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tueto hum pa

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夢の桟橋2

夢の桟橋2


「私、仕事やめようと思う」
「やめ…られるのか?」
「来年任期切れるから、もう代表は引退」
「そうだったな、お疲れ様」
「まだ一年あるから。お祝いは来年してね」
「で、この前の返事なんだけど…」
「今か?」
「じゃあ来週会ったときにする」
「いや、もういい、なんだそれは」
「目ざとい」
「俺がはめたかった」
「マリッジはイザークがはめて」
「今から仕事だろ?はめていくのか?」
「だめ?一応、内輪の会議だからプレスはいない」
「いや、嬉しい。愛してる」
「私も愛してる。じゃあ、行ってくるね」

「私、結婚しようとおもってるんです」
「それは…おめでとうございます」
「相手はイザークか?あの記事本物だったんだな」
「えへへ、私も任期終わりですし、先に皆さんにはご報告させていただきました。」
「おめでとう、いつから付き合ってたんだ?」
「二年前…?」
「あー、あの会議のときか」
「ちょっとご相談なんです…私達が公式に出会ったのはあの会議だと世間は認知するはずなんですが、クルーゼからエターナルに逃がしてくれたのが彼なんです。情報は残ってないと思うんですけど」
「なるほど。地球代表のイオリさんとジュール議員の結婚…」
「カガリとアスランの結婚で、ナチュラルとコーディネーター間の交流が活発化しました。ましてや私達は交戦経験もある敵同士だったので、役に立てないかと思ったんです。彼も賛成してます。まあ、私がコーディネーターなのは周知ですから、そこらへんが心配ですが…」
「任期期間中に結婚式を大々的に行うのはいかがでしょうか。世界中から注目されます。人種より、敵同士だった二人が分かり合い、愛し合うことを強調していきましょう。イオリさんはハーフですので、そこも」
「式場は地球かプラントか…で揉めるより、月で行うのはどうでしょう?」
「ありがとう、それを考えてました。」
「テロも防ぎやすい」
「発表はいつにする?」
「それより希望の挙式日はありませんか?」
「退任半年前に、私のバースデー休暇ありましたよね?そこで」
「ちょうど外遊中ですね。スタッフ的にも助かります。」
「ならば発表はその一年前だな。イオリ、その指輪、あと少しガマンしていろ」
「了解」
「半年でプラントと協議しよう。式のコーディネートは…」
「わたくしにお手伝いさせてくださいな」
「決まりだ」
「じゃあ私は、非公式なパーティーを担当したい。イオリがしてくれたように、近しい者たちだけで。結婚式の前に、プラント代表団のオーブ訪問があるだろう。そこで、どうだ」

「イオリ」
「フラガさん」
「おめでとう。それだけ言いたくて。俺もパーティーに参加してもいいか?式は、きっと俺は警備で無理そうだから」
「お子さんも連れて、マリューさんといらして下さい。」
「あの!フラガさん!大好きでした!ずっと助けてくれてありがとう!これからも、いい友人として」
「ああ、大切な妹だからな。泣かされたらうちに帰ってこい!」
「大丈夫。私、強くなったから。もう泣き虫イオリじゃないんです」
「なら、安心だな」

「半年か。うちのほうも、同じような話になっていた。スムーズにいきそうだな。」
「ねえ、変じゃない?きちんとした私服なんてひさびさで…」
「女性は大変だな」
「ちょっと!」
「とっくの昔に知り合いなんだからそう緊張しなくてもいいだろ」
「だって、仕事で会うのと、息子の結婚相手は違うよ」
「結婚しない強情息子にやきもきしてるのは母上だからな。まあ、見ていろ。問題ない」

「びっくりしたわ、イオリさん連れてくるから。いつから付き合ってたの。」
「二年前に仕事で案内して、それからです。何度も戦場では会ってましたが」
「二人は戦ったこともあるでしょう。まさかよ。おめでとうイザーク、イオリさん、これからも息子のことよろしくね」
「戦ったから分かることがあるのかもしれません。とても優しい人です。厳しいけど。エザリアさん、こちらこそどうぞよろしくお願いします。」

「いい家。このお坊ちゃま」
「うるさい。同居はしないぞ」
「えっ」
「お前の母上好きは知っているからな。写真集持ってるだろ」
「なんで知ってるのよ…地球の…オフィスにおいてるのに…」
「アスランから聞いた」
「あのガキ…」
「俺も結婚したらしばらく休暇をとる。1年か2年」
「プラントはいいわねー、休暇が充実してる。」
「パンのみに生きるにあらず、だからな」

「フラガさんと少し話してね。ちゃんと大好きだったこと言えたよ。」
「…頑張ったな」
「吐き出してもいい?聞きたくないことかも」
「受け入れるといったろ」
「14のころから、ずっと大好きだったの。こんな愛し方されたい、ってのがいつの間にかこの人に愛されたいって変わっていった。でも、愛されたい、守られたい、そればかりだった。今も、イザークに対してそういうところがあるとおもう。もらってばっかりで、返せてないかもしれない。でも、あんたを選んで、愛したいと感じて、笑っていて欲しくて、フラガさんのときとは違う気持ちを持てた。愛してる。」
「正直にいうと、彼には嫉妬もしているが…プラントには処女崇拝文化はないし、俺個人にもない。お前が気にしてることは気にならない。極限状態のあの頃より、平和な今、選ばれた余裕もある。そして、真面目なくせにめんどくさがりなお前が結婚なんて面倒で縛られる選択をしてくれたことを誇りに思っている。愛してくれている。俺も愛してる。他に不安は?」
「…ない…」
「お前の育ち方だと、すぐ不安になるのは仕方ないんだ。その都度俺に言え。安心させてやる。いつか不安にならない日が来る」
「…うん」


フラガさんは私にとって夢の桟橋のような人だった。大海原へ飛び出すときに、船まで導いてくれるひと。後ろを振り返ると、橋は消えて、もう元の場所へは戻れない。霧の中にうっすら見える、幻と現実の境目。子供時代の終わり。
私はフラガさんを愛し、愛され、傷付けて、海へ飛び出し、やっと自分で生きる覚悟ができた。私はもう子どもじゃない。自分の足で生きていける。
命を守ってくれた彼に感謝して、お互い別々の幸せを、もうとっくに手にしていた。
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種 うまく行かなかった話 夢の桟橋

イオリ→←フラガ
でもダメだった話→イザーク


二人とも29歳

夢の桟橋

私はね、と彼女は話し始めた。終戦後、数年ぶりに再会した彼女は少し大人びていて、年齢的には立派な大人になっていたが、その心が不安定なのは一目で分かった。会議のあとの一晩の余暇。余暇といっても、パーティーに出席して、ホテルにもどり、朝食後はすぐ移動だ。一週間プラントで様々な会議に出席したあとは、地球に戻る。
元地球連合軍、現地球平和維持軍の代表の一人を務める彼女とは、友人の友人であり、代表のアテンド役だと思われているが実は違う。ラウ・ル・クルーゼが非公式にアラスカから彼女を連れ去った際、内密に世話係をしたことが、二人の出会いだった。
お互いの無事や動向はメディアを通じてなんとなく知っていたが、再会を果たすまで何年もかかった。
彼女が捕らわれていたとき、彼女には愛する男がいた。しかし今回、彼は側にいなかった。

「私はね、守ってくれる大人の男性が欲しかったの。父親みたいに…いえ、父親にしては若すぎたわね。お兄さんみたいに愛してくれて、守ってくれて、あの人がいるから、安心して戦える。そんな人だった」

彼女はまとめていた髪をほどくと、頭を振って根本をほぐした。血行が良くなったのか、頬に赤みが差した。

「あれから、彼と付き合ったの。ちゃんと、想いを伝えて、彼も特別な愛情をくれた。でも、ダメだったの。私が欲しかったのは彼の健全な愛情じゃなくて、血縁の小さな子どもにしか向けられない、聖なる愛情だった。彼は頑張ってくれた。でも、ダメだった。私は成長しないと人を幸せに出来ない、私も前に進めないって気付いて、別れた」

「彼は砂漠の、復興部隊を志願したわ。あそこはアークエンジェルが…私たちが滅茶苦茶にした地域でしょ。ずっと気になってみたい。私の支えになってくれてたから行けなかったけど、別れたから。そこで、ある人と再会して、幸せにしてるみたい。」

「私は、男の人に支えられるんじゃなくて、自分で自分を支えられるようになりたくて、しばらく人を好きにならないって決めたの。少しはマシになった。仕事は、アシスタントに頼るけど。」

あなたはどうだったの?彼女は最後の一口を飲み干して聞いた。同じものを注文したので、自分の分も頼んだ。

「俺は、最初は軍に残って再建活動に携わった。後進が育ったので、軍は辞めて評議会入りだ。」

「それはみんな知ってる。」
「そうだな。じゃあもう少し個人的なことを話す」

「正直、忙しすぎて恋愛や女性に本気になることはなかった。結婚…というか子どもを持つことを強く勧められたこともあったが、相手や子どもに負担をかけるのが分かっていたから断ってきた。」
「相変わらず優しいのね」
「俺のことをそういうのはお前くらいだ」
「笑顔がないからよ」
「そうか?笑っているつもりだが」
「うーん、もっと大げさにやらないと、伝わらない。ディアッカくらい分かり易いといいのに」
「アスランは俺と同じくらい無表情だろう」
「彼はもとが柔らかい顔立ちだし、抜けてるからイザークとは違うのよ」
「なんだ。10年ぶりに会って言うことか」
「あのときも、あなた優しかった。敵同士だったけど信頼して背中預けられた。戦ってたときは、めちゃくちゃ邪魔だったけど」
「俺もだ。でも、殺さないでいられて良かったと思っている。こうして話せた」
「老兵の再会ってかんじ。乾杯」
「まだ若い。乾杯」
「だめよ、私、年上好みなの。知ってるでしょ。」
「そうか?俺も、あのときの彼と同世代になったんだが」
「じゃあ、私、精神的に成長できたのね」
「まあ、気長に口説く。まだ若い。」
「え、本気?」
「本気じゃなけりゃ、こんな夜更けまで残業しない。この仕事も自分から引き受けた。やっと、お前に釣り合う身分になったはずだ。お前にパートナーがいないならエントリーさせてもらおうと思ってた。」
「あの…私、当然バージンじゃないけど」
「なにか問題が?」
「ああ…地球の上流階級ではまだたまにね」
「石器時代だな。チェック」
「どこいくの」
「そろそろクローズだ。部屋で話そう」
「ちょっと、私の気持ちは?」
「何年俺のこと考えてた?」
「なんで…」
「俺がそうだからな」
「あんたがアテンドだって聞いて嬉しかったわよ。でも私は昔のイオリじゃない。大人になって、わがままになった。」
「お前は昔から、わがままで強情で、諦めが悪い。」
「いいか、選べ。俺に愛されるだけか、お互い愛し合うか。」
「愛されるのは決定事項ってこと?」
「俺はお前を愛している。自分で選んで欲しい。欲しいものを掴み取れ」
「なんで、そんなに自信満々なのよ」
「付いてきただろ?イヤなら、自分の部屋に帰れたんだ。早く選べ。部屋に入る前に」
「…私、裏切るかも。あんたの愛情試して、勝手に絶望して、逃げだすかも」
「試されても困ることはないし、逃がさない。イオリの問題は理解している。お前が嫌いなお前を含めて愛している。ただし、ムリヤリ愛して、悪者にはなってやらん。お前が選んで、お前が責任をとる。裏切るのも逃げるのもお前の選択だ。」
「なんで、10年ぶりの男に、こんな受け入れられなきゃいけないのよ…!」
「俺が大人になるまで時間がかかった。すまない」
「私、あんたを選ぶわ…」

ピッと電子錠が開く。部屋になだれ込むと、ソファに彼女を押し倒した。彼女に触れたのは10年前、彼女をエターナルに引き渡した際に手を引いたときだけだ。

「ずっと好きだった。彼と別れたのも知っていた。その後、誰とも付き合わないのもな。俺のことを想っていたなんてうぬぼれはしないが、嬉しかった。でも心配だった。誰か、支えてくれる人間はいるのか、心配だった。」
「ずっとって、いつからよ…!」
「ずっとだ。出会ったときに一目惚れした。話してみて、好きになった。だから、お前を彼の元に返せるよう動いた。ヤキンドゥーエで再会したとき、体が震えて止まらなかった。お前が地球とプラントを行き来しているときも、会いたくて仕方がなかった。」
「会いに来れば良かったのに」
「代表と、一兵士。下っ端議員。お前を色々なものから守れるようにならなければ会いに行けないと思ったんだ。」
「バーで話したの、嘘ばっかり」
「照れくさかったんだよ」


「イオリ、朝だ。お姫様抱っこで部屋に運ばれたくなかったら起きて服を着ろ」
「…ご飯抜きで…」
「お前の部屋にルームサービスをとった。今から一緒に部屋に帰って、お前はシャワーをあびる。俺はお前の荷物と書類をまとめて、一緒に食事をとる。予定通りホテルを出る。いいな?」
「了解」

暁の神子 結核

「ゴホ、ゴホ…」
「郭嘉さん、風邪ですか?そういえばお咳が多いですよね」
「いや…持病なんだ。」
「持病ですか…」


そういえば彼は軍師とはいえ、戦場に赴く者にしてはえらく線が細く、色白だった。思えば病人そのものではないだろうか。

「この薬ができれば、私の病も治るかなって希望を持っているんだよ。」
「…身近な方で同じ症状の方はいらっしゃいますか?」
「母がそうだった。もう亡くなったけどね。…もしかすると父も…咳をよくしていたが、彼は戦死したよ」

伝染病、太れず、色白になり、長年をかけて死に至る病。

「…結核」
「君の世界では核というのかい?」
「え」
「君は、この世界の人間ではないように思うんだ。専門家ではないと言っているのに、どの医師より深い知識がある。農政官より、学者より…でも、神から与えられた知識というにしては不完全だ」
「それに、この世界のことは知らなすぎる。しかし遠い未来のことはよくわかるようだ」
「神子殿はきっと遠い未来から来た、普通の女の子、かな」
「そんなわけ…」
「曹丕殿と司馬懿殿は知ってるのかい?」
「…はい」
「ああ、やっと分かった。君と、曹丕殿との不思議な関係」
「不思議?」
「彼は、君を妻だというけど、そうは見えない。守ってはいるけど、奥さんに対する接し方ではない。夫婦にしてはぎこちなくてね。」
「なんで分かるんですか?」
「ずっと君のことをみていたからさ」
「郭嘉さんには気をつけろと言われた意味が分かりました」
「私は余命短い身だ。美しいものだけを愛でて生きたいんだよ」
「…薬、作ってみましょう。今作ってるものでは結核には効きません。別のものが必要です。」
「作れるのかい?」
「分かりません。でも、作り方は、多分、覚えてます。」
「そうか…ごめんね、君に希望を見てしまうよ。小さなあなたには重たい希望だ」


「結核…労咳の薬を作りたいと思います。」
「やり方はペニシリンと似てますが、カビじゃなくて土壌から菌を探すことから始めます。」
「その前に、結核菌を培養してもらいますが、郭嘉さんの体液を使います。郭嘉さん、痰をだして、シャーレで培養してください。」
「郭嘉殿が…労咳…」
「はっきり断定はできませんが、ご病状からその可能性は高いのではないか…と思います。もし労咳でなくても、この研究で郭嘉さんに効くお薬が出来るかもしれません。」
「新兵器を作成しました」
「ガラスで作った顕微鏡です。採取した郭嘉さんの体液ですが…これを覗いて見てください」
「なにか、虫のようなものが見えます」
「それが病原菌です。」
「神よ…」

暁の神子 続き

「早速、父から屋敷が与えられた。そこを好きなように使えとのことだ。」
「わあ!早速、子供たちを受け入れられるように整えなきゃ!見に行きたい!」
「それはこちらで手配しておく。今日は医官たちが話を聞きたいそうだ。ここに呼んでいる」
「そうなんだ、分かった。曹丕はお城にいくの?」
「ああ、やることが山積みだ。なんだ、寂しいのか」
「偉い人って、毎日お酒飲んで遊んでるって思ってたの。曹丕はよく働くよね」
「そういう者もいる」
「司馬懿を寄越す。分からないことは奴に聞け。」


忙しいはずなのに、司馬懿を私に付けてくれるところが彼の思いやりだと感じる。曹丕の右腕である司馬懿がいなければ仕事は思うように進まないだろうに。


「神子殿、私どもは曹操様の医師でございます。私は華陀と申します。これより神子殿の配下に任命されました。どうぞご教授よろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いします。私が分かることは多くはありませんが、お力になれるよう頑張ります」
「私も参加させていただきたいんだけど、いいかな」
「あなたは…たしかお城で…」
「こちらは、曹操様の軍師、郭嘉殿だ。神子の知識にご興味がおありでな。どうしてもと仰っている」
「郭嘉奉考という。麗しの神子殿とお近付きになれて光栄だよ」
「はあ」
「僕がいれば、直接曹操様にお願いも出来るからね。便利だよ」

「ってことで、菌はだいたい100度で死滅するので、怪我人の患部に触れるものは熱湯消毒してから使うんです」
「一度沸騰させた水を使うのも、水の中の菌を殺すのですね」
「はい。本当は普段の生活でも沸騰させた水を使って欲しいです。お腹壊したりしなくなります。怪我人は弱って普段より病気になりやすいですし、戦場は清潔にするのが、むずかしいので…アルコール消毒とかできませんかね」
「アルコール?」
「あ…お酒の成分で消毒できるんです」
「お酒ならここにあるよ。飲んでみるかい?」
「あー、あんまり…強くないんですね。甘酒…?私でも飲めます」
「そうかい?私はこれが大好きでね」
「これだと、多分、消毒にはならないと思います…もっと強いお酒じゃないと」
「作ろうか?」
「作れるんですか?」
「ははは、神子殿、僕たちで作るんだよ。お金は曹操様が出してくれるよ。彼もお酒が大好きだからね」
「…飲むためじゃないんですけど…でも、やってみる価値はありますね。完成すればもっと死傷者を減らせるはずです。」
「何が必要かな」
「ウイスキーとかどうかな…蒸留酒です。麦を発酵させて、蒸留してアルコール分だけ取り出します。こんな、器作れますかね?」
「技官に聞いてみるよ」
「…ついでに樽も用意してくれたら、少しだけ飲み物も作ります」
「楽しいだな。任せてくれ」

「しかし神子殿、消毒が出来るのは分かりました。私は医師として、既に病を発症してしまった者に効く薬をずっと探しているのですが、ご存知ありませんか」
「抗生物質…ってことか…」
「出来るか分からないのですが…青カビって集められますか?あと、こんな形の器も必要です。たくさん作って欲しいです。あと、綿花?ありますよね?」
「分かった。外に必要なものは?」
「芋と麦…麦はアルコールでも使いますからいっぱいです。煮沸水、紙…」
「じゃあ、神子殿は次までにつくりかたを整理しておいてくれるかな。僕は物を揃えよう」
「私は他の医官に協力を頼みます。調剤の上手いものを集めましょう」


孤児院には恐る恐る集まった少年達が、生活を始めていた。傷痍兵が教官となり練兵をすることで、失業者対策も兼ねている。夫を失った女達には生活の世話をしてもらい、給金はないが衣食住に困らない生活を与えることになった。
少年達は農村の出身がほとんどで、畑仕事は慣れたものだ。
乱の間に農政官が作っていた肥料を使い、実験の場として利用している。見たところ作物の育ちも良さそうだ。



「神子よ。うまくいっているようだな」
「曹操様!」
「ついて来ちゃったんだ。びっくりさせたね」
「郭嘉から話は聞いていたが、一度この目で見てみたくてな」
「いつでもいらっしゃってください。曹操様の民ですもの」
「ちと、手狭になってきたようだな」
「ええ、最初は怖がってた子供たちも、噂をききつけて集まってきまして…もう受け入れられない人数なんです」
「医療研究室のほうも、薬作りを始めたらあっという間に狭くなってしまいましたし。陶器が作るなら職人の窯だけでは足りず…」
「ほかにもやりたいことがいっぱいあるんですが」
「ふむ…城をやろう。子桓に新しい領地を任せようと思っていたのだ。その城は戦で焼けてな。空っぽだ。石造りの建物だけは残っているから、少しずつ増築するといい。そこを学問の都にせい」
「城…城ひとつ、学校ですか…」
「足りぬか?」
「なんで…」
「お主の知恵に、わしも皆も希望をみているのだ。まあ、あの酒の褒美だと思っておけ」
「え、あれ、飲んだんですか!まだ試作品なのに!」
「いつものやつに少し混ぜてな。あれは癖になる。もっと作ってくれ」

トリコ エターナル合流

「この艦はフリーダムとジャスティスの専用艦でね、良かったらフリーダムはこっちに収容してもいいかな?その方が都合がいいだろう」
「ええ、分かりました。」
「代わりといってはなんだがね、Xナンバーをベースに作った機体をそっちで面倒みてくれるかな?」
「え、ええ、構いませんが…」
「大丈夫、パイロットは知った顔だよ」



バルトフェルドはウインクして遅れて到着した機体を振り返る。マリューにはよく理解出来なかった。確かに機体の骨格はXシリーズの面影があったが、ザフトのパイロットに知り合いなどいただろうか。



ぼんやりと、MSを眺めていた。すると、隣にいたフラガが弾かれたように駆け寄った。



「イオリ!」



コクピットも開かないというのに、フラガが叫んだ。コクピットが開く。緑のパイロットスーツに身を包んだ女性が、彼目掛けて飛び降りた。ヘルメットを投げ捨てると、醒めるようなブルネットの髪。照明に青く輝いている。




「フラガさん…!ただいま、戻りました」



フラガは声を失ったように何も喋らず、ただ彼女を抱きしめた。髪は短くなっているが、間違いなくイオリ・ジンその人だった。
そのままMSに当たるまでフワフワと宙を漂う。




「さて、感動の再会だ。僕たちはブリッジで今後の話をしよう。婚約者殿、彼女は今病気でね、部屋で寝かせてやってくれ。敵がきたら呼ぶよ」




バルトフェルドはイオリを抱きしめたまま微動だにしないフラガに呼びかける。以前砂漠の夜会でそう呼んだように、フラガのことを婚約者殿と呼ぶ彼の口調は楽しみと、優しさに満ちていた。



私が病気?



戸惑うイオリにニコリと笑いかけ、去りがけに手を振った。彼の意図に気付き、顔が熱くなった。



どうせすぐに戦場になる。束の間の平穏に、バルトフェルドは彼らの心が慰められることを祈った。








「フラガさん、皆さん行ってしまいましたよ」



返事はない。



「フラガさん…会いたかった…」



彼をギュッと抱きしめる。
息を吸う、優しい匂いがした。



それが合図だったかのように、彼は私の顎に手をかけ、見つめ合った。アラスカを思い出して赤面する。あのときはそんな余裕すらなかった。



「ずっと待ってた」
「私も、ずっと」



奪われるような熱い口付け。何度も何度も繰り返される。息継ぎもできず、彼の胸を押すが、ビクともしなかった。
生暖かい舌に口内を犯されて、なんとか応えようと舌を差し出すが、翻弄されるだけでなにも考えられなくなった。



生きてまた会えた。それだけだった。




「フ、フラガさん…苦し…」
「悪い…病人なんだったな」



フラガに横抱きに抱えられると、そのまま艦内に入った。整備士たちが驚いた顔をしてこちらを見ていた。



「恥ずかしいなら、目を閉じてろ」



彼は誰も寄せ付けない雰囲気で、真っ直ぐ彼女が以前使っていた部屋に向かった。懐かしい部屋だ。荷物はそのままにしていてくれたようだ。彼が片付けることを拒否したのだろうと思った。



「熱があるのか?病気って、向こうでなにかあった?」



フラガはイオリをベッドに優しく下ろし、パイロットスーツを緩めてくれた。気圧弁を開放すると、急に力が抜けるようだった。そのままスーツを脱がされる。シーツを掛けられ、病人のように寝かせられた。



「…多分…恋の病って、言ったんだと思います…」
「恋の病…って、あのおっさん、言ってくれるな」
「だから、大丈夫ですよ。私、元気です。」



上半身を起こそうとした。彼は覆い被さるようにそれを阻止する。
痛まぬよう、優しく肩を押さえられた。瞳に、愛が溢れる。私もこんな目をしていたのだろうか。アラスカの別れを思い出した。



「俺も言いたかったことがある」
「はい」
「好きだよ、イオリ。ずっと昔から、ずっとお前だけを愛してた。」
「私も、フラガさんを、出会ったころから愛してます」



フラガは強くイオリを抱きしめながら、何度も口付けを繰り返す。
体が熱くて、触れられた箇所が火を噴くかのように熱を持て余した。夜会の帰り道では小指の先が触れただけで電撃が走ったが、今は体が熱くて熱くて堪らない。体の奥が溶けるように、熱く熱く、彼を求めていた。



熱に浮かされていると、フラガは上着を脱ぎ捨てた。鍛えられた上半身は、服を着ていたほうが細くみえる。地球に降りた際、デッキで日光浴や掃除をしている姿を見たことがあったが、あのときとはシチュエーションが違いすぎる。イオリは直視できず目を瞑った。



「いっぱい抱いてっていったろ」
「いってな…」
「言ったよ。せっかくお膳立てしてもらったんだ。約束どおりいっぱい抱いてやるよ。」



耳元で囁かれる。心地よい声に身震いした。いっぱい抱きしめて、と言ったつもりだったが、もしかしたらつい本音が漏れてしまったのかもしれない。ずっと、彼と結ばれることを願っていたから。




フラガは口付けを絶やさず、器用にイオリの服を剥がしていった。

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