奔走し、多くの者を陰ながら葬っていた。
曹丕がこの年まで独り身でいたのは、母のような女性をつくらないよう、一人の妃しか娶らない決意の現れだった。最上の女を探していた。身分や家柄ではなく、乱世を自分と共に生き抜ける女を。
「お前は誰にも渡さぬ。もちろん、郭嘉にもな」
「子桓…」
曹丕はそっと真矢を寝台に横たえた。今まで抱いたどんな女とも違う。剣を使うものの体だった。
「香りが増したな。どんな香よりかぐわしい」
「そんなっ」
真矢はカッと頬を染めた。体の奥深くでなにかが溢れる。新しい泉が目覚めるように、血液がめぐる。
曹丕の指先が素肌に触れる。案外豊かな胸をしていることに曹丕は嬉しい誤算だと思った。
「や、わたし、あの!」
「郭嘉には触られなかったか?」
「…うん」
「嫌か?」
「嫌…じゃない、好き、子桓」
潤んだ瞳に見つめられ、曹丕の心臓が脈打った。甘い香りがする。
「我慢するのも大変だな」
曹丕は真矢の全てを暴きたい衝動にかられた。一時彼女を強く抱きしめ、もう一度口付けた。
「私はお前を気に入っている。大切にしたいと思っている」
「お前を傷つけず、返すのが私のお前を愛する気持ちだ」
いずれ真矢は自分の世界に帰るだろう。そのとき自分が障害にならはことはあってはならない。
「うん、ありがとう愛してくれて」
テコ入れ
恋愛にならない
ハレンチ 流浪 逆はー 曹丕が王子さま
天赤河
はなになれ
ほか、ご都合主義
メモ程度の仕上がりでOK
「あとは、その口の効き方だけだな。私に恥をかかせるなよ」
「この部屋でくらいいいじゃん。リラックスさせてよ」
「日頃の行いが染み出すのだ。バカめが」
「神子殿、戦の準備はいかがですか?」
「順調に整っておりますわ。司馬懿様は人使いが荒くて、大変です」
「ははは、喧嘩でもなさいましたか」
「いいえ喧嘩なんて」
「曹丕様の奥方にそのような失礼はなさらないか」
「ええ、今から子桓様に呼ばれておりますので、失礼いたします」
「待って」
「え?」
「私も曹丕様のところに向かう途中なのですが、書物を取りにいかねばならぬのです。量も多くて、もし良かったら手伝っていただけませんか」
「ええ、かまいませんよ」
「女性の手を煩わせて申し訳ありません」
「いえ、これくらい、日頃司馬懿様に持たされるものと比べたら軽いものです」
「神子殿に重い荷物を?」
「あの人は全く性格が悪くて困ります」
「神子殿、いえ真矢姫、普通主君の奥方に荷物を持たせたりはしませんよ」
「それは、私が弟子だから容赦ないのです」
「あなたは以前、曹丕様とはそういう関係ではないと仰いましたね。実際はどのようなご関係なんですか」
「わたしは、子桓の妻で・・・」
「違う」
「なぜそう言い切れるのです」
「あなたからは人妻の匂いがしないのですよ。まだ蕾だ」
「なっ・・・」
郭嘉は真矢の唇をその唇で縫い止めた。動けない真矢の顔は混乱の色に変わっていく。郭嘉は涼しい顔をして口付けたまま笑んだ。
「こんなに赤くなって、真矢姫は可愛らしい顔をする。私はあなたが何者でも構いません。気が変わったらいつでも私のもとへいらっしゃい」
「私は子桓の奥さんなんだから!」
「あなたは、男を狂わせる香りがするんだよ」
「子桓・・・あのね」
「どうした。司馬懿のしごきに音をあげたか?」
真矢は曹丕に抱きついた。筆が墨汁の染みをつくる。
「真矢?」
「私、さっき、キスされた。郭嘉に、いきなり。私は子桓の奥さんじゃないって」
「なに」
「怖かったよ。嫌だっておもったの。子桓じゃなきゃやだ、私、やだ」
「何故ばれた」
「人妻の匂いがしないって言ってた。匂いがするって、その、男を、狂わせる香りが」
「目ざとい奴だな」
「子桓?」
「真矢、お前に話していなかったことがある。屋敷で話そう」
体調不良と銘打って、曹丕は真矢を屋敷に連れ帰った。真矢は明らかに狼狽していて、曹丕は馬車の中でずっと彼女の手を握りしめていた。
「落ち着いたか?」
「うん。ごめんね、取り乱しちゃって」
「よい。私こそ、守るといっておいてお前を守れなかった。すまない」
「子桓は悪くないよ・・・郭嘉が・・・」
「真矢、暁の女神は戦の神ということは知っているな」
「うん」
「もう一つ、異名があるのだ」
「異名?」
「お前が気にするとおもって黙っていたが、裏目にでた」
「暁の女神は愛と豊饒の女神。見るもの全てを虜にし、その体からはえもいわれぬ香りを放つと言われている」
「どういうこと?」
「・・・お前が望むと望まないと、お前の香りは男たちを惑わせる。女神を手に入れた男は天下をも手中におさめるだろうともな」
「そんな、まさか」
「やはり出仕させたのは間違いだった。勘のいい奴め」
「仕事はいくよ。子桓の役に立ちたい」
「真矢・・・」
「ねぇ、キスして?子桓の唇でキレイにして」
「私も、抑えが効くかわからんぞ」
「それでもいい」
「・・・バカが」
曹丕は真矢を引き寄せ、力強い腕を腰に回した。男性にこんな風に抱き締められたのは初めてだったが、強張っていた体から緊張が解けていくのを感じた。好きになるってこういうことなのかなとまぶたを閉じると、頬に影が浮かぶ。
こう素直になられるのもくすぐったいと曹丕は思ったが、安心しきって身をまかせる真矢をできるだけ優しく抱きしめると、口付けた。初めは浅く、徐々に深くなる口付けに、呼吸が荒くなる。真矢の反応を楽しみながら、曹丕は郭嘉に嫉妬している自分に気づいた。
何故自分が軍師風情に嫉妬せねばならないのか。曹丕の身分ならばどんな美女もおもいのままだ。父親に似て曹丕も女性をよく好んだが、これまで屋敷に連れ帰るほどの女性はいなかった。
曹丕の母は、曹操の側室のひとりで、息子の目に不幸な女として映っていた。また、曹丕を跡継ぎとすることに奔走し、多くの者を陰ながら葬っていた。
曹丕がこの年まで独り身でいたのは、母のような女性をつくらないよう、一人の妃しか娶らない決意の現れだった。最上の女を探していた。身分や家柄ではなく、乱世を自分と共に生き抜ける女を。
「お前は誰にも渡さぬ。もちろん、郭嘉にもな」
「子桓…」
曹丕はそっと真矢を寝台に横たえた。今まで抱いたどんな女とも違う。剣を使うものの体だった。
「香りが増したな。どんな香よりかぐわしい」
「そんなっ」
真矢はカッと頬を染めた。体の奥深くでなにかが溢れる。新しい泉が目覚めるように、血液がめぐる。
曹丕の指先が素肌に触れる。案外豊かな胸をしていることに曹丕は嬉しい誤算だと思った。
「や、わたし、あの!」
「郭嘉には触られなかったか?」
「…うん」
「嫌か?」
「嫌…じゃない、好き、子桓」
潤んだ瞳に見つめられ、曹丕の心臓が脈打った。甘い香りがする。
「我慢するのも大変だな」
曹丕は真矢の全てを暴きたい衝動にかられた。一時彼女を強く抱きしめ、もう一度口付けた。
「私はお前を気に入っている。大切にしたいと思っている」
「お前を傷つけず、返すのが私のお前を愛する気持ちだ」
いずれ真矢は自分の世界に帰るだろう。そのとき自分が障害にならはことはあってはならない。
「うん、ありがとう愛してくれて」
テコ入れ
恋愛にならない
ハレンチ 流浪 逆はー 曹丕が王子さま
天赤河
はなになれ
ほか、ご都合主義
メモ程度の仕上がりでOK